ダンジョンで同棲生活始めました ひと回り年下の彼女と優雅に大豪邸でイチャイチャしてたら、勇者だの魔王だのと五月蝿い奴らが邪魔するんです

もぐすけ

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第二章 地上の動き

勇者ニックの没落

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「おお、来たか」

ニックは聖女と聖女候補のルミエール、スターシア、ナタリーを勇者邸に呼んでいた。

勇者邸の使用は国から勇者に与えられる特権の1つである。

「なんだ、挨拶もできないのか?」

ニックは突っ立っているだけで、礼の素振りもない聖女たちを詰問した。

「そんなにふんぞり返っているおっさんに挨拶なんかできないわよ」

ルミエールの予想外の態度にニックはあっという間に沸点に達する。

「なんだとっ! きさま、誰に口をきいている」

「史上最悪の勇者に口を利いてるわ。聞こえているから、そんなに怒鳴らないでくれる?」

ルミエールはうるさいわねと言った感じで横を見て、右手でニックを追い払うようなそぶりをする。

「お前、そんな態度を俺様にとって、この国で生きていけると思うなよ」

「はっ、状況見えてないよね。あんたのことを怖がっている人はこの国には誰もいないわよ。怖いのは国王よ。で、何の用なのよ。私たち3人を呼び出して」

「貴様、その怖い国王に言って、奴隷に落としてやる」

ニックは怒りのために立ち上がって、拳をふるって話している。

「まあ、怖い。それが今日の用件だったのね。聖女を奴隷に落とすのね。了解したから、帰るわ。ごきげんよう。スターシア、ナタリー帰りましょう」

ルミエールは反転して、もう歩きだしていた。

「おい、その腐れ聖女はもう今日限り来なくていいが、残りの2人には用がある」

ニックはルミエールはもう無視することに決め、スターシアとナタリーを呼び止めた。

「え? このおっさん、ルミエールだけが従わないと思っているのかしら」

スターシアが呆れたように言った。

「そうね、ずいぶんとおめでたい頭しているわね」

ナタリーも冷ややかに笑っている。

「なんだと! この野郎。こんな小娘どもになめられてたまるか」

ニックはあろうことか、勇者最大の魔法であるスパノーバエクスプロージョンを室内でぶっ放した。

聖女たち3人はとっさに魔法防御を展開したが、部屋の壁もろとも吹っ飛んでいってしまった。

「ははは、いい気味だ」

ニックの怒りはようやく収まった。

だが、冷静になって来て、いくら何でもやり過ぎたと後悔し始めた。

このままではまずいため、隠蔽工作をしようと、まずは遺体を探し始めたのだが、不思議なことにどこをどう探しても見つからない。

結局、ニックは、聖女たちはまともに魔法を食らって、骨まで燃えてしまったと結論づけた。

壁は修理させればいい。

ニックは聖女たちの自分への態度を苦々しく思い出したが、今回のは極端だが、似たようなことはこれまでも何度かあった。

ニックは最近自分の評判が落ちてきていることを自覚していた。

魔王退治以前からニックは増長傾向にあり、パーティ仲間からも嫌われていたが、魔王退治での仲間の死亡を何とかライルのせいにして、勇者としての地位を守り、手柄を独占することができた。仲間から吊し上げられるという最初の危機を何とか切り抜けたのだ。

それ以降は国王へのゴマすりを忘れることはなかったが、王以外には横柄な態度で接し、女癖も悪かった。だが、勇者に取り入る人に威張り散らすことは痛快だったし、女も少し無理を言えば手に入ることが多かったため、ダメならダメで、気に入った女には片っ端からちょっかいを出していた。

そういった素行を続けていたため、最近は反抗される場面も少なくなく、自分が絶対的な地位にいたと勘違いしていたことに気づいてはいた。だが、そう簡単に自分を律することはできなかった。

そんなときの魔王復活の知らせは、勇者の存在を人々に再アピールできるチャンスだった。実際、魔王を倒せるのは勇者しかいないため、人々がまた自分を頼るようになったことを感じていたのである。

今日の聖女たちの態度は、そんな矢先だった。勇者というのは絶対ではないことをニックは改めで痛感した。

***

聖女たちは死んではおらず、重傷で病院に運ばれたということをニックが知らされたのは、数日後のことだった。

いや、それはおかしい。あの後すぐに何度も調べたが、女たちの遺体はなかった。そのため、熱で骨も残らず燃えてしまったと思っていたのだ。

聖女たちは、顔や体に大やけどをおってしまい、何とか高度の治療魔法で元に戻したが、ニックに殺人未遂の告発と損害賠償の請求を行う準備をしているという。

この事件について、世間は同然のことながら聖女たちに同情し、勇者を徹底的に避難した。

事件が大きくなり、糾弾を受けて困り果てたニックは、国王に謁見し、助けを求めた。

「あの娘たちが私を挑発したのです」

ニックは必死に王に訴えた。

しかし、王の表情はいつもと違って厳しかった。

「例えそうだったとしても、娘3人に魔法をぶっ放す馬鹿がいるか! そんな行為は勇者以前に人として許されるものではないだろうがっ」

その通りだ。いくら怒りで我を忘れていたとはいえ、女子学生に向かって、スパノーバエクスプロージョンを放つなんて、確かにどうかしていた。

「魔王を倒した勇者には王女を輿入れさせるしきたりがあるため、王女のことを考え、お前を今までできる限りかばってきたが、もう我慢の限界だ。こんな人でなしに王女を与えることはできん。教会に勇者はく奪の儀式をすでに依頼してある。お前はすぐに勇者ではなくなる。どこにでも消えるがいい」

「え? そんな、魔王はどうするんです?」

「お前が心配することではない。魔王は次の勇者が倒してくれる。勘違いするなよ。勇者はお前にしか務まらない、なんてことはないのだぞ」

そう王は吐き捨て、衛兵に勇者を王宮外に放り出すように命じた。
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