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第八章 妖精界
初デート
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最近、グレースの元気がない。本人は気づかれないよう空元気を出しているのだが、それが余計に不憫だ。
よし、ここは俺が元気づけよう。
『よう、グレース、山から下りて来て、屋敷と大聖堂だけの往復ばかりだよな。デートしないか?』
「デートって何?」
『気の合う男女二人で外に出かけて、一緒に芝居を観たり、買い物したり、食事をしたりして、楽しむことさ』
「え? シルバ誘ってくれているの?」
『そうだよ』
「嬉しいっ」
グレースが俺を胸に抱えて、思いっきりギュウっとしてくる。
「ちょっと着替えてくる」
グレースがマリアンヌを呼んで着替えを手伝わせているようだ。マリアンヌの一直線な気質は、敵ながら好感が持てるようだ。グレースは何だかんだ言いながらも、マリアンヌによく仕事を頼んでいた。
着替えを済ませたグレースは、やはり綺麗だった。この時代の服はわりと体にフィットしたシルエットのワンピースで、裾がえらく長い。マリアンヌが裾を持って、引き摺らないようにしている。
『グレース、とても美しいよ。でも、それだと、町で動きにくくはないか?』
「そうなのよ。これはせっかくだから見せにきただけ。もう少し待ってね」
しばらくすると、今度は町娘の格好で出て来た。こちらの方も無茶苦茶似合っていて、とても可愛い。
「頭巾で髪を隠したこの格好で今日は行くわよ」
『いいねえ。じゃあ、行くか!』
俺は他の妖精から王都の見どころを聞けるだけ聞いておいて、グレースが興味を持ったもの、食べたいもの、観たいものをタイミングよく提示して、グレースに選んでもらったものを二人で楽しむようなデートにした。
町の至る所に妖精がいるため、ご当地情報を得ることも簡単だし、事前に席を取っておいてもらったり、ちょっとした演出をお願いしておくこともできる。全てはグレースに喜んでもらうためだ。そして、それが俺の喜びにもなるのだ。
妖精には食欲も性欲もない。庇護欲と睡眠欲だけしかない。俺は今のままでも十分幸せなのだが、グレースには人としての普通の幸せが欲しいのだろう。結婚して、子供を産んで、家族を作って行く。そんな普通の幸せが。
一日中王都を遊び尽くしたグレースが俺を見つめていた。グレースは今日は楽しんでくれただろうか。
「シルバ、ありがとう。とても楽しかった。あなたの優しい心、私を大切に思ってくれている気持ちに触れられて、私はとても幸せよ。でも、ごめんね。猫のあなたも可愛くて素敵なんだけど、私は人の姿のあなたをどうしても求めてしまう」
グレースの両目から涙が溢れて、真っ白な頬を伝う。
「同じあなたなのに、私は人の姿のあなたを愛してしまったのよ」
そう言って、グレースは俺に背を向けて走って行ってしまった。
俺はフラれたのか? 猫の俺がフラれて、人の俺が告白されたのか。
まずい。今のグレースは前世で追い込まれていた俺のようだ。この世ではどうにもならないと思い込み、来世に望みを託して心中ってのはなしだぜ。グレースは今世で幸せになるんだから。
追うべきか。いや、この機会を逆に利用しよう。
『妖精たちよ、グレースから目を離すな。守ってやってくれ』
俺は全妖精に命令を出した。
そして、俺は妖精王に会いに行くことにした。
よし、ここは俺が元気づけよう。
『よう、グレース、山から下りて来て、屋敷と大聖堂だけの往復ばかりだよな。デートしないか?』
「デートって何?」
『気の合う男女二人で外に出かけて、一緒に芝居を観たり、買い物したり、食事をしたりして、楽しむことさ』
「え? シルバ誘ってくれているの?」
『そうだよ』
「嬉しいっ」
グレースが俺を胸に抱えて、思いっきりギュウっとしてくる。
「ちょっと着替えてくる」
グレースがマリアンヌを呼んで着替えを手伝わせているようだ。マリアンヌの一直線な気質は、敵ながら好感が持てるようだ。グレースは何だかんだ言いながらも、マリアンヌによく仕事を頼んでいた。
着替えを済ませたグレースは、やはり綺麗だった。この時代の服はわりと体にフィットしたシルエットのワンピースで、裾がえらく長い。マリアンヌが裾を持って、引き摺らないようにしている。
『グレース、とても美しいよ。でも、それだと、町で動きにくくはないか?』
「そうなのよ。これはせっかくだから見せにきただけ。もう少し待ってね」
しばらくすると、今度は町娘の格好で出て来た。こちらの方も無茶苦茶似合っていて、とても可愛い。
「頭巾で髪を隠したこの格好で今日は行くわよ」
『いいねえ。じゃあ、行くか!』
俺は他の妖精から王都の見どころを聞けるだけ聞いておいて、グレースが興味を持ったもの、食べたいもの、観たいものをタイミングよく提示して、グレースに選んでもらったものを二人で楽しむようなデートにした。
町の至る所に妖精がいるため、ご当地情報を得ることも簡単だし、事前に席を取っておいてもらったり、ちょっとした演出をお願いしておくこともできる。全てはグレースに喜んでもらうためだ。そして、それが俺の喜びにもなるのだ。
妖精には食欲も性欲もない。庇護欲と睡眠欲だけしかない。俺は今のままでも十分幸せなのだが、グレースには人としての普通の幸せが欲しいのだろう。結婚して、子供を産んで、家族を作って行く。そんな普通の幸せが。
一日中王都を遊び尽くしたグレースが俺を見つめていた。グレースは今日は楽しんでくれただろうか。
「シルバ、ありがとう。とても楽しかった。あなたの優しい心、私を大切に思ってくれている気持ちに触れられて、私はとても幸せよ。でも、ごめんね。猫のあなたも可愛くて素敵なんだけど、私は人の姿のあなたをどうしても求めてしまう」
グレースの両目から涙が溢れて、真っ白な頬を伝う。
「同じあなたなのに、私は人の姿のあなたを愛してしまったのよ」
そう言って、グレースは俺に背を向けて走って行ってしまった。
俺はフラれたのか? 猫の俺がフラれて、人の俺が告白されたのか。
まずい。今のグレースは前世で追い込まれていた俺のようだ。この世ではどうにもならないと思い込み、来世に望みを託して心中ってのはなしだぜ。グレースは今世で幸せになるんだから。
追うべきか。いや、この機会を逆に利用しよう。
『妖精たちよ、グレースから目を離すな。守ってやってくれ』
俺は全妖精に命令を出した。
そして、俺は妖精王に会いに行くことにした。
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