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最終話 幸せ

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 シクススを襲わせた犯人は分からず終いだったが、国王と王妃の両陛下は第一王子ではなく、第六王子を立太子した。

 証拠は出なかったが、そういうことなのだろう。

 その後、第一王子は宰相と結託して謀反を起こし、宰相ともども処刑されてしまった。

 王妃様が寂しそうだったが、さすがに謀反には厳しい処罰が必要なのだ。

 シクススに野心は全くなかったのに、周りが勝手にイメージを作って、第一王子が一番踊らされてしまった形になった。疑心暗鬼に陥って自滅してしまったわけだが、母を早くに亡くしたという境遇もあったように思う。自業自得とはいえ、少し気の毒に思った。

 妹は王太子妃となったが、いつかは王妃になるのだろう。王太子と王太子妃は仲睦まじく、王国での理想の夫婦と評判だが、そのままずっと仲の良い夫婦でいることだろう。

 シクススにはエリクサーの件は黙ってもらっている。彼もあまり思い出したくはないようだ。かなりすごい薬だが、量産したくはない。

 緊急事態とはいえ、シクススには色々と暴言を吐いてしまった。妹を取られてしまった相手ということで、冷たい気持ちが出てしまったのだ。だが、シクススは笑って許してくれた。案外いいやつなのかもしれない。

 俺もマーガレットと結婚し、幸せな日々を過ごしている。

 謀反の失敗で、宰相の侯爵家が廃され、それと入れ替わりで、カーネギー家は侯爵に陞爵した。

 カーネギー家の当主は俺が継いでいる。

 女神の涙の水溶液の販売で暴利を得ているため、資金は潤沢にあるし、俺の力にあやかりたいということで、他の貴族は俺の顔色を窺うようになった。

 アードレー家も例外ではない。リリアナ様にはいまだに俺も頭が上がらないが、アードレー家の新当主は俺に平身低頭だ。

 女神様は俺も妹も幸せになったということで、肩の荷がとりあえずおりたようだが、俺たちが一生を終えるまで、見守る義務があるらしい。

 俺も妹も、この後は子供ができて、家族に囲まれて、という人生になるのだろう。

 だが、いつ子供を作るのかは決められるため、マーガレットもマリアンヌも、もうしばらくは夫婦二人で楽しもうと決めているようだ。

 子供の致死率が高い世界だが、女神様がいれば安心だ。だが、それも俺が生きている間という限定付きだ。

「仕方ない。子孫のために何本かエリクサーを作っておくか」

(手伝わないから、自分でするのよ)

「はい。でも、作っているところを女神様に見られたくないのですが」

(そうね、私も見たくないから、やはり手伝うわよ)
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