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鳳凰の間
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王宮は王都の中央に位置しており、王宮の中には王妃と側室が居住する後宮区画がある。そこは、王を除く成人男子の出入りは、たとえ親兄弟でも厳禁となっている。
そのため、後宮の妃たちと会うためには、後宮の入り口に隣接している礼拝堂で会うのがしきたりとなっていた。
礼拝堂は巨大な施設で、個室がいくつか用意されており、その中に王妃専用の「鳳凰の間 」という個室があって、美容療法はそこで行うことになっていた。
マリアンヌが生まれる前、両親に王都に連れて来られたときに、王妃の乗った馬車が偶然近くを通り過ぎたことがある。そのとき、チラリと見えた横顔が非常に美しかった記憶があるが、二十年近く経った今は、少し美貌に翳りが出て来ている。
「キャスバル・ロンメルク子爵です。婚約者のマーガレット・カーネギーと妹のマリアンヌも連れて参りました。彼女たちは後宮での王妃様の運動や食事のメニューのお手伝いをいたします」
「よく来てくれました、ロンメルク殿。リリアナからおおよそのことは聞いております。早速始めてくれますか?」
優しく穏やかでしっとりとした話し方だ。
「はい、それではこちらにお座り下さい。お付きの方は室外でお待ちください」
侍女たちが退室するのを待ってから、俺は王妃の両手を取った。
(ちょっと貧血気味だけど問題ないわ。体調管理はしっかりとされているようね。少し肩凝りがきついかもね。一緒に治して行きましょう)
「少し貧血気味で、肩凝りがお辛いでしょうか。一緒に治療いたします」
「ふふ、すぐに分かるのですね。不思議な力をお持ちね」
微笑むと妖艶な大人の女の魅力がほとばしり、ドキリとしてしまう。
「今朝はこれで終わりです。運動と食事については、マリアンヌがご案内するメニューを忠実にこなしていただけますでしょうか。効果が何倍にも上がります」
「わかりました。マリアンヌさん、よろしくね」
「よろしくお願いします」
マリアンヌはかなり緊張しているようだ。
「マーガレットは元気になって、本当に良かったわね」
王妃がマーガレットに微笑みかけた。王妃とマーガレットは以前から面識がある。
「はい、王妃様、キャス様のおかげです」
「では、二人はこのまま後宮に入ってもらってよろしいかしら?」
「はい、よろしくお願いします。私は午後四時に再びこちらに参ります」
王妃は二人を連れて出て行った。
王妃は人当たりがよく、穏やかそうに見えるが、敵には容赦なく、残酷なことも平気で行うらしい。絶対に敵にしないようにと伯爵から言われている。
味方も使えないと思ったら、すぐに切って捨てるらしい。かなり怖い女性なのだそうだ。
マーガレットは娘のリンカとも親しいそうで、問題はないだろうが、マリアンヌが心配だ。
マリアンヌは貴族の令嬢ではあるが、小さい頃から料理、掃除、洗濯などの家事をこなし、領地経営や納税などの事務の経験もあるという令嬢としてはかなり変わった経歴を持っている。
それでいて、控えめで奥ゆかしく、俺としては、どこに出しても恥ずかしくない出来た妹なのだが、果たしてどう評価されるのだろうか。
気に入ってもらえるとよいが。
そのため、後宮の妃たちと会うためには、後宮の入り口に隣接している礼拝堂で会うのがしきたりとなっていた。
礼拝堂は巨大な施設で、個室がいくつか用意されており、その中に王妃専用の「鳳凰の間 」という個室があって、美容療法はそこで行うことになっていた。
マリアンヌが生まれる前、両親に王都に連れて来られたときに、王妃の乗った馬車が偶然近くを通り過ぎたことがある。そのとき、チラリと見えた横顔が非常に美しかった記憶があるが、二十年近く経った今は、少し美貌に翳りが出て来ている。
「キャスバル・ロンメルク子爵です。婚約者のマーガレット・カーネギーと妹のマリアンヌも連れて参りました。彼女たちは後宮での王妃様の運動や食事のメニューのお手伝いをいたします」
「よく来てくれました、ロンメルク殿。リリアナからおおよそのことは聞いております。早速始めてくれますか?」
優しく穏やかでしっとりとした話し方だ。
「はい、それではこちらにお座り下さい。お付きの方は室外でお待ちください」
侍女たちが退室するのを待ってから、俺は王妃の両手を取った。
(ちょっと貧血気味だけど問題ないわ。体調管理はしっかりとされているようね。少し肩凝りがきついかもね。一緒に治して行きましょう)
「少し貧血気味で、肩凝りがお辛いでしょうか。一緒に治療いたします」
「ふふ、すぐに分かるのですね。不思議な力をお持ちね」
微笑むと妖艶な大人の女の魅力がほとばしり、ドキリとしてしまう。
「今朝はこれで終わりです。運動と食事については、マリアンヌがご案内するメニューを忠実にこなしていただけますでしょうか。効果が何倍にも上がります」
「わかりました。マリアンヌさん、よろしくね」
「よろしくお願いします」
マリアンヌはかなり緊張しているようだ。
「マーガレットは元気になって、本当に良かったわね」
王妃がマーガレットに微笑みかけた。王妃とマーガレットは以前から面識がある。
「はい、王妃様、キャス様のおかげです」
「では、二人はこのまま後宮に入ってもらってよろしいかしら?」
「はい、よろしくお願いします。私は午後四時に再びこちらに参ります」
王妃は二人を連れて出て行った。
王妃は人当たりがよく、穏やかそうに見えるが、敵には容赦なく、残酷なことも平気で行うらしい。絶対に敵にしないようにと伯爵から言われている。
味方も使えないと思ったら、すぐに切って捨てるらしい。かなり怖い女性なのだそうだ。
マーガレットは娘のリンカとも親しいそうで、問題はないだろうが、マリアンヌが心配だ。
マリアンヌは貴族の令嬢ではあるが、小さい頃から料理、掃除、洗濯などの家事をこなし、領地経営や納税などの事務の経験もあるという令嬢としてはかなり変わった経歴を持っている。
それでいて、控えめで奥ゆかしく、俺としては、どこに出しても恥ずかしくない出来た妹なのだが、果たしてどう評価されるのだろうか。
気に入ってもらえるとよいが。
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