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第一章 異世界召喚
神社の探索
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行き先は後で考えることにして、とりあえず境内から出ようと、二人で歩き出した。
「俺、20歳だけど、タツノさんはいくつ?」
「18だけど、初対面で歳聞く?」
「いや、長い付き合いになるかもしれないじゃないか」
「そんなのごめんだわ」
どうにも言葉がストレートだね、この人は。まだ怒ってんのかな。
「いや、その、人違いしたのと、痴漢みたいな感じになってしまって悪かったよ。謝る。本当にごめん」
俺は頭を下げた。
「もういいわよ、それは。人違いとはいえ、私を守ろうとしてくれたんでしょ?」
「ああ、そう思ってくれると助かる」
「でも、早く何とかしたいのよ。レン、あ、私の彼ね、彼のことも心配なのよ」
「そうだな、俺も妹のことが心配だ」
少し打ち解けた感じになったときに、石段が見えてきた。
神社の境内は長い石段を上ったところにあり、今朝、妹といっしょに上ったばかりだ。
「なんだ、これは……?」
近づくまで暗くてよく分からなかったのだが、石段は十段ぐらいから下は水に沈んでいた。
「ここは一体どこなんだ……?」
タツノさんも呆然としている。この子、ミニスカートにタイツだったんだな、と変なところに今頃気づいた。
「タツノさん、ここに座って待っていてくれる? ちょっと俺、どうなっているのか周りを見て来る」
そういって捜索を始めようと歩き出したら、
「置いて行かないでっ」
と後ろから叫ばれた。あーあ、とうとう泣いてしまった。
「わかった、一緒に行こう。さあ、泣かないで」
俺たちは境内に戻って、本堂の裏手に回った。裏は竹藪になっていたが、先が見えないほど奥が深い。藪の中は真っ暗で、とても入る勇気はなかった。
確認した結果、三方を海で囲まれ、背後に竹藪のある神社に俺たちはいるようだ。
建物は本堂しかない。事務所のような建物や他にも小さな建物があったはずだが、なくなっていた。というか、本堂もちょっと違うように見えた。
「タツノさん、本堂ってこんな感じだっけ?」
「わからない。私、ここは初めてだったし、本堂は人混みでよく見えなかったから」
そうだよな。タツノさんの身長は百六十五ぐらいだから、ちょっと見えないよな。ただ、少なくとも戸は閉まってはいなかった。
「ちょっと開けてみるか」
「何だか怖くない?」
実は非常に不気味な感じがしていて、なんとなく避けていたのだ。
「竹藪に入るよりはマシじゃないか? このままここにいても飢え死にだぜ」
水は手水があるので、まだ飲んではいないが、大丈夫そうな気がする。だが、食料がない。竹藪は不気味すぎて俺には無理だ。それと、この空の色と明るさ、何とかならないのだろうか。
「そうね、開けてみましょう。開くかどうかわからないけど」
本堂は正面に大きな格子戸の二枚扉があるだけで、それ以外に窓はなかった。格子戸は簡単に開いた。
中はがらんどうだった。二十畳ぐらいの板間で、床に墨のようなもので何か描かれている。しかし、かなり前のものと思われ、大部分がかすれてしまっていた。
「タツノさん、お腹すいた?」
「いいえ。のども渇かないわ」
そうなのだ。お腹も減らないし、のども渇かない。ついでに言うとトイレにも行きたいと思わない。冬服を着ているが、寒くもないし、暑くもない。精神的には疲れているが、肉体的な疲労感はない。
「ひょっとして俺たち死んだのか? ここは天国には見えないから地獄?」
「ちょっと、変なこと言わないでよ。でも、息はしているわよ」
「なあ、あの竹藪入る勇気ある?」
「ないわ」
きっぱりだな、おい。
しかし、まさかここでこの子と二人で一生暮らすってことはないよな。
「なによ」
「いや、別に」
あらま、警戒させちゃったよ。タツノさんが体を固くしているのが分かった。確かにこのシチュエーションでは、乱暴しちゃう奴がいてもおかしくないかも。
「タ、タツノさん」
「な、なによ」
「俺、ビビリの優しいだけが取り柄の男、大丈夫だから」
「何それ? おっかしなこと言うのね」
でも、効果あったようだ。タツノさんの口元が少し微笑んでいた。
その時だった。竹藪の方からドンドンという太鼓のような音が聞こえて来た。
「俺、20歳だけど、タツノさんはいくつ?」
「18だけど、初対面で歳聞く?」
「いや、長い付き合いになるかもしれないじゃないか」
「そんなのごめんだわ」
どうにも言葉がストレートだね、この人は。まだ怒ってんのかな。
「いや、その、人違いしたのと、痴漢みたいな感じになってしまって悪かったよ。謝る。本当にごめん」
俺は頭を下げた。
「もういいわよ、それは。人違いとはいえ、私を守ろうとしてくれたんでしょ?」
「ああ、そう思ってくれると助かる」
「でも、早く何とかしたいのよ。レン、あ、私の彼ね、彼のことも心配なのよ」
「そうだな、俺も妹のことが心配だ」
少し打ち解けた感じになったときに、石段が見えてきた。
神社の境内は長い石段を上ったところにあり、今朝、妹といっしょに上ったばかりだ。
「なんだ、これは……?」
近づくまで暗くてよく分からなかったのだが、石段は十段ぐらいから下は水に沈んでいた。
「ここは一体どこなんだ……?」
タツノさんも呆然としている。この子、ミニスカートにタイツだったんだな、と変なところに今頃気づいた。
「タツノさん、ここに座って待っていてくれる? ちょっと俺、どうなっているのか周りを見て来る」
そういって捜索を始めようと歩き出したら、
「置いて行かないでっ」
と後ろから叫ばれた。あーあ、とうとう泣いてしまった。
「わかった、一緒に行こう。さあ、泣かないで」
俺たちは境内に戻って、本堂の裏手に回った。裏は竹藪になっていたが、先が見えないほど奥が深い。藪の中は真っ暗で、とても入る勇気はなかった。
確認した結果、三方を海で囲まれ、背後に竹藪のある神社に俺たちはいるようだ。
建物は本堂しかない。事務所のような建物や他にも小さな建物があったはずだが、なくなっていた。というか、本堂もちょっと違うように見えた。
「タツノさん、本堂ってこんな感じだっけ?」
「わからない。私、ここは初めてだったし、本堂は人混みでよく見えなかったから」
そうだよな。タツノさんの身長は百六十五ぐらいだから、ちょっと見えないよな。ただ、少なくとも戸は閉まってはいなかった。
「ちょっと開けてみるか」
「何だか怖くない?」
実は非常に不気味な感じがしていて、なんとなく避けていたのだ。
「竹藪に入るよりはマシじゃないか? このままここにいても飢え死にだぜ」
水は手水があるので、まだ飲んではいないが、大丈夫そうな気がする。だが、食料がない。竹藪は不気味すぎて俺には無理だ。それと、この空の色と明るさ、何とかならないのだろうか。
「そうね、開けてみましょう。開くかどうかわからないけど」
本堂は正面に大きな格子戸の二枚扉があるだけで、それ以外に窓はなかった。格子戸は簡単に開いた。
中はがらんどうだった。二十畳ぐらいの板間で、床に墨のようなもので何か描かれている。しかし、かなり前のものと思われ、大部分がかすれてしまっていた。
「タツノさん、お腹すいた?」
「いいえ。のども渇かないわ」
そうなのだ。お腹も減らないし、のども渇かない。ついでに言うとトイレにも行きたいと思わない。冬服を着ているが、寒くもないし、暑くもない。精神的には疲れているが、肉体的な疲労感はない。
「ひょっとして俺たち死んだのか? ここは天国には見えないから地獄?」
「ちょっと、変なこと言わないでよ。でも、息はしているわよ」
「なあ、あの竹藪入る勇気ある?」
「ないわ」
きっぱりだな、おい。
しかし、まさかここでこの子と二人で一生暮らすってことはないよな。
「なによ」
「いや、別に」
あらま、警戒させちゃったよ。タツノさんが体を固くしているのが分かった。確かにこのシチュエーションでは、乱暴しちゃう奴がいてもおかしくないかも。
「タ、タツノさん」
「な、なによ」
「俺、ビビリの優しいだけが取り柄の男、大丈夫だから」
「何それ? おっかしなこと言うのね」
でも、効果あったようだ。タツノさんの口元が少し微笑んでいた。
その時だった。竹藪の方からドンドンという太鼓のような音が聞こえて来た。
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