35 / 39
第四章 ルシアのルーツ
全知の部屋
しおりを挟む
『ようこそ、全知の部屋へ。メイドのエフです。本館に収納されている書物の内容全てを記憶しております。ご質問をどうぞ』
「書物を読むことも出来るのかしら?」
『はい、可能ですが、文字が読めないかと思います』
「前から不思議だったのだけれど、なぜメイド達と言葉が通じるのかしら?」
『ルシア様の脳の言語中枢をお借りしてコミュニケーションしているからです』
「よく分からないけど、それは今はいいか。早速だけど、私の両親のことを教えて頂戴」
ルシアは直球ど真ん中の質問から始めた。
『ご両親のお名前をお伺いできますでしょうか』
「え? わからないから聞いているのだけど?」
『申し訳ございません。私は書物に書かれていることしかお答えできないのです。名前がわからないとお答えできません』
意を決した質問が空振りしてしまい、ルシアは力が抜けてしまった。ライルはルシアを後ろから支えて、別の質問から始めてみた。
「世界に存在する七つのダンジョンを建築した目的を教えて欲しい」
『ラジム世界政府資料から抜粋してお答えします。目的は種の存続です。ラジム暦2040年ごろに奇病が発生しました。その病気は男女の性行為を介して伝染します。女性には何の症状も出ませんが、男性に感染した場合は漏れなく一週間以内に死亡する恐ろしい病気です』
エフの話は以下の通りだ
今から何年前なのかは分からないが、我々が古代人と呼ぶ種族に死病が蔓延したようだ。
そのため、性行為がほとんど行われなくなり、また、必ず母子感染してしまうため、男児は生きて産まれて来なくなってしまった。その結果、出生率と男性の数がどんどん下がって行き、古代人は種族滅亡の危機に陥ってしまった。
古代人は高度な文明を誇っていたが、この死病については、感染の有無の検査方法も分からず、潜伏期間も分からなかったため、処女であっても感染している場合があり、性交後の男性の生死でしか感染の有無を判断出来なかった。
そんな状況下で、命がけで契りを結んだ未感染の夫婦たちが少しずつ生まれ、古代人はそんな彼らに未来を託そうとした。
だが、いつの時代にも身勝手な愚か者は存在する。犯罪組織が手当たり次第に男をさらい、子を欲する女性たちとの性行為を無理矢理強要し、遂には感染させて死亡させてしまう事件が多発した。
それに対し、世界政府はすぐに対策を講じた。ダンジョンを作り、生き残っている男性全てと、その妻とを地中深く隔離して、保護したのである。
最初にイグアスのダンジョンが建設され、隔離者たちはキューブルームでの生活を開始した。その後はレストラン、その次に生活用品、その次に閉塞感を解消させるため、当時未開の地だったテンタウルス星との往来を可能とした。
だが、ここで問題が発生した。ほとんど全ての隔離者がテンタウルス星に行ったまま、帰って来なかったのである。政府は慌ててテンタウルス星への渡航を禁止したが、手遅れであった。
なぜテンタウルス星から帰らなかったかの説明はエフからはなかった。理由は後で質問することにして、本筋部分の説明を続けてもらった。
その結果、ダンジョンに残ったのは、たった二組の夫婦だった。ところがまたもや問題が発生した。二組とも子供に恵まれなかったのである。
古代人の医療技術はかなり進歩していたが、不妊治療については倫理的な理由で研究が禁止されていた。そのため、不妊の理由がわからず、政府は残った男性二人に懇願した。政府が用意した女性と順番に子作りをして欲しいと。
そこで悲劇がおきた。一組の夫婦が無理心中してしまったのだ。そして、残った夫婦の方の夫は、政府の願いに応えて、用意された女性との子作りを続けたが、5人目の女性が感染者だったため、命を落としてしまった。
こうして、生殖能力のある男性は一人もいなくなってしまったのだが、命をかけた行為は報われず、子作りした四人にはいずれも妊娠の兆候は見られなかった。
その後、残された妻と未感染が証明されている四人の女性を何とか未来に送り届けたいと考えた政府は、「時空の部屋」と「誕生の部屋」を完成させ、「誕生の部屋」に女性五人を収容し、時間の流れを止めた。
『そして、政府は地下98階のボスが倒されたら、再び『誕生の部屋』の時が流れるように設定をして、ダンジョンから撤退しました』
エフの説明は終わったようだ。
ライルはエフに質問をした。
「なぜ五人を未来に送ろうとしたのだろう?」
『テンタウルス星に行った人たち、あるいはその子孫が帰ってきたときに、彼らとの間に子を成すためです』
「彼らはなぜ帰って来なかったんだ?」
『テンタウルス星に渡った人たちは、万一の感染を恐れて、帰国を我慢したのだと思われます』
「そうか。元の世界の人々が全員死滅してから戻ろうと思ったのか」
『はい、政府はそう読んで、確実に感染していない女性五人を未来に送り、自分たちの滅亡から切り離したのです』
どうやら今の俺たちは、テンタウルス星から戻って来た人たちの子孫らしい。
ナイアガラの地下98階のボスを倒したのはちょうど20年前だ。
「ルシア、お母さんは五人のうちの一人だと思う。まずは『誕生の部屋』に行ってみよう」
「うん」
六人は「誕生の部屋」に接続するため、ワールドパスポートに向かった。
「書物を読むことも出来るのかしら?」
『はい、可能ですが、文字が読めないかと思います』
「前から不思議だったのだけれど、なぜメイド達と言葉が通じるのかしら?」
『ルシア様の脳の言語中枢をお借りしてコミュニケーションしているからです』
「よく分からないけど、それは今はいいか。早速だけど、私の両親のことを教えて頂戴」
ルシアは直球ど真ん中の質問から始めた。
『ご両親のお名前をお伺いできますでしょうか』
「え? わからないから聞いているのだけど?」
『申し訳ございません。私は書物に書かれていることしかお答えできないのです。名前がわからないとお答えできません』
意を決した質問が空振りしてしまい、ルシアは力が抜けてしまった。ライルはルシアを後ろから支えて、別の質問から始めてみた。
「世界に存在する七つのダンジョンを建築した目的を教えて欲しい」
『ラジム世界政府資料から抜粋してお答えします。目的は種の存続です。ラジム暦2040年ごろに奇病が発生しました。その病気は男女の性行為を介して伝染します。女性には何の症状も出ませんが、男性に感染した場合は漏れなく一週間以内に死亡する恐ろしい病気です』
エフの話は以下の通りだ
今から何年前なのかは分からないが、我々が古代人と呼ぶ種族に死病が蔓延したようだ。
そのため、性行為がほとんど行われなくなり、また、必ず母子感染してしまうため、男児は生きて産まれて来なくなってしまった。その結果、出生率と男性の数がどんどん下がって行き、古代人は種族滅亡の危機に陥ってしまった。
古代人は高度な文明を誇っていたが、この死病については、感染の有無の検査方法も分からず、潜伏期間も分からなかったため、処女であっても感染している場合があり、性交後の男性の生死でしか感染の有無を判断出来なかった。
そんな状況下で、命がけで契りを結んだ未感染の夫婦たちが少しずつ生まれ、古代人はそんな彼らに未来を託そうとした。
だが、いつの時代にも身勝手な愚か者は存在する。犯罪組織が手当たり次第に男をさらい、子を欲する女性たちとの性行為を無理矢理強要し、遂には感染させて死亡させてしまう事件が多発した。
それに対し、世界政府はすぐに対策を講じた。ダンジョンを作り、生き残っている男性全てと、その妻とを地中深く隔離して、保護したのである。
最初にイグアスのダンジョンが建設され、隔離者たちはキューブルームでの生活を開始した。その後はレストラン、その次に生活用品、その次に閉塞感を解消させるため、当時未開の地だったテンタウルス星との往来を可能とした。
だが、ここで問題が発生した。ほとんど全ての隔離者がテンタウルス星に行ったまま、帰って来なかったのである。政府は慌ててテンタウルス星への渡航を禁止したが、手遅れであった。
なぜテンタウルス星から帰らなかったかの説明はエフからはなかった。理由は後で質問することにして、本筋部分の説明を続けてもらった。
その結果、ダンジョンに残ったのは、たった二組の夫婦だった。ところがまたもや問題が発生した。二組とも子供に恵まれなかったのである。
古代人の医療技術はかなり進歩していたが、不妊治療については倫理的な理由で研究が禁止されていた。そのため、不妊の理由がわからず、政府は残った男性二人に懇願した。政府が用意した女性と順番に子作りをして欲しいと。
そこで悲劇がおきた。一組の夫婦が無理心中してしまったのだ。そして、残った夫婦の方の夫は、政府の願いに応えて、用意された女性との子作りを続けたが、5人目の女性が感染者だったため、命を落としてしまった。
こうして、生殖能力のある男性は一人もいなくなってしまったのだが、命をかけた行為は報われず、子作りした四人にはいずれも妊娠の兆候は見られなかった。
その後、残された妻と未感染が証明されている四人の女性を何とか未来に送り届けたいと考えた政府は、「時空の部屋」と「誕生の部屋」を完成させ、「誕生の部屋」に女性五人を収容し、時間の流れを止めた。
『そして、政府は地下98階のボスが倒されたら、再び『誕生の部屋』の時が流れるように設定をして、ダンジョンから撤退しました』
エフの説明は終わったようだ。
ライルはエフに質問をした。
「なぜ五人を未来に送ろうとしたのだろう?」
『テンタウルス星に行った人たち、あるいはその子孫が帰ってきたときに、彼らとの間に子を成すためです』
「彼らはなぜ帰って来なかったんだ?」
『テンタウルス星に渡った人たちは、万一の感染を恐れて、帰国を我慢したのだと思われます』
「そうか。元の世界の人々が全員死滅してから戻ろうと思ったのか」
『はい、政府はそう読んで、確実に感染していない女性五人を未来に送り、自分たちの滅亡から切り離したのです』
どうやら今の俺たちは、テンタウルス星から戻って来た人たちの子孫らしい。
ナイアガラの地下98階のボスを倒したのはちょうど20年前だ。
「ルシア、お母さんは五人のうちの一人だと思う。まずは『誕生の部屋』に行ってみよう」
「うん」
六人は「誕生の部屋」に接続するため、ワールドパスポートに向かった。
0
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる