私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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処罰

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 王国での革命軍と政府軍の戦いは二年に渡ったが、遂に政府軍が降伏し、王と王妃は逃亡した。

 教国は王妃の母国だが、王国の新政府からの圧力を受け、二人の受け入れを拒否したが、帝国は受け入れを表明した。

 革命軍は秘密裏に帝国からの支援を受けており、帝国とは友好関係にあった。王と王妃の受け渡しは、実は支援の条件だったのだ。

 帝国では昨年ブランデル皇太子にサウザー皇帝が存命中のまま皇位を譲位しており、ブランが皇帝、私が皇后になっていた。

 遂に待ちに待った瞬間が来たのだ。

 婚約の許可を得たときと同じ謁見の間だが、今日は玉座にブランが座り、隣には私が座っていた。

 随分とやつれた表情のライザーとユリカ姫が謁見の間に現れた。

「ライザー王、ユリカ王妃、御身に起きた不幸な出来事に朕も心を痛めておる。帝国でゆるりとされよ、と言いたいところが、皇后が許してくれそうにない。そなたたちは皇后に何か恨みでも買っているのか?」

 思いもしない話に二人は顔を上げて、私の方を見た。

「シーファ?」

 ライザーが信じられないものを見るような目で私を見た。

「ライザー王、いかにも私はシーファですが、呼び捨てはお止めになって」

 ライザーはハッとして、すぐに失言を詫びた。

「申し訳ない。皇后は私の知り合いの若い頃とよく似ておられる。名前まで同じとは奇遇な」

「元妻を知り合いとは、冷酷ですこと。知己のテレサを無惨に手討ちにされるだけのことはありますわ」

「テレサ?」

 ライザーはなぜテレサの名前が出てきたのかという表情だ。

「お、王様、私が以前、王妃様の侍女のテレサを手討ちにしたことを仰っておられるのだと思います」

「なぜそのようなことを?」

「王室の馬車を盗もうとしたからにございます」

「それだけでか? 裁判もせずに殺傷するなど……」

 やはりそうか。ライザーは私には冷たくなったが、無用な殺生は好まない性格だった。

「ライザー王は関与されておられないのですね。では、冷宮庵にシーファ王妃を住まわせたこともご存知ない?」

「それは知っている」

「あのような廃屋に王妃を送った理由を私は知りたいですわ」

 私がずっと知りたかったことだ。

「廃屋? 私は補修した後に移せと命じたはずだが……?」

 ライザーがユリカ姫の方を見た。

「申し訳ございません。王妃様にはそのままの状態の冷宮庵にお移り頂きました」

 ユリカ姫は下を向いたまま答えた。

「そのままだと? 床は腐り落ちていて、住めるような状態ではないと報告を受けたゆえ、補修を命じたのだぞ」

 そうだと思ったのだ。ライザーは意地の悪いことはしない人なのだ。

「やはりユリカ姫のイジメでしたのね。さて、どうしましょうか」

 ライザーが私に向き直った。

「そなたはシーファ王妃とどういう関係なのだ? 王妃の若い頃の容姿と瓜二つだ。それどころか、声や話し方、それから瞬きの間隔やタイミングまで酷似している。本人としか思えないのだが……」

 ここにも私を熟知する男がいたわ……。

「妹ですわ。姉の無念を晴らそうと思っておりますの。ユリカ姫は死刑ですわね」

 ユリカ姫が青くなった。

「そ、そんな……」

「テレサとサージを手討ちにしたあなたには、最初から情状酌量の余地はないわ。あのような廃屋に王妃を連れて行ったことも許せません」

 あはは、言ってやったわよっ。

「私をユリカ姫と呼ぶあなたは、シーファ王妃様ではなくって!?」

 だから何よ、この女だけは許せないわ。

「シーファ王妃は私の姉で二十五歳年上ですのよ。ユリカ姫は私を四十過ぎだと仰るのですか。何て無礼なの。同じ死罪でも悲惨な死罪にしちゃおうかしら」

「待って頂きたい。王国の王妃を罰する権利は貴国にはないはずだ」

 ライザーはユリカ姫を守りたいのね。

「今回のは私個人の手討ちですわ。ユリカ姫が姉が大事にしていたテレサを手討ちにしたように」

「貴人が使用人を手討ちにすることは許されている。今回の手討ちとは理屈が違う」

「立場の強いものが立場の弱いものを殺す、という理屈ですわ。ライザー王は殺しはしませんが、姉が味わった十年間の孤独を今後味わって頂きます」

「シーファ……」

 ライザーはどうやら私だと気づいたようだが、ユリカ姫を何としても守りたいようだ。矛先をブラン向けて来た。

「ブランデル皇帝、帝国は王国の皇族をこのように扱うのか」

 ブランはいきなり自分に話しかけられて戸惑った感じではあったが、淡々と返答した。

「そうは言われても、帝国出身のシーファ王妃を無下に扱ったのは貴国ではないのか? 因果応報だと朕は思う」

 それでもまだ何か発言しようとしたライザーを私は遮った。

「分かってないわね、あなたたち」

「何のことだ?」

「そもそも王国の革命を扇動したのは私なのよ。白金軍にあなたたちを帝国に護送するよう取り計らったのも私なの。白金軍の総帥は私で、武具の色は私の髪と瞳の色から来ているのよ」

「何だと!?」

「市民軍に女より美しい男の軍師がいたでしょう。あれはブルーという帝国のスパイよ。王政を転覆させて、あなたたちを国外追放したのは私の命令なのよ。あなたたちをどうするかは私の一存で決めるの。よろしくて?」

 サウザーとユリカは、その後何も話さなくなった。
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