英雄の俺が転生憑依した男は、S級冒険者パーティの下働きだった。頭に来た俺は、ダンジョン攻略中に全員の荷物を持ってパーティから逃げ出してやった

もぐすけ

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処罰

新パーティ

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「よく分かりませんわ」

 イメルダは俺の斜め前に座った。俺の正面にはリサ、右隣にはアンジェラが座っている。

「だんだん分かっていくと思うけど、ジークは私の大切な人で、私よりもずっとずっと強いのよ。手を出さないで頂戴」

「いくらお姉様のお願いでも、聞けませんわ。そんなに強ければ、よければいいのです」

「そう言われてみればそうね。ジーク、私の魔法はことごとくよけられるのに、なぜイメルダのビンタはよけないの?」

「そうだな、仲間になるお前たちには、明かしておいた方がいいだろう」

「ちょっと待ってください。ジークのお姉様への口の聞き方がなってないですわ。でも、それよりも、まず気になるのは、お姉様の魔法をよけるってどういうことですの?」

「魔法は準備中にうるさいほど音を出すから、どこに飛んで来るのか丸わかりなんだよ」

 音なんか出ないわよね、と三人は首を振っている。

「マモルは『歌』のスキルがトリプルSなんだ。歌は耳が良くないと上手く歌えないから、聴力もすごい。どんな小さな音も拾えるし、周波数レベルで聞き分けられるんだぜ」

 周波数って何? と三人は囁き合っている。

「まあ、そういうことで、魔法はよけることができるし、レジストもできる。さらに絶対魔法防御と絶対物理防御が使えるので、俺に魔法は効かない。ついでに、遠距離攻撃も全て防御できるんだ。ただ、至近距離からの攻撃を見切れないんだよ」

「兄さんとの対戦は見ていたけど、ルーカスにはどうやって勝ったのよ」

「同じ戦法だ。次から次に攻撃を出して、相手に攻撃をさせる前に打ち破ったのさ。俺の人格には剣技と武技の型がいくつも備わっているんだが、マモルの『踊り』のスキルがきっちりと型の動きを再現してくれるから、相手は何も出来ずにやられてしまうんだ」

「ジーク、あなた、強いのか弱いのか分からないじゃないっ」

「嫌いになったか?」

「ううん、私は徹底的に打ち負かされたわ。私よりも強い男はじじい以外ではあなたが初めてなの。エッチで、わがままで、それでいて、近くから攻撃するとイチコロなんて、可愛くて仕方ないわ。ねえ、今すぐしちゃおうよっ」

「ちょっと、アン、イメルダもいる前で十八禁は止めてくれる? それにマモルの初めては私ってことになってるのよ」

「マモルはあなたにいくらでもくれてあげるけど、ジークは私のものよ」

「あのう、お姉様方、ジークとマモルの違いがよく分かりませんわ」

「全然違うわよっ。でも、リサもちょっと可哀想だから、ジーク、一年に一日、いいえ、一時間ぐらいはマモルになってあげて」

「す、少な過ぎるでしょう!」

「だって、あなた、マモルを虐めるだけじゃない。私の大切なジークの体を傷つけるなんて我慢できないわよ。一時間でも多いぐらいよ」

「私はマモルを傷つけたことなんてないわよ。可愛すぎて虐めたくなっちゃって、噛んだり蹴ったりはするけど、酷いことはしないわよ。それよりも、マモルが悲しむことが好きなの。悲しい表情をさせたいのに、マモルはいつも優しく微笑むだけなのよぉ」

 リサはやはりど変態だ。しかし、何の話だこれは?

「マモルが何日もいたら、私はイラついて魔法放っちゃうかもよ。私も体は傷つけないけど」

「お、お姉様方、ジークとマモルの話はひとまずおいて、早くパーティ登録しませんか」

「そうだったわね。リサ、ジークとマモルの配分は今後話しあうとして、ジークの体は一つしかないんだから、大切にしましょうよ」

「異存ないわ、マモルの体だけどね」

「今はジークの体でしょう」

「お、お姉様方っ」

 何なんだこれは。イメルダが常識人に見えるぞ。

「おい、ジーク。さっさと登録して来いよ」

 イメルダが俺を睨んで、顎で行けっと指示して来た。やはり常識人じゃなかった。

「ちょっとイメルダ、話聞いてたの? ジークにそんな雑用させないでよ」

「でも、お姉様、一番弱い人が雑用をするのではなくて?」

「私はジークより弱いわよ。でも、あなたは私より弱いわよね」

「でも、私よりジークは弱いですわ。さっき証明しましたわ」

 やれやれ、話が進まないな。

「アン、二人で行こうか」

「ええ」

 俺が立ち上がると、アンジェラも立ち上がり、嬉しそうに腕を絡めて来た。

「ちょっと、二人きりにはさせないわよ。私も行くわ」

「お姉様方が行かれるのなら、私も行きますわ」

 何のコメディだ、これは。まさか、こんなのがずっと続くんじゃないだろうな。

 その日、後に伝説となるパーティ、「ホワイトイーグル」が冒険者組合に登録された。
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