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我慢すべきだそうです
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「お父様、殿下が私以外の女性数人と関係を持っているようです」
あの後、調べてみると、今回のソフィアの件以外にも、エドワードは何人かの女生徒と関係を持っている可能性が出て来た。
そのため、週末に家に帰り、父に思い切って相談することにしたのだ。
「そうか」
え? それだけ?
「あの、それだけでしょうか」
父が面倒臭そうな顔をして説明を始めた。
「男は家の存続を第一に考えるものだ。表向きの正妻は一人だけだが、子孫を残すために複数の女性と関係を持つのは当たり前のことだ。もうお前も大人だろう。その辺りのことは知っておけ。そして、正妻としてどっしりと構えていればよい」
エドワードと同じことを言っている。ダメだ。話が通じない。
「婚約破棄の理由にはなりませんでしょうか?」
「物騒なことを申すな。王子が何人の女性と関係を持とうが、婚約解消の理由にはならん。王族が非公式に複数の女性と関係を持つのは当たり前のことだからな。まさか、お前、婚約を取りやめたいというのではなかろうな」
「お父様、私は我慢できないのです」
父は大袈裟にため息をついた。
「乙女のようなことを申すな。したたかに生きるのだ。仮にお前に問題があって婚約破棄されようなものなら、当家は下手をすれば潰されるぞ。ミッドランドの一族郎党を路頭に迷わせるつもりか。お前は家の看板を背負って嫁に行くということをゆめゆめ忘れるでないぞ」
「お父様っ」
「この話は終わりだ。つまらんことでいちいち帰ってくるな。早く王宮に戻って、王子の心証を悪くしないようにしなさい」
そう言い残して、父はさっさと書斎に戻ってしまった。
「お母様……」
私はずっと黙って話を聞いていた母にすがるように目を向けた。
「エルザ、今の時代、女は我慢するしかないのよ。あなた以外の女は、夫の愛玩動物だと思いなさい。そもそもあなたは王妃、国母になるのよ。小さなことは気にせず、国のために精一杯働きなさい。妻という仕事に就くと考えて、全て仕事だと割り切りなさい」
そんなつまらない人生は嫌だ。
私は絶望的な気分になったが、ふとシエルならどう答えてくれるのか、急に彼に相談してみたくなった。
彼は男子寮ではなく、ホテル住まいと聞いている。すぐに彼が滞在しているホテルに使いを出したところ、ロビーで話を聞いてくれるという。
ただし、目立つのは不味いから、町娘の格好で来てほしいとのことで、着替えまで使いに持たせた。
(馬車の中で着替えて、御者台に乗って下さい、ですって!? 何だか、ワクワクしちゃう)
私はそれまで塞ぎ込んでいた気分が、一気に晴れやかになるのを感じた。
王宮に帰ると両親に伝えて、私は馬車に乗り込んだ。
「帝国ホテルに寄って頂戴」
「はい、かしこまりました。お嬢様」
いつもと違う若々しい声がして、思わず声の方を見ると、御者台から馬車をのぞいていたのは、黒髪黒目の端正な顔立ちだった。
「え? シエル!?」
「お嬢様、そちらの衣装に着替えて、御者台にいらして下さい。じっくりとお話をお聞かせください」
シエルはそう言って軽くウィンクした。
あの後、調べてみると、今回のソフィアの件以外にも、エドワードは何人かの女生徒と関係を持っている可能性が出て来た。
そのため、週末に家に帰り、父に思い切って相談することにしたのだ。
「そうか」
え? それだけ?
「あの、それだけでしょうか」
父が面倒臭そうな顔をして説明を始めた。
「男は家の存続を第一に考えるものだ。表向きの正妻は一人だけだが、子孫を残すために複数の女性と関係を持つのは当たり前のことだ。もうお前も大人だろう。その辺りのことは知っておけ。そして、正妻としてどっしりと構えていればよい」
エドワードと同じことを言っている。ダメだ。話が通じない。
「婚約破棄の理由にはなりませんでしょうか?」
「物騒なことを申すな。王子が何人の女性と関係を持とうが、婚約解消の理由にはならん。王族が非公式に複数の女性と関係を持つのは当たり前のことだからな。まさか、お前、婚約を取りやめたいというのではなかろうな」
「お父様、私は我慢できないのです」
父は大袈裟にため息をついた。
「乙女のようなことを申すな。したたかに生きるのだ。仮にお前に問題があって婚約破棄されようなものなら、当家は下手をすれば潰されるぞ。ミッドランドの一族郎党を路頭に迷わせるつもりか。お前は家の看板を背負って嫁に行くということをゆめゆめ忘れるでないぞ」
「お父様っ」
「この話は終わりだ。つまらんことでいちいち帰ってくるな。早く王宮に戻って、王子の心証を悪くしないようにしなさい」
そう言い残して、父はさっさと書斎に戻ってしまった。
「お母様……」
私はずっと黙って話を聞いていた母にすがるように目を向けた。
「エルザ、今の時代、女は我慢するしかないのよ。あなた以外の女は、夫の愛玩動物だと思いなさい。そもそもあなたは王妃、国母になるのよ。小さなことは気にせず、国のために精一杯働きなさい。妻という仕事に就くと考えて、全て仕事だと割り切りなさい」
そんなつまらない人生は嫌だ。
私は絶望的な気分になったが、ふとシエルならどう答えてくれるのか、急に彼に相談してみたくなった。
彼は男子寮ではなく、ホテル住まいと聞いている。すぐに彼が滞在しているホテルに使いを出したところ、ロビーで話を聞いてくれるという。
ただし、目立つのは不味いから、町娘の格好で来てほしいとのことで、着替えまで使いに持たせた。
(馬車の中で着替えて、御者台に乗って下さい、ですって!? 何だか、ワクワクしちゃう)
私はそれまで塞ぎ込んでいた気分が、一気に晴れやかになるのを感じた。
王宮に帰ると両親に伝えて、私は馬車に乗り込んだ。
「帝国ホテルに寄って頂戴」
「はい、かしこまりました。お嬢様」
いつもと違う若々しい声がして、思わず声の方を見ると、御者台から馬車をのぞいていたのは、黒髪黒目の端正な顔立ちだった。
「え? シエル!?」
「お嬢様、そちらの衣装に着替えて、御者台にいらして下さい。じっくりとお話をお聞かせください」
シエルはそう言って軽くウィンクした。
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