3 / 12
妃選定が始まりましてよ
しおりを挟む
(まず最初に……、妃候補は三人じゃなかったの?)
皇太子推薦枠だけで七人、国王や王室からも六、七名ずつで、合計二十名が妃候補だった。
だが、さすがに実力主義の帝国だけある。
採点者には推薦者は知らされず、実技の審査を除き、候補者と対面することなく、採点を行う。
そして、総合点の一番高いものが妃に選ばれる。
(皇太子殿下が好きな人と結ばれる確率はゼロね)
さすがに妃候補はみな容姿端麗だ。
皇帝皇后両陛下と皇太子殿下の前に、ずらりと二十名の美女が座して並ぶ光景は圧巻だろう。
(私もちゃっかり美女に入れてるけど、今の私なら図々しくはないわよね)
皇太子殿下には初めて会うが、どんな風貌だろうか。
(おおっ、リズルに激似じゃないのっ)
少し雰囲気がリズルよりもかしこまった感じがするが、さすが兄弟だ。よく似ている。
ただ、皇太子殿下は心ここにあらずといった感じで、何だかソワソワされていた。
女性の政務官が順番に妃候補たちの出身と名前を読み上げて行く。
リッチモンド家の情報部によれば、強敵は二人。
国王皇后両陛下推薦のマーガレット・リクリエーム。
何人もの皇后を輩出する有名な女系一族で、リクリエーム公爵家一族からは四人もの推薦者が来ているが、マーガレットが筆頭だ。
強烈な美貌を持ち、頭脳明晰で、かつ、帝国格闘技「闘拳」の達人でもあり、ぶっちぎりの優勝候補だった。
そして、もう一人は、王室推薦のリリアナ・ウィンチェスターだ。
多くの著名な政治家を輩出する侯爵家の令嬢で、壊れそうな儚い美しさを持つ可憐な美女だ。
性格も優しく穏やかで、殿方の庇護欲をそそる。
だが、鞭の達人で、闘いの時は性格が真逆になるらしい。
太陽のようなマーガレットと月のようなリリアナ。
マーガレットがほぼ当確で、逆転があるとしたらリリアナ。
この二人のどちらかになるというのが下馬評だった。
恐らくリッチモンドの情報部も、この二人のことしか頭になかったのだろう。
だから、私も妃候補は私も含めて三人だとばかり思っていたのだ。
私の名前は最後に読み上げられた。王国からは私だけのようだ。
私はあえて王国風のお辞儀でご挨拶した。
何となく私に対する会場の視線が鋭く感じるのは気のせいだろうか。
後で知るのだが、私の参戦は候補者およびその一族にとって寝耳に水だったらしく、皇太子の強い希望での推薦枠であるということと、正体が全く不明ということで、ダークホースとして警戒されていたのだった。
紹介が終わった後は散会だと聞いていたのだが、少し待つように、と皇太子殿下自らが仰られ、私たちはそのまま待つ形になった。
皇太子殿下がお席を立たれ、両陛下に何か耳打ちされた後、女性政務官をお呼びになり、小声でお話しをされている。
女性政務官はリストをめくりながら、殿下に何かを説明しているようだが、時折り殿下と女性政務官が私の方を見るのはなぜだろうか。
妃候補たちは動じぬふりをして、ぴんと背筋を伸ばし、膝の上に手をおいて、ぴくりともせずに正面を涼しげに正視しているが、帝国のしきたりがよくわからない私は気が気ではない。
やがて皇太子殿下はお席にお戻りになられたが、案の定、私だけ女性政務官に呼ばれた。
「念の為に確認させて頂きたいのですが、王国のリッチモンド卿のご令嬢であらせられますか?」
「はい、さようでございます」
私は幼少時からの教育で、帝国語も不自由なく話せるが、帝国のお嬢様言葉はまだ話せない。
実はこれも私の大きな弱点だが、現在特訓中で、試験までには間に合わせるつもりでいる。
「お名前はソフィア様で、お間違いございませんでしょうか」
「はい、そうですが……」
「皇太子殿下は王国学園で殿下の弟君と模擬試合をされたかどうかを確認して欲しいと仰せなのですが」
「はい。お手合わせ頂きました」
奇妙な質問だったが、素直に回答した。
「そのときの弟君の構えをして頂けますでしょうか」
「このドレスでですか!?」
「はい、申し訳ございません」
でも、まあ、いいか。
「こんな感じでございました」
リズルの構えはもう少し足が開いていたが、このタイトなドレスでは、これ以上足は開けない。
だが、特徴はつかんでいるはずだ。
女性政務官が皇太子殿下の方を見ている。
殿下がゆっくりとうなずき、私に向かって嬉しそうに微笑んだ。
え? リズル?
この微笑み、私を落としたあのときの微笑みだ。
あれれ? リズルは皇位継承の下位の方だったはずでは?
やはりリズルじゃない?
私の頭が混乱しているうちに、妃候補の初顔合わせは散会となった。
皇太子推薦枠だけで七人、国王や王室からも六、七名ずつで、合計二十名が妃候補だった。
だが、さすがに実力主義の帝国だけある。
採点者には推薦者は知らされず、実技の審査を除き、候補者と対面することなく、採点を行う。
そして、総合点の一番高いものが妃に選ばれる。
(皇太子殿下が好きな人と結ばれる確率はゼロね)
さすがに妃候補はみな容姿端麗だ。
皇帝皇后両陛下と皇太子殿下の前に、ずらりと二十名の美女が座して並ぶ光景は圧巻だろう。
(私もちゃっかり美女に入れてるけど、今の私なら図々しくはないわよね)
皇太子殿下には初めて会うが、どんな風貌だろうか。
(おおっ、リズルに激似じゃないのっ)
少し雰囲気がリズルよりもかしこまった感じがするが、さすが兄弟だ。よく似ている。
ただ、皇太子殿下は心ここにあらずといった感じで、何だかソワソワされていた。
女性の政務官が順番に妃候補たちの出身と名前を読み上げて行く。
リッチモンド家の情報部によれば、強敵は二人。
国王皇后両陛下推薦のマーガレット・リクリエーム。
何人もの皇后を輩出する有名な女系一族で、リクリエーム公爵家一族からは四人もの推薦者が来ているが、マーガレットが筆頭だ。
強烈な美貌を持ち、頭脳明晰で、かつ、帝国格闘技「闘拳」の達人でもあり、ぶっちぎりの優勝候補だった。
そして、もう一人は、王室推薦のリリアナ・ウィンチェスターだ。
多くの著名な政治家を輩出する侯爵家の令嬢で、壊れそうな儚い美しさを持つ可憐な美女だ。
性格も優しく穏やかで、殿方の庇護欲をそそる。
だが、鞭の達人で、闘いの時は性格が真逆になるらしい。
太陽のようなマーガレットと月のようなリリアナ。
マーガレットがほぼ当確で、逆転があるとしたらリリアナ。
この二人のどちらかになるというのが下馬評だった。
恐らくリッチモンドの情報部も、この二人のことしか頭になかったのだろう。
だから、私も妃候補は私も含めて三人だとばかり思っていたのだ。
私の名前は最後に読み上げられた。王国からは私だけのようだ。
私はあえて王国風のお辞儀でご挨拶した。
何となく私に対する会場の視線が鋭く感じるのは気のせいだろうか。
後で知るのだが、私の参戦は候補者およびその一族にとって寝耳に水だったらしく、皇太子の強い希望での推薦枠であるということと、正体が全く不明ということで、ダークホースとして警戒されていたのだった。
紹介が終わった後は散会だと聞いていたのだが、少し待つように、と皇太子殿下自らが仰られ、私たちはそのまま待つ形になった。
皇太子殿下がお席を立たれ、両陛下に何か耳打ちされた後、女性政務官をお呼びになり、小声でお話しをされている。
女性政務官はリストをめくりながら、殿下に何かを説明しているようだが、時折り殿下と女性政務官が私の方を見るのはなぜだろうか。
妃候補たちは動じぬふりをして、ぴんと背筋を伸ばし、膝の上に手をおいて、ぴくりともせずに正面を涼しげに正視しているが、帝国のしきたりがよくわからない私は気が気ではない。
やがて皇太子殿下はお席にお戻りになられたが、案の定、私だけ女性政務官に呼ばれた。
「念の為に確認させて頂きたいのですが、王国のリッチモンド卿のご令嬢であらせられますか?」
「はい、さようでございます」
私は幼少時からの教育で、帝国語も不自由なく話せるが、帝国のお嬢様言葉はまだ話せない。
実はこれも私の大きな弱点だが、現在特訓中で、試験までには間に合わせるつもりでいる。
「お名前はソフィア様で、お間違いございませんでしょうか」
「はい、そうですが……」
「皇太子殿下は王国学園で殿下の弟君と模擬試合をされたかどうかを確認して欲しいと仰せなのですが」
「はい。お手合わせ頂きました」
奇妙な質問だったが、素直に回答した。
「そのときの弟君の構えをして頂けますでしょうか」
「このドレスでですか!?」
「はい、申し訳ございません」
でも、まあ、いいか。
「こんな感じでございました」
リズルの構えはもう少し足が開いていたが、このタイトなドレスでは、これ以上足は開けない。
だが、特徴はつかんでいるはずだ。
女性政務官が皇太子殿下の方を見ている。
殿下がゆっくりとうなずき、私に向かって嬉しそうに微笑んだ。
え? リズル?
この微笑み、私を落としたあのときの微笑みだ。
あれれ? リズルは皇位継承の下位の方だったはずでは?
やはりリズルじゃない?
私の頭が混乱しているうちに、妃候補の初顔合わせは散会となった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる