英雄の俺が転生憑依した男は、S級冒険者パーティの下働きだった。頭に来た俺は、ダンジョン攻略中に全員の荷物を持ってパーティから逃げ出してやった

もぐすけ

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お仕置き

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 キース達は地下五階のセーフティゾーンにいた。アンジェラは別の冒険者からローブを調達したらしい。いつもは赤いローブを着ているが、今は白いローブを着ていた。

「よお、アンジェラ。白もよく似合うじゃないか。ちょっと胸がきつそうだけど、元気そうで何よりだ」

 アンジェラは驚きのあまりぽかんとしていたが、だんだん憎々しげな表情になって来た。だが、俺の横にいるモモに気づいて、信じられないという表情になる。美人の百面相が見られて非常に愉快だ。

「マモル、貴様、まずはぶん殴ってやる」

 キースが俺に気づいて向かって来た。

「兄さん、やめて!」

 キースの体がピタリと止まる。拘束の魔法をかけたことが音で分かった。

「アン、なぜ止めるんだよっ!?」

「モモ様がいらっしゃるのよ。秒殺されるわよ」

 キースもモモには以前あっている。モモを見て、キースは軽く会釈をした。

 セーフティゾーンには他の冒険者たちも数組いて、こちらの様子を遠慮がちに見ていた。

「師匠がお前たちに手を出すわけないじゃないか。弟子のデビュー戦を観てもらうためにわざわざおいでいただいたのさ。そうだな、まずは前座のキースから片付けるか」

 アンジェラの周りが騒がしくなって来た。アンジェラがロッドを俺に向けて、精神系の魔法が次々に飛んで来るが、俺は皮膚の表面を絶縁体化して電気を体内に侵入させないようにした。

「アンジェラ、お前はここにいるみなさんの前で、後でゆっくりと料理してやるから、少し待ってろ」

「え? なぜ効かない。モモ様!?」

「私は何もしてないわよ。その程度の威力ではマモルには簡単にレジストされちゃうわよ。レジストを破る方法を知りたかったら、十万ダーラで教えるわよ」

「師匠、黙って観ててくださいよっ」

 そう言いながら俺はキースの懐に一歩で踏み込み、左手に持ったクナイをキースの脇腹に突き立てた。

 キースはとっさに身を引くが、俺は回り込んで右手のクナイでキースの背中を突き刺す。キースが自分でバックステップした力が加わって、クナイは背中の筋肉を貫通し、肝臓に深々と突き刺さった。

「マ、マモル、貴様……」

 キースがひざまづき、苦しそうにしている。

「兄さん!?」

 アンジェラが悲鳴を上げた。

「キース、肝臓まで入ったから、放置すると死んじゃうぞ」

 俺は固まってしまっている他の冒険者たちに声をかけた。

「誰か、治療してやってくれます? 治癒魔法使える人いらっしゃいますかぁ?」

 誰も手を挙げなかった。

「キース、ついてないな。誰も治癒魔法使えないってさ。そうだ、ポーション飲めよ。高級ポーションなら、治るんじゃないか」

 キースが憎々しげに俺を見ている。持っているわけがない。俺が全部持って行ってしまったからな。

「何だ、持ってないのか。誰か高級ポーション持っている方、いらっしゃいます?」

 一人の若い女性冒険者が手を挙げた。

「ありがとうございます。助かりました。おいくらで譲っていただけるのでしょうか」

「定価の五万ダーラで結構です」

 女性が俯いて、ボソボソと小さな声で囁くように答えた。

「なんてお優しい。おい、キース、五万だってよ。早く出さないと死んじゃうぞ」

 キースは震える手で懐から財布を出そうとしていた。たまりかねたアンジェラがキースに駆け寄ろうとしたが、俺は「拘束」よりもさらに上位の「呪縛」の魔法で動けなくした。呪縛は目しか動かせず、アンジェラの口から涎が垂れて来た。

 これ以上は残酷ショーになってしまう。人目のあるところではこれぐらいにしておこう。俺はアンジェラの呪縛を解いた。

 アンジェラが動き出し、すぐに口を拭って、冒険者からポーションを受け取った。そして、キースに駆け寄り、刺さっているクナイを引き抜いて、ポーションを飲ませた。

 これでしばらく安静にしていれば、キースは助かるだろう。

「みなさん、ブラックイーグルを抜けるには、メンバー全員を倒さないといけないという掟があるんです。今、僕、キースを倒しましたよね? みなさんが証人になってくれると助かります」

 俺の適当な話を観客は信じたようだ。証人になりますっ、なんて声が聞こえて来た。俺はアンジェラに向き直った。

「次はお前だ、アンジェラ」

 アンジェラは完全に怯えてしまっていた。俺の呪縛の魔法を受けたことで、魔法使いとしての実力の差が分かってしまったようだ。

「わ、私の負けでいいわ、マモル」

 こんなにおとなしいアンジェラを見るのは初めてだった。実はアンジェラの容姿は、俺のドストライクなので、このままお持ち帰りしたくなってしまうが、心を鬼にする。

「え? そんなつまらない終わり方、観客のみなさんに失礼だぞ。魅了のアンジェラと寄生虫マモルの世紀の魔法合戦を見せてあげようぜ。ほら、魔法出してみ?」

 観念したのか、アンジェラの周りが魔法の起動のために騒がしくなった。ファイアを何発か撃って来たので、よけてみた。

 アンジェラが驚愕の顔になっている。

「なぜ、よけられるの!?」

 よけたのは予想外だったようだ。それはそうだろう。レジストするやつは沢山いるが、よけるやつなんているはずがない。驚くのは当たり前だった。

「なぜって言われてもな。そうだ、逃げ足が速いからっていう理由はどう?」

 ダメだ。アンジェラは完全に戦意喪失してしまっている。ちょっとやる気を出してもらわないと、訓練にならないな。

「じゃあ、こっちから行くぞ」
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