2 / 43
第一章 追放
監禁される
しおりを挟む
火事から一週間が経った。
私は両親の突然の死のショックから立ち直れないでいた。自分がこんなに脆いとは思ってもいなかった。
不思議なことに誰も見舞いに来ないのだが、誰とも会いたくなかったので、かえって都合がよかった。
唯一ローズがいろいろと力づけてくれるが、今の私には誰の言葉も届かない感じだった。
公爵家の不審火ということで、火事の原因を王室が調査することになり、何人もの調査員が派遣されて来ていた。
私は今日も焼け跡の前で、王室の調査員たちが動いているのをぼうっと眺めていた。
「失火の原因はグレースお嬢様の魔法の残り火でした」
声の主は調査隊の責任者のリチャードだ。私と少し離れていたところにいたエカテリーナに報告をしている。
(え? 何を言っているの?)
私は耳を疑った。
「それは本当ですか!?」
エカテリーナがリチャードに何度も確認している。
「ええ、複数のメイドから証言をもらっています」
エカテリーナが私をものすごい形相で睨んだ。エカテリーナはかなりのブラコンで、お父様を敬愛し、彼女から兄を奪ったお母様を嫌っていた。私は容姿がお母様似で、幼少のころから彼女からあまり良くは思われていないことは何となく感じていた。
「グレース! なんてことをしてくれたの。私の大切な兄さまは、お前が殺したのよっ」
エカテリーナが狂気の顔で私に迫って来た。
(ち、違う)
私はここ数日、両親の死のショックでまともに話せなくなっていた。
「エカテリーナ、そんなはずないじゃない。グレースはあなたと同じ離れで生活しているし、魔法の練習は私と一緒に訓練場でしか行っていないわ」
最近はいつも私の横にいてくれる教育係のローズが、私の気持ちを代弁してくれた。彼女は伯爵家の四女で、エカテリーナとは旧友で、同じ未亡人ということもあり、仲が良かった。
「ローズ様はグレース様に有利な証言をする立場におられますので、証言は無効とさせていただきました」
リチャードが妙な理屈をこねている。どうやら彼は、失火の原因を私の責任にしたいようだ。
「証拠隠滅される恐れがありますので、グレース様をしばらく地下牢に監禁いたします」
リチャードがとんでもないことを言い出している。
(なんですって!?)
私はローズに何とかしてほしいと目で訴えた。
「ちょっとおかしくない? 公爵家の第一継承権を持つお嬢様を監禁するなんて正気とは思えないわ。そもそも、証言しているメイドたちって誰なの?」
ローズの言う通りだ。そもそも私が今はリッチモンド家の主のはずで、エカテリーナではなく、私に調査結果を報告すべきだ。
しかし、リチャードはローズの主張を受け付けない。
「証人の安全のため、名は伏せております。ローズ様、これ以上捜査の邪魔をされるようでしたら、あなたも監禁しますよ」
ローズはリチャードに向かって一歩前に出た。
「監禁してもらおうじゃないのっ」
さらに詰め寄るローズをエカテリーナが止めた。
「ローズ、冷静になって」
「エカテリーナ、グレースお嬢様が母屋で魔法を使うはずがないことは、あなたも知っているでしょう」
「そうだけど、娘たちが、グレースが母屋で魔法を使っているところを見たっていうのよ」
(え? アニーとテイルが? なんでそんな嘘を……)
私はローズを見つめて、やっていないという意味で首を横に振った。
「ちょっと、あなたたちなんでそんな嘘をっ」
ローズがアニーとテイルに詰め寄るが、エカテリーナが娘たちに部屋に戻るように言って、彼女たちは部屋に戻って行ってしまった。
「セバスチャン、グレースを牢に入れて」
エカテリーナの命令にセバスチャンが私の腕を掴む。
(い、痛いっ)
私は引きずられるようにして、セバスチャンに連れられて行く。セバスチャンの顔は怒りに染まっていた。完全に私が犯人だと思っているようだ。主は私なのにエカテリーナの命を聞くなんで、頭がおかしいとしか思えない。
「ちょっと、エカテリーナっ」
ローズがなおもエカテリーナに食い下がっている。
「ローズ、これはリッチモンド家の問題よ。口を挟まないで頂戴」
こうして、私は地下牢に監禁されることになった。
私は、誰とも面会を許されず、お風呂にも入れず、着替えも渡されない状態で、地下牢に監禁された。そして、二週間後の私の16歳の誕生日に、ようやく牢から出された。
私は両親の突然の死のショックから立ち直れないでいた。自分がこんなに脆いとは思ってもいなかった。
不思議なことに誰も見舞いに来ないのだが、誰とも会いたくなかったので、かえって都合がよかった。
唯一ローズがいろいろと力づけてくれるが、今の私には誰の言葉も届かない感じだった。
公爵家の不審火ということで、火事の原因を王室が調査することになり、何人もの調査員が派遣されて来ていた。
私は今日も焼け跡の前で、王室の調査員たちが動いているのをぼうっと眺めていた。
「失火の原因はグレースお嬢様の魔法の残り火でした」
声の主は調査隊の責任者のリチャードだ。私と少し離れていたところにいたエカテリーナに報告をしている。
(え? 何を言っているの?)
私は耳を疑った。
「それは本当ですか!?」
エカテリーナがリチャードに何度も確認している。
「ええ、複数のメイドから証言をもらっています」
エカテリーナが私をものすごい形相で睨んだ。エカテリーナはかなりのブラコンで、お父様を敬愛し、彼女から兄を奪ったお母様を嫌っていた。私は容姿がお母様似で、幼少のころから彼女からあまり良くは思われていないことは何となく感じていた。
「グレース! なんてことをしてくれたの。私の大切な兄さまは、お前が殺したのよっ」
エカテリーナが狂気の顔で私に迫って来た。
(ち、違う)
私はここ数日、両親の死のショックでまともに話せなくなっていた。
「エカテリーナ、そんなはずないじゃない。グレースはあなたと同じ離れで生活しているし、魔法の練習は私と一緒に訓練場でしか行っていないわ」
最近はいつも私の横にいてくれる教育係のローズが、私の気持ちを代弁してくれた。彼女は伯爵家の四女で、エカテリーナとは旧友で、同じ未亡人ということもあり、仲が良かった。
「ローズ様はグレース様に有利な証言をする立場におられますので、証言は無効とさせていただきました」
リチャードが妙な理屈をこねている。どうやら彼は、失火の原因を私の責任にしたいようだ。
「証拠隠滅される恐れがありますので、グレース様をしばらく地下牢に監禁いたします」
リチャードがとんでもないことを言い出している。
(なんですって!?)
私はローズに何とかしてほしいと目で訴えた。
「ちょっとおかしくない? 公爵家の第一継承権を持つお嬢様を監禁するなんて正気とは思えないわ。そもそも、証言しているメイドたちって誰なの?」
ローズの言う通りだ。そもそも私が今はリッチモンド家の主のはずで、エカテリーナではなく、私に調査結果を報告すべきだ。
しかし、リチャードはローズの主張を受け付けない。
「証人の安全のため、名は伏せております。ローズ様、これ以上捜査の邪魔をされるようでしたら、あなたも監禁しますよ」
ローズはリチャードに向かって一歩前に出た。
「監禁してもらおうじゃないのっ」
さらに詰め寄るローズをエカテリーナが止めた。
「ローズ、冷静になって」
「エカテリーナ、グレースお嬢様が母屋で魔法を使うはずがないことは、あなたも知っているでしょう」
「そうだけど、娘たちが、グレースが母屋で魔法を使っているところを見たっていうのよ」
(え? アニーとテイルが? なんでそんな嘘を……)
私はローズを見つめて、やっていないという意味で首を横に振った。
「ちょっと、あなたたちなんでそんな嘘をっ」
ローズがアニーとテイルに詰め寄るが、エカテリーナが娘たちに部屋に戻るように言って、彼女たちは部屋に戻って行ってしまった。
「セバスチャン、グレースを牢に入れて」
エカテリーナの命令にセバスチャンが私の腕を掴む。
(い、痛いっ)
私は引きずられるようにして、セバスチャンに連れられて行く。セバスチャンの顔は怒りに染まっていた。完全に私が犯人だと思っているようだ。主は私なのにエカテリーナの命を聞くなんで、頭がおかしいとしか思えない。
「ちょっと、エカテリーナっ」
ローズがなおもエカテリーナに食い下がっている。
「ローズ、これはリッチモンド家の問題よ。口を挟まないで頂戴」
こうして、私は地下牢に監禁されることになった。
私は、誰とも面会を許されず、お風呂にも入れず、着替えも渡されない状態で、地下牢に監禁された。そして、二週間後の私の16歳の誕生日に、ようやく牢から出された。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる