英雄の俺が転生憑依した男は、S級冒険者パーティの下働きだった。頭に来た俺は、ダンジョン攻略中に全員の荷物を持ってパーティから逃げ出してやった

もぐすけ

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追跡

すれ違い

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 地下十階でキース兄妹と別れたリサは、猛スピードで地上へと帰還中だった。キースたちよりも早くマモルを見つけるためだ。

 マモルはリサに絶対服従の下僕であり、リサのために尽くすことがマモルの使命だとリサは当然のように思っていた。

(マモルは私のものよ。誰にも渡さないわ)

 リサは「女体剣」というちょっとエッチな名前の剣術を使うが、剣神を何人も輩出するシン一族に「女体剣の使い手に出会ったときはすぐに逃げろ」と言わしめるほどの恐ろしい殺人剣だ。

 地下十階までの魔物程度であれば、むしろソロである方がリサにとっては戦いやすい。リサはスパッ、スパッと魔物を一刀両断しながら、破竹の勢いで突き進んでいく。

 性格は最悪だが、剣を振るうときのリサは美しい。地下五階を過ぎたあたりからは冒険者密度がぐっと高くなる。

「今のS級のリサだぜ。めちゃくちゃ強え」

「すっごく綺麗……」

 冒険者たちが注目するなか、リサは疾風の如くダンジョンを駆け抜けて行った。

 そして、リサはようやく地上に出た。久しぶりの外は、まだ夜が明けたばかりだった。

「あ、リサさん、お疲れ様です。他の方はどうされましたか?」

 リサを知らない者はこの辺りではいない。警備兵もリサのことは知っていた。

「あと二人は遅れて出て来るわ。先に出たマモルの行方はご存知?」
 
 退出書類にサインしながら、リサはダメ元で聞いてみた。

「マモルさんですか? 先ほどダンジョンに入られましたよ」

「何ですって!? いつ!?」

 リサの形相に警備兵はたじろいだ。

「さ、三十分ほど前でしょうか」

「一人で?」

「モモというピンク一色の少女とです」

「大魔法使いのモモ!?」

 高位の魔法使いで知らぬものはいない千年を生きるとされる謎の少女。お金さえ払えば誰にでも指導してくれるため、会うための敷居は高くないが、秘奥義の魔法を数十種類もこなす化け物で、人の身では勝てないと言われている。

 モモがあのファンシー館を出て指導した話など、これまで聞いたことがない。マモルはモモから何を教わっているのだろうか。一体マモルに何が起きているのだろうか。マモルは歌と踊りにしか興味がなかったはずだ。

「二人はどんな様子だった?」

「え? どんな様子と言われましても。そうですね。二人とも何というか、無言で無表情のまま入って行きました」

「笑ってないってこと?」

「感情が抜け落ちた感じです。マモルさんは女性のような容姿の方ですよね。モモって女の子もとても可愛らしいのですが、二人とも蝋人形のような感じで、ちょっと怖かったです」

「よくわからないわ」

「すいません。緊張されていただけかもしれません」

「あなたはマモルを差別しないのね」

「マモルさんをですか? とんでもないです。あの人、今まで愚者を演じてたんですね。ルーカスさんを蝶が舞うように秒殺した話はとても有名です。能力を隠していただなんて、超格好いいです、あの人!」

 ルーカスの仲間はすぐにポーションで治療してもらったらしく、それを恩に感じた彼らがそのときの話を喋りまくっているらしい。

 ちなみにポーションは怪我にも病気にも効くが、問題が発生した数時間以内に処方しないと効力を発しない。そのため、ルーカスの頭は自身の治癒力で治すしかない。

 リサはすぐにマモルの後を追いたかったが、準備なしでダンジョンに潜るのはあまりにも無謀だ。それに一人では地下十階が限度だ。また、何よりも先ほどの警備兵の話が気になる。

「まずはピンクハウスに行くべきね」

 リサはマジックストリートのモモの館に行くことにした。

 その様子を建物の影からじっと見ていた男女がいた。

「師匠、リサのやつ、ダンジョンに戻りませんよ」

「警備兵が余計なことをしゃべったからよ。警戒させてしまったようね。私の屋敷に行くってわざわざ声に出してたけど、独り言を言っちゃう寂しい子なの?」

「いや、自分以外の人間は全員ゴミ、と思ってますから、寂しいとかはないと思いますよ」

「でも、彼氏いるんでしょう? 彼氏もゴミなの?」

「ああ、あれはマモルを悲しませるための演技です。マモルがいなくなって意味がなくなったから、すぐに別れたんだと思いますよ」

「どんだけマモルを虐めたいのよ」

「リサは精神的に虐めるのが好きで、アンジェラは苦痛を与えるのが好きです。キースはとにかくぶん殴るのですが、リサやアンジェラはそれをよく止めてました。マモルの顔や体が綺麗なままで虐めたかったんです。女二人はど変態です。キースの方がよっぽど健全です」

「あんたも災難ね。そのルックスでそんな人生歩んでたなんて」

「それより、師匠、先にキース達を矯正しますか?」

「そうね、わざわざ来てくれるんだから、リサからにしたいんだけど、リサ単独だと難しいのでしょう?」

「多分すごく抵抗されますね。俺、動けなくされてしまいそうです」

「どうやらリサはキースたちとは復縁することはないようだし、先に二人を片付けましょう。ダンジョンに入ったホムンクルスたちを戻すわよ」
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