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同居
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昨日以上の出来で無事アテンドが終わり、お客様は昨日に増して大喜びだった。
意外だったのはアリサだ。怒って帰ってしまうのではないかと心配していたのだが、最後まで付き合ってくれた。
私は馬車の御者席で待っていたアリサに声をかけた。
「アリサ、お待たせ」
「一日中馬車の御者席に座っているのが、あなたの言う王都巡りだとは思わなかったわ」
言葉のわりにアリサは笑顔だった。
「ごめんなさい。お客様さまのアテンドをするのに、友だちを連れて来るなんて変でしょう?」
「連れて来たのはあなただから……。私を上回るマイペース女がいるとは思わなかったわ。でも、あなたのいつもと違う一面が見られて、とても興味深かったし、御者のおじ様もいろいろとお話ししてくれたから、とても楽しかったわ」
「よかった。父から本邸に泊まるよう言われたの。あなたもぜひいらしてね。お泊まり道具は私のをお貸しするわ」
「今日はとことんお付き合いするわよ。連れ出した理由もきちんと説明してもらいたいしね」
「分かっているわ。さあ、そんなところに座っていないで、馬車の中に入って」
「ここに座っててって言ったの、あなただから……」
***
私はアリサを家族に紹介した。私が不安なところを随時アドバイスしてもらうためについてきてもらったと父には説明してあったので、父から改めて感謝されていた。伯爵令嬢を御者台に座らせてしまって申し訳ないと平謝りだった。
弟はアリサが綺麗でドギマギしていたようだ。可愛いやつめ。アリサは弟を気に入ったようで、いろいろとからかって遊んでいた。
アリサには客室ではなく、私の部屋にベッドを用意して、そこで眠ってもらうことにした。
二人してベッドに仰向けになって、話を始めた。
まさかアリサとこんな感じで話をするようになるとは、数日前までは思いもしなかった。
「いいご家族ね」
「ありがとう。アリサのご家族はどんな感じ?」
「田舎者よ。ずっと東北にいるから。両親は健在で、兄と姉もまだ家にいて、クレアのところみたいに家族の仲はいいわ。少しホームシックになっちゃった」
「そうか。なんだか今日のアリサは落ち着いていていいかも」
「そうかしら。で、話してもらうわよ」
「はい、長くなるけど話します」
私は洗いざらいぶちまけた。アリサを二回殺したこと、今はもうユリウスと婚約解消したいことも。
アリサはショックを受けているようだった。表情が抜け落ちてしまっている。
しばらく私の顔を見つめていたが、ようやく口を開いた。
「え~と、まず最初に確認したいのだけれど、私ってあなたから嫌われてたの!?」
「うん、実は今もまだ嫌いなの」
「……」
「あははは」
アリサが立ち直れないといった面持ちをしているため、私は笑って誤魔化すしかなかった。
「殺されるほど嫌われてるって……。しかも、二回も……」
「あ、嫌いだから殺したのではなくて、邪魔だったから殺したのよ」
「どっちにしても、ショックだわ。私はあなたのことすごく気に入っているのに……」
「うん、不思議に思ってた」
「あなたって、人のこと全く気にしないでしょう。誰がどう思おうと何とも思わない。ユリウス様といっしょにいれば、あとはどうでいいみたいな……」
「まあ、そうね。女友だちとか要らないと思ってた」
「それ、憧れてるのよ。私は人の目が気になって、誰からも好かれたくって、八方美人になるの。疲れるから嫌なのよ、この自分の性格が」
「そうなのね。そうしたいのかと思っていたわ。あなたの周りにはいつも人が沢山いて、みんなの人気者で、私も最初はあなたに憧れていたのよ。でも、だんだんうるさいと思うようになっちゃった。私はお節介焼きは嫌いなの。でも、今日のあなたは素敵かも」
「分かったわ。普段の自分でいれば、本当の親友になれそうね。改めて、よろしく。もう、私を殺さないでね」
「うん、多分、もう大丈夫」
「多分て……」
「それで、誰かに殺される心当たりはある?」
「ないわよ。あなたにだってまさか殺されるとは思っていなかったもの。ただ、いつの間にか嫌われることがあるのは分かったわ。それと、奪うつもりは全くないのに、誰かの恋人を奪ってしまっていることもあるのね」
「今日はさすがにもう殺されないと思うけど、どうやって殺されたのかしら」
「あなたが誘いに来なかったら、多分、寮は出なかったと思う。食事は寮で出るし。となると、学園の女子? 男子は立ち入り禁止だし」
その後、色々と話し合ったが、思い当たる特定の人物は出てこなかった。
そのため、安全を考えて、学園近くの私の別邸から、アリサも通うよう勧めた。
「ありがとう。私を二度も殺した犯人と一緒に暮らすのが安全かどうかは突っ込みたいところだけど、とりあえずお世話になります」
どうか明日は月曜日でありますように。
意外だったのはアリサだ。怒って帰ってしまうのではないかと心配していたのだが、最後まで付き合ってくれた。
私は馬車の御者席で待っていたアリサに声をかけた。
「アリサ、お待たせ」
「一日中馬車の御者席に座っているのが、あなたの言う王都巡りだとは思わなかったわ」
言葉のわりにアリサは笑顔だった。
「ごめんなさい。お客様さまのアテンドをするのに、友だちを連れて来るなんて変でしょう?」
「連れて来たのはあなただから……。私を上回るマイペース女がいるとは思わなかったわ。でも、あなたのいつもと違う一面が見られて、とても興味深かったし、御者のおじ様もいろいろとお話ししてくれたから、とても楽しかったわ」
「よかった。父から本邸に泊まるよう言われたの。あなたもぜひいらしてね。お泊まり道具は私のをお貸しするわ」
「今日はとことんお付き合いするわよ。連れ出した理由もきちんと説明してもらいたいしね」
「分かっているわ。さあ、そんなところに座っていないで、馬車の中に入って」
「ここに座っててって言ったの、あなただから……」
***
私はアリサを家族に紹介した。私が不安なところを随時アドバイスしてもらうためについてきてもらったと父には説明してあったので、父から改めて感謝されていた。伯爵令嬢を御者台に座らせてしまって申し訳ないと平謝りだった。
弟はアリサが綺麗でドギマギしていたようだ。可愛いやつめ。アリサは弟を気に入ったようで、いろいろとからかって遊んでいた。
アリサには客室ではなく、私の部屋にベッドを用意して、そこで眠ってもらうことにした。
二人してベッドに仰向けになって、話を始めた。
まさかアリサとこんな感じで話をするようになるとは、数日前までは思いもしなかった。
「いいご家族ね」
「ありがとう。アリサのご家族はどんな感じ?」
「田舎者よ。ずっと東北にいるから。両親は健在で、兄と姉もまだ家にいて、クレアのところみたいに家族の仲はいいわ。少しホームシックになっちゃった」
「そうか。なんだか今日のアリサは落ち着いていていいかも」
「そうかしら。で、話してもらうわよ」
「はい、長くなるけど話します」
私は洗いざらいぶちまけた。アリサを二回殺したこと、今はもうユリウスと婚約解消したいことも。
アリサはショックを受けているようだった。表情が抜け落ちてしまっている。
しばらく私の顔を見つめていたが、ようやく口を開いた。
「え~と、まず最初に確認したいのだけれど、私ってあなたから嫌われてたの!?」
「うん、実は今もまだ嫌いなの」
「……」
「あははは」
アリサが立ち直れないといった面持ちをしているため、私は笑って誤魔化すしかなかった。
「殺されるほど嫌われてるって……。しかも、二回も……」
「あ、嫌いだから殺したのではなくて、邪魔だったから殺したのよ」
「どっちにしても、ショックだわ。私はあなたのことすごく気に入っているのに……」
「うん、不思議に思ってた」
「あなたって、人のこと全く気にしないでしょう。誰がどう思おうと何とも思わない。ユリウス様といっしょにいれば、あとはどうでいいみたいな……」
「まあ、そうね。女友だちとか要らないと思ってた」
「それ、憧れてるのよ。私は人の目が気になって、誰からも好かれたくって、八方美人になるの。疲れるから嫌なのよ、この自分の性格が」
「そうなのね。そうしたいのかと思っていたわ。あなたの周りにはいつも人が沢山いて、みんなの人気者で、私も最初はあなたに憧れていたのよ。でも、だんだんうるさいと思うようになっちゃった。私はお節介焼きは嫌いなの。でも、今日のあなたは素敵かも」
「分かったわ。普段の自分でいれば、本当の親友になれそうね。改めて、よろしく。もう、私を殺さないでね」
「うん、多分、もう大丈夫」
「多分て……」
「それで、誰かに殺される心当たりはある?」
「ないわよ。あなたにだってまさか殺されるとは思っていなかったもの。ただ、いつの間にか嫌われることがあるのは分かったわ。それと、奪うつもりは全くないのに、誰かの恋人を奪ってしまっていることもあるのね」
「今日はさすがにもう殺されないと思うけど、どうやって殺されたのかしら」
「あなたが誘いに来なかったら、多分、寮は出なかったと思う。食事は寮で出るし。となると、学園の女子? 男子は立ち入り禁止だし」
その後、色々と話し合ったが、思い当たる特定の人物は出てこなかった。
そのため、安全を考えて、学園近くの私の別邸から、アリサも通うよう勧めた。
「ありがとう。私を二度も殺した犯人と一緒に暮らすのが安全かどうかは突っ込みたいところだけど、とりあえずお世話になります」
どうか明日は月曜日でありますように。
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