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対岸の港町
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今日は波が穏やかで、半日ほどで対岸の港町に到着した。
アルタリアからレンブラントへは海流に乗る形になり、半日で着いたが、逆方向だと一日かかるらしい。
港町で昼食を取りながら少し休憩して、ここから馬車で南に移動する。王都までは一日半かかるため、途中の宿場町で一泊する予定とのことだ。
ジークは自国に戻ったからだろう、少し表情が柔らかくなっている。逆に私とリブルは、他国に来たことで、若干緊張していた。
「この辺りは私の領地ですので、色々と勝手がききます。安心して我が国を楽しんで頂ければと思います」
ジークの所領は西海岸一帯とのことだった。従者が全員交代していたが、日中の従者はまたしてもすべて女性だった。
「従者は土地勘のあるものに任せておりますので、場所が変われば、従者も変わります。女性を多く配属しているのは、その方がフローラ殿の気疲れが少ないかと思いまして」
ジークの観察眼はかなり鋭い。私が知りたいこと、気になったことを聞く前に教えてくれる。
こちらが聞きたいときとタイミングがズレてしまうとうるさく感じるかもしれないが、実にタイミングよく話してくれる。私を細かく気遣ってくれているのをひしひしと感じる。
これって大切にされているって、ことかしら。
大切にされた経験がないため、イマイチ自信がなく、昼食を済ませて、ジークが護衛と打ち合わせているときに、リブルに聞いてみた。
「ねえ、私、殿下に大切にされているのかしら?」
「……。可哀想に。大切にされたことがないんだな。そうだよ。大切にされているのさ」
(可哀想は余計よ。そうか、大切にされているのか。素直に嬉しいわね)
護衛との打ち合わせが終わって、ジークがこちらに向かって来る。
「そろそろ出発しましょう。少しお話ししたいことがあるのですが、馬車の中でお話しします」
馬車に入って、ジークは早速話を切り出して来た。
「夕方にリーバという宿場町に着きます。リーバの市長は私の支援者なのですが、彼の城で我々を歓迎してくれるそうです。私の支援者の多くを招いて、歓迎パーティを準備しているそうです」
「歓迎というのは、私の歓迎ですか?」
「はい、そうです」
「まだ婚姻のお申し出をお受けした訳ではありませんが……」
「申し訳ございません。どうも勘違いしてしまっているようでして、ご旅行に来られただけと先ほど伝令を出しました。これで誤解は解けると思いますが、招待客全員のキャンセルは難しく、誤解を解くためにも、パーティには出来ればご出席頂きたいのですが」
「はあ……」
妙なことになったが、仕方ないだろう。ジークの言う通り、はっきりと誤解を解いておく必要がある。
「姉、こういうのははっきりさせる機会を逃さない方がいい。何なら、俺を婚約者として紹介するってのはどうだ? インパクト強いぞ」
「ますます複雑になるから、やめてね。それに嘘は必ずバレるわ。いざってときに信用されなくなるから、私の護衛でいたいなら、今後、嘘はつかないでね」
「嘘ではない。本当に婚約して、嫌なら後で破棄すればいい。俺は思うんだが、姉は婚約者を立てて、変な男たちからガードした方がいいと思うぞ」
ジークが変な男呼ばわりされて苦笑している。
「あなたね、あなたと婚約すると、おじ様が強引に結婚まで持っていくでしょ。怖くて婚約できないわよ。却下よ、却下」
「確かに……」
「殿下、分かりました。出席して、まだ婚約する気はないことをはっきりと申し上げるようにします」
「は、はい……」
何がっかりしてるのよ。本当にどいつもこいつも、だらしないんだから。私を早く落としなさいよ。
アルタリアからレンブラントへは海流に乗る形になり、半日で着いたが、逆方向だと一日かかるらしい。
港町で昼食を取りながら少し休憩して、ここから馬車で南に移動する。王都までは一日半かかるため、途中の宿場町で一泊する予定とのことだ。
ジークは自国に戻ったからだろう、少し表情が柔らかくなっている。逆に私とリブルは、他国に来たことで、若干緊張していた。
「この辺りは私の領地ですので、色々と勝手がききます。安心して我が国を楽しんで頂ければと思います」
ジークの所領は西海岸一帯とのことだった。従者が全員交代していたが、日中の従者はまたしてもすべて女性だった。
「従者は土地勘のあるものに任せておりますので、場所が変われば、従者も変わります。女性を多く配属しているのは、その方がフローラ殿の気疲れが少ないかと思いまして」
ジークの観察眼はかなり鋭い。私が知りたいこと、気になったことを聞く前に教えてくれる。
こちらが聞きたいときとタイミングがズレてしまうとうるさく感じるかもしれないが、実にタイミングよく話してくれる。私を細かく気遣ってくれているのをひしひしと感じる。
これって大切にされているって、ことかしら。
大切にされた経験がないため、イマイチ自信がなく、昼食を済ませて、ジークが護衛と打ち合わせているときに、リブルに聞いてみた。
「ねえ、私、殿下に大切にされているのかしら?」
「……。可哀想に。大切にされたことがないんだな。そうだよ。大切にされているのさ」
(可哀想は余計よ。そうか、大切にされているのか。素直に嬉しいわね)
護衛との打ち合わせが終わって、ジークがこちらに向かって来る。
「そろそろ出発しましょう。少しお話ししたいことがあるのですが、馬車の中でお話しします」
馬車に入って、ジークは早速話を切り出して来た。
「夕方にリーバという宿場町に着きます。リーバの市長は私の支援者なのですが、彼の城で我々を歓迎してくれるそうです。私の支援者の多くを招いて、歓迎パーティを準備しているそうです」
「歓迎というのは、私の歓迎ですか?」
「はい、そうです」
「まだ婚姻のお申し出をお受けした訳ではありませんが……」
「申し訳ございません。どうも勘違いしてしまっているようでして、ご旅行に来られただけと先ほど伝令を出しました。これで誤解は解けると思いますが、招待客全員のキャンセルは難しく、誤解を解くためにも、パーティには出来ればご出席頂きたいのですが」
「はあ……」
妙なことになったが、仕方ないだろう。ジークの言う通り、はっきりと誤解を解いておく必要がある。
「姉、こういうのははっきりさせる機会を逃さない方がいい。何なら、俺を婚約者として紹介するってのはどうだ? インパクト強いぞ」
「ますます複雑になるから、やめてね。それに嘘は必ずバレるわ。いざってときに信用されなくなるから、私の護衛でいたいなら、今後、嘘はつかないでね」
「嘘ではない。本当に婚約して、嫌なら後で破棄すればいい。俺は思うんだが、姉は婚約者を立てて、変な男たちからガードした方がいいと思うぞ」
ジークが変な男呼ばわりされて苦笑している。
「あなたね、あなたと婚約すると、おじ様が強引に結婚まで持っていくでしょ。怖くて婚約できないわよ。却下よ、却下」
「確かに……」
「殿下、分かりました。出席して、まだ婚約する気はないことをはっきりと申し上げるようにします」
「は、はい……」
何がっかりしてるのよ。本当にどいつもこいつも、だらしないんだから。私を早く落としなさいよ。
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