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ブランとの出会い
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私たちは早速出発した。
防衛馬車には私と忍者のニーナの二人が乗り、御者が料理人のブランという唯一の男性と魔法使いのガガ、馬車の左右に神官のマリアと弓使いのアン、後方にリーダーで剣士のレイモアがそれぞれ馬に騎乗して護衛をする隊形だった。
チームの中ではニーナが最強らしく、常に私の側にいて警護をしてくれていた。
少しテレサに似た感じがする若く可愛らしい女性だった。
「伯爵様、帝国のハバスまでは三日ほどかかります。途中のリンガで町の宿屋に泊まりますが、それ以外は馬車でお休み頂きます。私が宿でも馬車でも就寝時も同室させて頂きますが、ご了承頂けますでしょうか?」
「問題ない。気苦労をかけることになるが、申し訳ない」
ニーナの申し出は事前に分かっていたのだが、私は想定しない事態に直面していた。
料理人のブランとは初対面なのである。
シミュレーションに出て来なかった人物なのだ。
料理人を付けるかどうかはレイモアから条件交渉の際に聞かれたが、付けると答えたのは現実世界だけだったのだろうか。
シミュレーションでは、料理は五人の女性が交代で担当していた。
「ニーナ、少しグロリア伯爵様とお出しする料理について、話をさせてもらっていいか?」
御者台から男性の声が聞こえた。
「伯爵様、よろしいでしょうか?」
ちょうどブランのことを考えていたときだったので、タイミングがいいなと思った。
「ああ、構わない」
私が答えると、すぐに御者台からするりとブランが入って来て、ニーナの隣に座った。
濃い茶系のサラサラとした髪で、涼しげなエメラルドグリーンの目をしている。二十代前半ぐらいだろうか。容姿がとてもいい。
最初に紹介されたときは、見知らぬ男性ということで動転してしまったが、少し落ち着いて見てみると、どこかで見たことのある面影をしている。
どこでだったろうか。
「伯爵様、お口に合わない食材などはございますでしょうか」
「特にないが、キクラゲがあまり好きではない」
キクラゲは何も食べるものがないときに仕方なく食べるものだと私は思っていた。
「キクラゲでございますか? ふふふ、私は使いませんのでご安心を。それでは、何か料理に対するご注文はございますか?」
ふふふと笑う表情がとても魅力的だった。
「旅の最中で不自由も多いだろうから、全てをブラン殿にお任せする」
「ありがとうございます。殿は付けなくて結構です。ブランとお呼びください。それでは、失礼致します」
そう言い残して、ブランは入って来た時と同じようにするりと御者台に戻って行った。
私はニーナに小声で聞いた。
「ブランはチームは長いのか?」
「一年ほどです。何かお気に触りましたでしょうか?」
「いや、そんなことはない。女性ばかりのチームに男性は珍しいと思ってな」
「料理人は男性しか出来ない決まりなのです。私たち五人が交代で料理をするプランもございますが、料理人付きをご指定頂いた場合は、ブランが料理を担当します。彼の料理は絶品でして、実は私たちも楽しみにしています」
そう言って微笑むニーナは、ますますテレサに似た感じになった。
「そうか、それは楽しみだな。少し休ませてもらう」
私はそう言って、目を閉じた。
あまり負担がかからない程度にこの先をシミュレーションしようと思ったのだ。
この先数時間は無事であることを確認したが、やはりおかしい。
二時間後に昼食を取るのだが、料理は魔法使いのガガが担当していて、ブランは登場して来ないのだ。
どういうことなのだろうか。
防衛馬車には私と忍者のニーナの二人が乗り、御者が料理人のブランという唯一の男性と魔法使いのガガ、馬車の左右に神官のマリアと弓使いのアン、後方にリーダーで剣士のレイモアがそれぞれ馬に騎乗して護衛をする隊形だった。
チームの中ではニーナが最強らしく、常に私の側にいて警護をしてくれていた。
少しテレサに似た感じがする若く可愛らしい女性だった。
「伯爵様、帝国のハバスまでは三日ほどかかります。途中のリンガで町の宿屋に泊まりますが、それ以外は馬車でお休み頂きます。私が宿でも馬車でも就寝時も同室させて頂きますが、ご了承頂けますでしょうか?」
「問題ない。気苦労をかけることになるが、申し訳ない」
ニーナの申し出は事前に分かっていたのだが、私は想定しない事態に直面していた。
料理人のブランとは初対面なのである。
シミュレーションに出て来なかった人物なのだ。
料理人を付けるかどうかはレイモアから条件交渉の際に聞かれたが、付けると答えたのは現実世界だけだったのだろうか。
シミュレーションでは、料理は五人の女性が交代で担当していた。
「ニーナ、少しグロリア伯爵様とお出しする料理について、話をさせてもらっていいか?」
御者台から男性の声が聞こえた。
「伯爵様、よろしいでしょうか?」
ちょうどブランのことを考えていたときだったので、タイミングがいいなと思った。
「ああ、構わない」
私が答えると、すぐに御者台からするりとブランが入って来て、ニーナの隣に座った。
濃い茶系のサラサラとした髪で、涼しげなエメラルドグリーンの目をしている。二十代前半ぐらいだろうか。容姿がとてもいい。
最初に紹介されたときは、見知らぬ男性ということで動転してしまったが、少し落ち着いて見てみると、どこかで見たことのある面影をしている。
どこでだったろうか。
「伯爵様、お口に合わない食材などはございますでしょうか」
「特にないが、キクラゲがあまり好きではない」
キクラゲは何も食べるものがないときに仕方なく食べるものだと私は思っていた。
「キクラゲでございますか? ふふふ、私は使いませんのでご安心を。それでは、何か料理に対するご注文はございますか?」
ふふふと笑う表情がとても魅力的だった。
「旅の最中で不自由も多いだろうから、全てをブラン殿にお任せする」
「ありがとうございます。殿は付けなくて結構です。ブランとお呼びください。それでは、失礼致します」
そう言い残して、ブランは入って来た時と同じようにするりと御者台に戻って行った。
私はニーナに小声で聞いた。
「ブランはチームは長いのか?」
「一年ほどです。何かお気に触りましたでしょうか?」
「いや、そんなことはない。女性ばかりのチームに男性は珍しいと思ってな」
「料理人は男性しか出来ない決まりなのです。私たち五人が交代で料理をするプランもございますが、料理人付きをご指定頂いた場合は、ブランが料理を担当します。彼の料理は絶品でして、実は私たちも楽しみにしています」
そう言って微笑むニーナは、ますますテレサに似た感じになった。
「そうか、それは楽しみだな。少し休ませてもらう」
私はそう言って、目を閉じた。
あまり負担がかからない程度にこの先をシミュレーションしようと思ったのだ。
この先数時間は無事であることを確認したが、やはりおかしい。
二時間後に昼食を取るのだが、料理は魔法使いのガガが担当していて、ブランは登場して来ないのだ。
どういうことなのだろうか。
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