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第九章 皇帝選出
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ミルは待ちに待ったそのときを迎え、トドロキの妃候補が五十人となった日のことを思い出していた。
***
「妃候補が五十名となりました。競技開始前の最後のオリエンテーションを行います。二階のダンスフロアに集まって下さい」
部屋に女性支配人の声が流れた。「館内放送」という名の装置らしい。部屋から色とりどりの衣装をまとった若く美しい女性たちが廊下に現れ、二階へと移動する。
館内にはエレベーターという動く箱があり、それで移動することが多いのだが、全員が集まるようなときには階段を使っての移動となる。
私は隣の部屋のユリと一緒にダンスフロアに向かった。
この場所は「ホテル」と呼ぶらしい。ここに来て三ヶ月になるが、「快適」の一言だ。ご飯が美味しく、気温が最適に保たれ、遊びも豊富にある。体型の維持は死活問題なので、今から向かうダンスフロアはよく使うし、屋上のプールという遊泳場も気持ちがいい。
私たちの目的は、全員がトドロキ様の御子を授かり、トドロキ様に皇帝になってもらうことだ。これに失敗すると、全員がホテルから追い出され、元の生活に戻されてしまう。皆それぞれ事情があるらしく、絶対に元の生活には戻りたくはない。
「遂に五十人になったのね」
階段を降りながら、ユリが私に話しかけて来た。ほぼ同時期にホテル滞在を始めたユリとは一番付き合いが長く、同い年で話も気もよく合い、一番の仲良しだ。といっても、他の女子たちと仲が悪いわけではない。
歴史本などに書かれている皇帝の寵愛を奪い合い、自分の子供に皇位を継がせるために血みどろの女の争いを繰り広げるといったようなことは、ここにはない。むしろ逆だ。一人でも妊娠出来なければ、全員が路頭に迷ってしまうため、助け合い、労わりあう関係になっている。
「いよいよ始まるのね」
私はユリに頷いた。トドロキ様を写真で選んだ最初の妃候補が私だった。その後、どうやって見つけるのか分からないのだが、訳ありの綺麗な女性が、一人、二人とホテルに連れて来られて、遂に五十人となったのだ。
ちなみにユリは貴族に売られるところをモモ様に助けてもらったらしい。五十人全員がモモ様に助けられたため、モモ様は私たちから絶大な信頼と人気を得ている。
ホールに入ると、そのモモ様がホールの壇上に立っていた。モモ様の横には、非常に美しいけれども、神々しい威圧感のある女性が座っていた。まるで光り輝いているかのようで、平伏してしまいたくなる。モモ様がお仕えしているやんごとなきお方だと直感した。
女性支配人がモモ様に全員揃ったことを伝えた。私たちはホールに用意されていた椅子に着席した。
「みんな、いよいよ始まるよ。こちらにいらっしゃるミサト様が、本日、トドロキをお連れになられますから、彼を休ませちゃダメよ。どんどん精子を吸い上げて、全員が妊娠すること、いいわねっ」
「「はいっ」」
モモ様の指示に全員が力強く答えた。みな生娘で経験はないが、早く妊娠したいとギラついていた。
「ふふふ、みんな気合い入っていてとてもいいわね」
ミサト様がお言葉を発せられた。お静かにお話されているのに、とてもよく聞こえる美しくも不思議なお声で、染み込むように頭に入ってくる。
「お前たちはまずはトドロキの子を産みなさい。その後はトドロキでもいいし、他の男でもいいから、二人、三人と産んで行くのよ。少なくとも五人は産むように。分かったわね」
「「かしこまりました」」
「ふふふ、楽しみね」
といったことが今朝あり、トドロキ様の最初のお相手を私が務めることになった。写真で見た通りの優しいそうな綺麗な顔立ちの殿方だ。
(少し緊張されているのかしら)
殿方からいかにして早く子種を頂くかの技術は、この三ヶ月でみっちりと訓練して来た。内容は恥ずかしくて言えないが、モモ様が「ミルちゃん、すごっ」って言ってくれたので、自信を持っていいと思う。
「トドロキ様、こちらにどうぞ」
我々女性たちが立てた作戦は、一晩で五人のお相手をトドロキ様にしていただくことだ。私はまだ一番目なので、トドロキ様も疲れていないはずだが、二人目、三人目となると、だんだんその気にさせるのが難しくなるはずだ。
そのため、私はトドロキ様を満足させてはいけない。5分、いや、3分で仕留めねばならない。
トドロキ様、緊張しちゃっているわね。こういうときは、私がどんなことでも優しく受け止める女だという安心感を与える必要があるわ。
「トドロキ様、私はあなた様のものです。好きなようになさいませ。それが私の喜びです。この日をずっと待ちわびておりました。心よりお慕い申しております」
ちょっと面食らっている感じかしら。でも、あとは実力行使ね。行くわよ、覚悟しなさい。
***
俺はミルさんにお礼を言った後、ドアを開けて廊下に出た。
「え? もう出て来たの? ちゃんと出来た?」
ピンク女が驚いている。
「はい、あっという間でした」
俺史上最速だと思う。何なんだあれは。みこすり半ってのはまさにあれだ。しかも、終わったら、また十日後に会ってくださいね、と言われて、さっさと追い出されてしまった。しかし、綺麗な人だったなあ。
「さすがミルちゃんね。先鋒としての役割を十分すぎるほど果たしてるわ。で、次も行くでしょ?」
「そうですね。まだ行けます」
「どこ行く?」
「隣の人も赤札ですので、隣に行きます」
「了解。502号室ユリさん、ご指名でーす」
***
「妃候補が五十名となりました。競技開始前の最後のオリエンテーションを行います。二階のダンスフロアに集まって下さい」
部屋に女性支配人の声が流れた。「館内放送」という名の装置らしい。部屋から色とりどりの衣装をまとった若く美しい女性たちが廊下に現れ、二階へと移動する。
館内にはエレベーターという動く箱があり、それで移動することが多いのだが、全員が集まるようなときには階段を使っての移動となる。
私は隣の部屋のユリと一緒にダンスフロアに向かった。
この場所は「ホテル」と呼ぶらしい。ここに来て三ヶ月になるが、「快適」の一言だ。ご飯が美味しく、気温が最適に保たれ、遊びも豊富にある。体型の維持は死活問題なので、今から向かうダンスフロアはよく使うし、屋上のプールという遊泳場も気持ちがいい。
私たちの目的は、全員がトドロキ様の御子を授かり、トドロキ様に皇帝になってもらうことだ。これに失敗すると、全員がホテルから追い出され、元の生活に戻されてしまう。皆それぞれ事情があるらしく、絶対に元の生活には戻りたくはない。
「遂に五十人になったのね」
階段を降りながら、ユリが私に話しかけて来た。ほぼ同時期にホテル滞在を始めたユリとは一番付き合いが長く、同い年で話も気もよく合い、一番の仲良しだ。といっても、他の女子たちと仲が悪いわけではない。
歴史本などに書かれている皇帝の寵愛を奪い合い、自分の子供に皇位を継がせるために血みどろの女の争いを繰り広げるといったようなことは、ここにはない。むしろ逆だ。一人でも妊娠出来なければ、全員が路頭に迷ってしまうため、助け合い、労わりあう関係になっている。
「いよいよ始まるのね」
私はユリに頷いた。トドロキ様を写真で選んだ最初の妃候補が私だった。その後、どうやって見つけるのか分からないのだが、訳ありの綺麗な女性が、一人、二人とホテルに連れて来られて、遂に五十人となったのだ。
ちなみにユリは貴族に売られるところをモモ様に助けてもらったらしい。五十人全員がモモ様に助けられたため、モモ様は私たちから絶大な信頼と人気を得ている。
ホールに入ると、そのモモ様がホールの壇上に立っていた。モモ様の横には、非常に美しいけれども、神々しい威圧感のある女性が座っていた。まるで光り輝いているかのようで、平伏してしまいたくなる。モモ様がお仕えしているやんごとなきお方だと直感した。
女性支配人がモモ様に全員揃ったことを伝えた。私たちはホールに用意されていた椅子に着席した。
「みんな、いよいよ始まるよ。こちらにいらっしゃるミサト様が、本日、トドロキをお連れになられますから、彼を休ませちゃダメよ。どんどん精子を吸い上げて、全員が妊娠すること、いいわねっ」
「「はいっ」」
モモ様の指示に全員が力強く答えた。みな生娘で経験はないが、早く妊娠したいとギラついていた。
「ふふふ、みんな気合い入っていてとてもいいわね」
ミサト様がお言葉を発せられた。お静かにお話されているのに、とてもよく聞こえる美しくも不思議なお声で、染み込むように頭に入ってくる。
「お前たちはまずはトドロキの子を産みなさい。その後はトドロキでもいいし、他の男でもいいから、二人、三人と産んで行くのよ。少なくとも五人は産むように。分かったわね」
「「かしこまりました」」
「ふふふ、楽しみね」
といったことが今朝あり、トドロキ様の最初のお相手を私が務めることになった。写真で見た通りの優しいそうな綺麗な顔立ちの殿方だ。
(少し緊張されているのかしら)
殿方からいかにして早く子種を頂くかの技術は、この三ヶ月でみっちりと訓練して来た。内容は恥ずかしくて言えないが、モモ様が「ミルちゃん、すごっ」って言ってくれたので、自信を持っていいと思う。
「トドロキ様、こちらにどうぞ」
我々女性たちが立てた作戦は、一晩で五人のお相手をトドロキ様にしていただくことだ。私はまだ一番目なので、トドロキ様も疲れていないはずだが、二人目、三人目となると、だんだんその気にさせるのが難しくなるはずだ。
そのため、私はトドロキ様を満足させてはいけない。5分、いや、3分で仕留めねばならない。
トドロキ様、緊張しちゃっているわね。こういうときは、私がどんなことでも優しく受け止める女だという安心感を与える必要があるわ。
「トドロキ様、私はあなた様のものです。好きなようになさいませ。それが私の喜びです。この日をずっと待ちわびておりました。心よりお慕い申しております」
ちょっと面食らっている感じかしら。でも、あとは実力行使ね。行くわよ、覚悟しなさい。
***
俺はミルさんにお礼を言った後、ドアを開けて廊下に出た。
「え? もう出て来たの? ちゃんと出来た?」
ピンク女が驚いている。
「はい、あっという間でした」
俺史上最速だと思う。何なんだあれは。みこすり半ってのはまさにあれだ。しかも、終わったら、また十日後に会ってくださいね、と言われて、さっさと追い出されてしまった。しかし、綺麗な人だったなあ。
「さすがミルちゃんね。先鋒としての役割を十分すぎるほど果たしてるわ。で、次も行くでしょ?」
「そうですね。まだ行けます」
「どこ行く?」
「隣の人も赤札ですので、隣に行きます」
「了解。502号室ユリさん、ご指名でーす」
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