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第一章 イグアスのダンジョン
冒険者組合
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15年ぶりの冒険者組合は何も変わっていなかった。
イグアスは俺の冒険者デビューの町だ。17歳で冒険者になり、ここで5年間暮らした。王都でニックに嵌められた俺は、逃げるようにしてこの町まで戻ってきたのだ。
だが、この町でも俺は人々にけなされ、蔑まれ、いたたまれなくなった俺は、懐かしいイグアスのダンジョンに籠ることになったのだった。
ルシアに手を引っ張られ、ホールに入ったが、男女2人組のパーティはさほど珍しくなく、ちらっと見られる程度だ。
俺は少し安心して、ベンチに座り、手続きはルシアに任せることにした。
ルシアにはなじみの受付がいるらしく、そこでリヤカーの貸し出し申請をしている。受付のお姉さんが俺の方をちらちら見ている。あの受付のお姉さんは覚えている。まだいたのか。性格のいい娘さんだった。
「ルシアちゃん、男の冒険者たちとダンジョンに入ったって噂を聞いて、ずいぶんと心配してたのよ。大丈夫だった?」
「うん、大丈夫よ。いいお客さんだった。サーベルタイガーを4匹倒したので、リヤカーをお借りしたいです」
「あら、それは凄いわね。手続きしておくから、持って行っていいわよ。はい、これがカギよ」
「お姉さん、ありがとう」
「でも、あの男、何だか人相の良くない人ね。あなた綺麗なんだから、気をつけなよ」
というような会話があったとルシアから聞いた。最後のフレーズの「あなた綺麗なんだから」を俺に言いたかったらしい。
「そうか」
俺はそう答えるにとどめた。「実は俺もさっき気づいたんだが、顔立ちは確かに綺麗だよな」などとは決して言わないのだ。
俺たちはリヤカーを持ち出して、ダンジョンに戻った。リヤカーをダンジョンの入り口のリヤカー置き場に置いて、ダンジョンに入る。
ダンジョン1階で、ルシアが前を全開にして、サーベルタイガー4匹がどさっと出て来るところを俺はルシアの背中越しに見た。
あ、この光景は見たことがある。
聖女が格納持ちだったが、彼女の場合は格納空間との窓口が足元にあった。そのため、ローブの下はいつもミニスカートだった。彼女は格納から大きなものを出すときは、ローブの裾をまくっていた。俺たちに決して足を見せなかったので、いつも後ろから見ていたが、その時を思い出した。
多くの格納持ちは窓口が体から十分に離れていて、服は邪魔にならない。ルシアと聖女が特別なのだろう。聖女の格納の広さは有名だったが、格納空間が広いと窓口が体に近づくのかもしれない。
ルシアは魔物の処置に慣れているようで、すぐに血抜きを始めた。
俺は処置が終わったものから、一匹ずつダンジョンから背負って持ち出して、4匹全部をリヤカーに積み上げた。
重力魔法を使うと驚かれて、噂になってしまうので、俺がダンジョンから1匹ずつ背負って持ち出した、
サーベルタイガーは地下7階にはほとんど生息しておらず、地下6階をメインにしている魔物ということで、今回の換金対象とすることにした。毛皮、肉、牙が高く売れる。
地下7階に魔物がいなくなったことは、いずれ大ニュースになると思うので、それに関わっていることを知られないように、慎重に行動する必要があるのだ。
こうしてリヤカーに乗せた4匹を冒険者組合の裏にある、解体受付まで持っていくと、スキンヘッドのマッチョなオヤジが受付に座って、俺の方を睨んでいた。
うげっ、まだあのオヤジがここの担当かよ。少し老けたが、相変わらず筋肉隆々だな。
「オヤジさん、この4匹の買取りをお願いします」
ルシアがオヤジに話しかけた。
「ルシア、新しいパーティか?」
オヤジが俺の方をちらっと見た。
「ううん、お客さんよ」
「そうか。どれ、見せてみな」
オヤジがサーベルタイガーを検分している。
「どうやって殺したんだ? どこにも傷がないが」
「それ、秘密なのよ。買取に殺傷手段の申告は必要ですか?」
「いや、必要ねえ。全く傷がない上物だ。処置も完璧で肉の状態もいい。最高額で引き取らせてもらう」
「ありがとう、オヤジさん」
オヤジが声を潜めてルシアにささやいた。
「ルシア、いい客、捕まえたな。お前さんは綺麗なんだから、変なことされないように気をつけろよ」
最後のオヤジの言葉が聞こえなかったのだが、ルシアが後で教えてくれた。この娘はなぜ俺に綺麗アピールをするんだろう。
買取り票を手にして、組合の精算所に行く途中で、俺はルシアに話しかけた。
「ルシア、冒険者組合に知り合いがたくさんいるようだな」
ルシアが精算所に買取り票を手渡しながら、答えた。
「さっきのお姉さんと今のオヤジさんだけよ。前のパーティでは組合関係の事務作業は全部私がやっていて、あの2人には何度もお世話になっているのよ」
精算所の職員からのお金は俺が預かることにした。女が大金を持つのは危険だ。
組合から出たところで、俺はルシアに話した。
「あの2人、俺が10年前にこの町から出るときに、冒険者組合にいたぞ。お姉さんは人懐こくて性格がよくて、オヤジさんは見た目はああだが、世話好きな人だよな」
「え? おじさんも知っていたのね? なぜ挨拶しなかったの?」
「ルシア、俺は世間の嫌われ者なんだ。旧知の人に蔑まれるのは嫌だし、ここにまだいることは知られたくない」
俺は正直に心の内を話した。
「そうね。なかなか難しいもんだよね」
俺がこの娘といて疲れないのは、この部分だ。世間から逃げている俺に説教めいたことを一切言わないのだ。
俺が力なく笑っていると、ルシアが元気よく俺の肩をたたいた。
「さあっ、商店街に行って、生活用品を買いまくるわよっ。まずは購入品を乗せるリヤカーを買うわよ!」
ルシアはそういって俺の手を掴んで、商店街へと引っ張って行った。
イグアスは俺の冒険者デビューの町だ。17歳で冒険者になり、ここで5年間暮らした。王都でニックに嵌められた俺は、逃げるようにしてこの町まで戻ってきたのだ。
だが、この町でも俺は人々にけなされ、蔑まれ、いたたまれなくなった俺は、懐かしいイグアスのダンジョンに籠ることになったのだった。
ルシアに手を引っ張られ、ホールに入ったが、男女2人組のパーティはさほど珍しくなく、ちらっと見られる程度だ。
俺は少し安心して、ベンチに座り、手続きはルシアに任せることにした。
ルシアにはなじみの受付がいるらしく、そこでリヤカーの貸し出し申請をしている。受付のお姉さんが俺の方をちらちら見ている。あの受付のお姉さんは覚えている。まだいたのか。性格のいい娘さんだった。
「ルシアちゃん、男の冒険者たちとダンジョンに入ったって噂を聞いて、ずいぶんと心配してたのよ。大丈夫だった?」
「うん、大丈夫よ。いいお客さんだった。サーベルタイガーを4匹倒したので、リヤカーをお借りしたいです」
「あら、それは凄いわね。手続きしておくから、持って行っていいわよ。はい、これがカギよ」
「お姉さん、ありがとう」
「でも、あの男、何だか人相の良くない人ね。あなた綺麗なんだから、気をつけなよ」
というような会話があったとルシアから聞いた。最後のフレーズの「あなた綺麗なんだから」を俺に言いたかったらしい。
「そうか」
俺はそう答えるにとどめた。「実は俺もさっき気づいたんだが、顔立ちは確かに綺麗だよな」などとは決して言わないのだ。
俺たちはリヤカーを持ち出して、ダンジョンに戻った。リヤカーをダンジョンの入り口のリヤカー置き場に置いて、ダンジョンに入る。
ダンジョン1階で、ルシアが前を全開にして、サーベルタイガー4匹がどさっと出て来るところを俺はルシアの背中越しに見た。
あ、この光景は見たことがある。
聖女が格納持ちだったが、彼女の場合は格納空間との窓口が足元にあった。そのため、ローブの下はいつもミニスカートだった。彼女は格納から大きなものを出すときは、ローブの裾をまくっていた。俺たちに決して足を見せなかったので、いつも後ろから見ていたが、その時を思い出した。
多くの格納持ちは窓口が体から十分に離れていて、服は邪魔にならない。ルシアと聖女が特別なのだろう。聖女の格納の広さは有名だったが、格納空間が広いと窓口が体に近づくのかもしれない。
ルシアは魔物の処置に慣れているようで、すぐに血抜きを始めた。
俺は処置が終わったものから、一匹ずつダンジョンから背負って持ち出して、4匹全部をリヤカーに積み上げた。
重力魔法を使うと驚かれて、噂になってしまうので、俺がダンジョンから1匹ずつ背負って持ち出した、
サーベルタイガーは地下7階にはほとんど生息しておらず、地下6階をメインにしている魔物ということで、今回の換金対象とすることにした。毛皮、肉、牙が高く売れる。
地下7階に魔物がいなくなったことは、いずれ大ニュースになると思うので、それに関わっていることを知られないように、慎重に行動する必要があるのだ。
こうしてリヤカーに乗せた4匹を冒険者組合の裏にある、解体受付まで持っていくと、スキンヘッドのマッチョなオヤジが受付に座って、俺の方を睨んでいた。
うげっ、まだあのオヤジがここの担当かよ。少し老けたが、相変わらず筋肉隆々だな。
「オヤジさん、この4匹の買取りをお願いします」
ルシアがオヤジに話しかけた。
「ルシア、新しいパーティか?」
オヤジが俺の方をちらっと見た。
「ううん、お客さんよ」
「そうか。どれ、見せてみな」
オヤジがサーベルタイガーを検分している。
「どうやって殺したんだ? どこにも傷がないが」
「それ、秘密なのよ。買取に殺傷手段の申告は必要ですか?」
「いや、必要ねえ。全く傷がない上物だ。処置も完璧で肉の状態もいい。最高額で引き取らせてもらう」
「ありがとう、オヤジさん」
オヤジが声を潜めてルシアにささやいた。
「ルシア、いい客、捕まえたな。お前さんは綺麗なんだから、変なことされないように気をつけろよ」
最後のオヤジの言葉が聞こえなかったのだが、ルシアが後で教えてくれた。この娘はなぜ俺に綺麗アピールをするんだろう。
買取り票を手にして、組合の精算所に行く途中で、俺はルシアに話しかけた。
「ルシア、冒険者組合に知り合いがたくさんいるようだな」
ルシアが精算所に買取り票を手渡しながら、答えた。
「さっきのお姉さんと今のオヤジさんだけよ。前のパーティでは組合関係の事務作業は全部私がやっていて、あの2人には何度もお世話になっているのよ」
精算所の職員からのお金は俺が預かることにした。女が大金を持つのは危険だ。
組合から出たところで、俺はルシアに話した。
「あの2人、俺が10年前にこの町から出るときに、冒険者組合にいたぞ。お姉さんは人懐こくて性格がよくて、オヤジさんは見た目はああだが、世話好きな人だよな」
「え? おじさんも知っていたのね? なぜ挨拶しなかったの?」
「ルシア、俺は世間の嫌われ者なんだ。旧知の人に蔑まれるのは嫌だし、ここにまだいることは知られたくない」
俺は正直に心の内を話した。
「そうね。なかなか難しいもんだよね」
俺がこの娘といて疲れないのは、この部分だ。世間から逃げている俺に説教めいたことを一切言わないのだ。
俺が力なく笑っていると、ルシアが元気よく俺の肩をたたいた。
「さあっ、商店街に行って、生活用品を買いまくるわよっ。まずは購入品を乗せるリヤカーを買うわよ!」
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