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美容療法
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「おはよう、マリ」
朝起きたら、妹はもう既に起きていて、食事の支度をしていた。
「お兄様、おはようございます。今日は顔色がよろしいのですね」
妹は地は悪くないと思うのだが、痩せ細っていて、なんというか、辛気臭い感じがする。
両親が亡くなってから、使用人もいなくなり、病弱な俺の看病をしながら、食費を切り詰めて、家事全般をこなしているためだ。
結局、現世でも、俺は妹の世話になりっぱなしだ。
「マリ、これまで苦労かけて来たけど、もう大丈夫だ。神様に願いが通じたんだ。俺、治るんだよ」
「そうなのですね。気の持ちようは大事だと思います。でも、無理はなさらないで」
どうやら気休め発言だと思ったようだ。
前世の姉ちゃんは文句一つ言わず、おしゃれもせず、俺のことを一番に考えて、中高一貫の私学の高い学費を払ってくれていた。
現世でも全く同じだ。こんな家族思いの妹を絶対に不幸になんかするものか。
「本当なんだ。この薬を見てくれ。万病に効く万能薬だ。この薬を俺は調合することが出来るんだ」
金色に輝く薬草を見て、妹は信じるどころか、ますます疑いの色を強めた。
「ほら、見ていてくれ。女神様、お願いします」
俺は昨夜採ってきた草の残りを妹の前で握りしめた。
(いいけど、力を見せるのは妹さんだけにした方がいいわよ)
「はい、お願いします」
草が見る見る金色へと色を変えていく。
「お兄様、それ……、手品?」
妹はまだ疑っているようだ。
「いや、手品じゃない。女神様の力なんだ。これを日干しにして、すりおろした薬が万能薬になるんだ。俺の病気が完治したら、お前をこの力で楽にさせたい」
「お兄様、疲れてしまったのね。お可哀想に……」
疑り深いやつだな……。
(この世界の住人にしては、神の力をなかなか信じないわね。美容療法を体験させましょう)
「マリ、信じられないのは分かるが、本当なんだ。両手をだしてくれるかい?」
マリアンヌがおずおずと手を差し出した。
「こうでしょうか?」
「そうだ。手を握るぞ」
「お兄様の体温しか感じませんが、何か起きているのでしょうか?」
ほんの少しだが、マリアンヌの血色が良くなった。
「そうだな、鏡を見てみるといい。血色が良くなっているのが分かるか?」
俺はマリアンヌを鏡台の前まで連れて行った。
「そうでしょうか? 確かに心持ち肌全体が火照っている感じはしますが……」
「美容整形だ」
(違うわよ。美容療法よ。あくまで本人の容姿をベースに肌のはりやシミそばかすの除去、部分痩せ、骨格の成長加減の補正などを行って、綺麗にしていく内科的な療法よ)
「間違えた。美容療法だ。時間は少しかかるが、お前が元々持っている美しさを最大限に引き出すからな」
妹は半信半疑だったが、一週間後、遂に俺を信じた。
「お兄様、私の肌がツルツルのスベスベですっ。そばかすも綺麗に消えました。一体、どんな魔法ですの?」
こいつ、人の話を全く聞いてないな。女神様の力だと何度も説明しているじゃないか。
かくなる上は、あのお方のお言葉を拝借させてもらおう。
「ハンドパワーです」
妹はキョトンとしたままだった。
(妹さんはこっちの記憶しかないのよ。スベるに決まってるじゃないっ)
朝起きたら、妹はもう既に起きていて、食事の支度をしていた。
「お兄様、おはようございます。今日は顔色がよろしいのですね」
妹は地は悪くないと思うのだが、痩せ細っていて、なんというか、辛気臭い感じがする。
両親が亡くなってから、使用人もいなくなり、病弱な俺の看病をしながら、食費を切り詰めて、家事全般をこなしているためだ。
結局、現世でも、俺は妹の世話になりっぱなしだ。
「マリ、これまで苦労かけて来たけど、もう大丈夫だ。神様に願いが通じたんだ。俺、治るんだよ」
「そうなのですね。気の持ちようは大事だと思います。でも、無理はなさらないで」
どうやら気休め発言だと思ったようだ。
前世の姉ちゃんは文句一つ言わず、おしゃれもせず、俺のことを一番に考えて、中高一貫の私学の高い学費を払ってくれていた。
現世でも全く同じだ。こんな家族思いの妹を絶対に不幸になんかするものか。
「本当なんだ。この薬を見てくれ。万病に効く万能薬だ。この薬を俺は調合することが出来るんだ」
金色に輝く薬草を見て、妹は信じるどころか、ますます疑いの色を強めた。
「ほら、見ていてくれ。女神様、お願いします」
俺は昨夜採ってきた草の残りを妹の前で握りしめた。
(いいけど、力を見せるのは妹さんだけにした方がいいわよ)
「はい、お願いします」
草が見る見る金色へと色を変えていく。
「お兄様、それ……、手品?」
妹はまだ疑っているようだ。
「いや、手品じゃない。女神様の力なんだ。これを日干しにして、すりおろした薬が万能薬になるんだ。俺の病気が完治したら、お前をこの力で楽にさせたい」
「お兄様、疲れてしまったのね。お可哀想に……」
疑り深いやつだな……。
(この世界の住人にしては、神の力をなかなか信じないわね。美容療法を体験させましょう)
「マリ、信じられないのは分かるが、本当なんだ。両手をだしてくれるかい?」
マリアンヌがおずおずと手を差し出した。
「こうでしょうか?」
「そうだ。手を握るぞ」
「お兄様の体温しか感じませんが、何か起きているのでしょうか?」
ほんの少しだが、マリアンヌの血色が良くなった。
「そうだな、鏡を見てみるといい。血色が良くなっているのが分かるか?」
俺はマリアンヌを鏡台の前まで連れて行った。
「そうでしょうか? 確かに心持ち肌全体が火照っている感じはしますが……」
「美容整形だ」
(違うわよ。美容療法よ。あくまで本人の容姿をベースに肌のはりやシミそばかすの除去、部分痩せ、骨格の成長加減の補正などを行って、綺麗にしていく内科的な療法よ)
「間違えた。美容療法だ。時間は少しかかるが、お前が元々持っている美しさを最大限に引き出すからな」
妹は半信半疑だったが、一週間後、遂に俺を信じた。
「お兄様、私の肌がツルツルのスベスベですっ。そばかすも綺麗に消えました。一体、どんな魔法ですの?」
こいつ、人の話を全く聞いてないな。女神様の力だと何度も説明しているじゃないか。
かくなる上は、あのお方のお言葉を拝借させてもらおう。
「ハンドパワーです」
妹はキョトンとしたままだった。
(妹さんはこっちの記憶しかないのよ。スベるに決まってるじゃないっ)
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