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ママとメイド
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目を開けたら、栗色の髪でエメラルド色の瞳をした色白の美しい女性に覗き込まれていた。
「シルフィ、起きたのね」
あれ? よく目が見えるようになっている。
「だあ」
ダメだ。全く喋れねえ。
「よかった。ずっと寝てるんですもの。ママ心配しちゃったのよ」
ママ!? この美人さんが!?
めちゃくちゃ若いぞ。下手すりゃ十代じゃないのか?
「アンリ、先生をお呼びして。シルフィが目を覚ましたわ」
俺は首も体も動かせないので、アンリとやらを見ることができない。
「かしこまりました。王妃様」
アンリの声がママの後ろから聞こえた。
俺はこの美人をママと呼ぶことにした。
母親とか母という言葉は、この女性には似合わない。
それに、この女性の子供であるという実感が全く湧かない。
銀座のママにも若くてきれいなのがいるから、ママって方がしっくりくる。
ん? 「銀座のママ」って何だろう……?
「先生、こちらです」
アンリが医者を連れて来たようだ。
黒いメイド服を着たアンリが視界に入って来た。
アンリも随分と美人だな。
ママがほんわか美女だとしたら、アンリは青髪青目のクールビューティーだ。
そこに眼鏡をかけたさえないおっさんが混じって来た。
こいつが医者か。お前の顔が俺の視界に入ったせいで、絵のように美しかった構図が台無しだよ。
何だ、おっさん。なぜそんなしかめっ面で俺を見る?
う、なんか臭うな。
「あら、シルフィ、プーしちゃったのね。アンリ、お尻きれいにしてあげて」
「はい、王妃様」
アンリの前で無抵抗のまま下半身丸出しか。
うん、仕方ないな、赤ん坊だもの。
医者とママが話しているのが聞こえて来た。
どうやら俺はまる二日も寝ていたらしい。
王族は生後すぐに神々から加護を受けるらしく、俺もそれが原因で眠っていたのではないかと医者が説明していた。
そうだ、思い出した。
あの声は神様の声だったのか。
俺があれこれ考えている間、アンリはじっと俺の下半身を凝視している。
……アンリさん、変態か?
なまじ顔が綺麗なだけに少し怖いんだが。
あっ、お尻が! 綺麗になって行く。
俺のとんでもない誤解だった。
魔法だ!
そうか、この世界には魔法があるのか。
俺はアンリに抱っこしてもらって、ママの近くのベッドに再び戻って来た。
医者の触診が始まった。
手が冷たいよ、おっさん。
「……王妃様。シルフィ様、全くグズったりされないですね」
「私、初めての子供ですから、こういうものと思ってましたが、違うのでしょうか?」
「私の触診で泣かなかった赤ちゃんは、ここ数年、記憶にないです……。いや、初めてかもしれません」
「先生っ、シルフィに何か問題があるのでしょうかっ!?」
おい、おっさん。ママが泣きそうじゃないか。心配させるなよ。
「いえ、いたってご健康でございます。申し訳ございません。ご心配をお掛けしてしまいました」
ママがホッと胸を撫で下ろしている。
アンリをチラリと見ると、心なしかホッとしているぞ。
さっきからずっと沈着冷静を貫いていると思いきや、アンリはツンデレか?
実は俺も少し安心した。体が燃えてしまうかと思うぐらい熱かったのだ。
いったいどういった加護だったのだろうか。
その答えは意外と早く判明する。
「シルフィ、起きたのね」
あれ? よく目が見えるようになっている。
「だあ」
ダメだ。全く喋れねえ。
「よかった。ずっと寝てるんですもの。ママ心配しちゃったのよ」
ママ!? この美人さんが!?
めちゃくちゃ若いぞ。下手すりゃ十代じゃないのか?
「アンリ、先生をお呼びして。シルフィが目を覚ましたわ」
俺は首も体も動かせないので、アンリとやらを見ることができない。
「かしこまりました。王妃様」
アンリの声がママの後ろから聞こえた。
俺はこの美人をママと呼ぶことにした。
母親とか母という言葉は、この女性には似合わない。
それに、この女性の子供であるという実感が全く湧かない。
銀座のママにも若くてきれいなのがいるから、ママって方がしっくりくる。
ん? 「銀座のママ」って何だろう……?
「先生、こちらです」
アンリが医者を連れて来たようだ。
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アンリも随分と美人だな。
ママがほんわか美女だとしたら、アンリは青髪青目のクールビューティーだ。
そこに眼鏡をかけたさえないおっさんが混じって来た。
こいつが医者か。お前の顔が俺の視界に入ったせいで、絵のように美しかった構図が台無しだよ。
何だ、おっさん。なぜそんなしかめっ面で俺を見る?
う、なんか臭うな。
「あら、シルフィ、プーしちゃったのね。アンリ、お尻きれいにしてあげて」
「はい、王妃様」
アンリの前で無抵抗のまま下半身丸出しか。
うん、仕方ないな、赤ん坊だもの。
医者とママが話しているのが聞こえて来た。
どうやら俺はまる二日も寝ていたらしい。
王族は生後すぐに神々から加護を受けるらしく、俺もそれが原因で眠っていたのではないかと医者が説明していた。
そうだ、思い出した。
あの声は神様の声だったのか。
俺があれこれ考えている間、アンリはじっと俺の下半身を凝視している。
……アンリさん、変態か?
なまじ顔が綺麗なだけに少し怖いんだが。
あっ、お尻が! 綺麗になって行く。
俺のとんでもない誤解だった。
魔法だ!
そうか、この世界には魔法があるのか。
俺はアンリに抱っこしてもらって、ママの近くのベッドに再び戻って来た。
医者の触診が始まった。
手が冷たいよ、おっさん。
「……王妃様。シルフィ様、全くグズったりされないですね」
「私、初めての子供ですから、こういうものと思ってましたが、違うのでしょうか?」
「私の触診で泣かなかった赤ちゃんは、ここ数年、記憶にないです……。いや、初めてかもしれません」
「先生っ、シルフィに何か問題があるのでしょうかっ!?」
おい、おっさん。ママが泣きそうじゃないか。心配させるなよ。
「いえ、いたってご健康でございます。申し訳ございません。ご心配をお掛けしてしまいました」
ママがホッと胸を撫で下ろしている。
アンリをチラリと見ると、心なしかホッとしているぞ。
さっきからずっと沈着冷静を貫いていると思いきや、アンリはツンデレか?
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いったいどういった加護だったのだろうか。
その答えは意外と早く判明する。
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