7 / 13
タイムリープ
しおりを挟む
日曜日は父の接待のお手伝いで、外国の貴族の壮年夫妻をアテンドし、昼間は王都観光、夜はオペラ座へとお連れした。
とても楽しんでいただいて、今度ぜひ彼らの国にも遊びに来て欲しいと言われた。父からもよくやってくれたと褒められた。
自分でも分かるぐらい、私は変わった。前の私は引っ込み思案で、とても今日のようなアテンドは出来ず、ただ単に父の後ろについていただけだったと思う。父もそのつもりだったに違いない。私は父の予想を遥かに上回る働きをしたのだ。
上機嫌の父から今日は王都の本邸に泊まるように言われた。いつもは学園近くの別邸で寝泊まりしていたのだが、たまにはいいかなと思った。母と会うのも久しぶりだし、来年学園に入学する弟にも会える。
本邸に戻って、久しぶりに家族団欒を楽しみ、自分の部屋のベッドに入った。
明日は婚約解消の告知が学内に張り出されるはずだ。レベッカはパーティを楽しめただろうか。
私は心地よい眠りについた。
***
目が覚めたら、学園近くの別邸だった。
おかしい、昨夜は本邸だったはず。アーニャが寝室に入って来た。
「お嬢様、ご朝食をどうぞ。旦那様からのお迎えの馬車が到着しております」
昨日のメニューだ。嫌な予感がする。
「……今日は日曜日?」
「はい、そうですが……。旦那様といっしょにお客様に王都をご案内される日でございます」
タイムリープしている。直感した。昨日、アリサが誰かに殺されたのだ。いや、正確に言えば、今日殺されるのだ。
時計を見た。父親との約束の時間までまだ二時間ある。私は急いで朝食と着替えを済ませて、すぐに出発した。
「ちょっと学園に寄ってくれる?」
馬車の御者に話しかけた。
「かしこまりました、お嬢様」
「女子寮分かるかしら?」
「はい、分かります。そちらに向かいます」
同じ日を二回繰り返すのは辛い。特に今日のアテンドは、緊張するし、気疲れする。喜んでもらえたし、褒められたので報われたが、もう一度同じことを繰り返したくはなかった。
今日を終わらせないと。
女子寮に着き、寮長にアリサへの取り次ぎを依頼した。同じ学園の女生徒であったため、すんなりと面会できた。
会えるかどうか心配していたのに、アリサが普通に現れたので、少々拍子抜けした。
「クレア、どうしたの? 日曜の朝から何事なの?」
「アリサ、今日はお暇かしら?」
「特に予定はないけど……」
「じゃあ、私と一緒に今日は王都巡りよ。父と顧客夫婦も一緒だけど構わないわよね?」
「え? なぜ……かしら?」
「いいから、制服に着替えて来てくれる?」
「理由を教えてくれる?」
「分かったわ。あなた、今日殺されるの。だから、私が守るのよ」
アリサが私をじっと見つめた。
「……狂った?」
「狂ってないわよ。そのせいで私は今日は二回目なの。後で証明するわ」
「よく分からないけど、あなた、本当に変わったわね。こんな訳の分からない強引な誘い方をする人ではなかったわ」
「お願いだから、一緒に来て」
アリサはふうっとため息をついた。
「……いいわよ。どうせ暇だから。少し待っててね」
三十分ほど待って、本当に来るのか不安になって来たころに、制服姿のアリサが現れた。メイクしていて、いつもに増して綺麗だった。
「お待たせ、クレア。あなたもメイクしてたから……」
「アリサ、訳の分からない理由しか言えない私の誘いに付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして。意味が分からないから、逆に興味が出たのよ。今日の予定を教えてちょうだい」
「馬車の中で説明するわ」
とても楽しんでいただいて、今度ぜひ彼らの国にも遊びに来て欲しいと言われた。父からもよくやってくれたと褒められた。
自分でも分かるぐらい、私は変わった。前の私は引っ込み思案で、とても今日のようなアテンドは出来ず、ただ単に父の後ろについていただけだったと思う。父もそのつもりだったに違いない。私は父の予想を遥かに上回る働きをしたのだ。
上機嫌の父から今日は王都の本邸に泊まるように言われた。いつもは学園近くの別邸で寝泊まりしていたのだが、たまにはいいかなと思った。母と会うのも久しぶりだし、来年学園に入学する弟にも会える。
本邸に戻って、久しぶりに家族団欒を楽しみ、自分の部屋のベッドに入った。
明日は婚約解消の告知が学内に張り出されるはずだ。レベッカはパーティを楽しめただろうか。
私は心地よい眠りについた。
***
目が覚めたら、学園近くの別邸だった。
おかしい、昨夜は本邸だったはず。アーニャが寝室に入って来た。
「お嬢様、ご朝食をどうぞ。旦那様からのお迎えの馬車が到着しております」
昨日のメニューだ。嫌な予感がする。
「……今日は日曜日?」
「はい、そうですが……。旦那様といっしょにお客様に王都をご案内される日でございます」
タイムリープしている。直感した。昨日、アリサが誰かに殺されたのだ。いや、正確に言えば、今日殺されるのだ。
時計を見た。父親との約束の時間までまだ二時間ある。私は急いで朝食と着替えを済ませて、すぐに出発した。
「ちょっと学園に寄ってくれる?」
馬車の御者に話しかけた。
「かしこまりました、お嬢様」
「女子寮分かるかしら?」
「はい、分かります。そちらに向かいます」
同じ日を二回繰り返すのは辛い。特に今日のアテンドは、緊張するし、気疲れする。喜んでもらえたし、褒められたので報われたが、もう一度同じことを繰り返したくはなかった。
今日を終わらせないと。
女子寮に着き、寮長にアリサへの取り次ぎを依頼した。同じ学園の女生徒であったため、すんなりと面会できた。
会えるかどうか心配していたのに、アリサが普通に現れたので、少々拍子抜けした。
「クレア、どうしたの? 日曜の朝から何事なの?」
「アリサ、今日はお暇かしら?」
「特に予定はないけど……」
「じゃあ、私と一緒に今日は王都巡りよ。父と顧客夫婦も一緒だけど構わないわよね?」
「え? なぜ……かしら?」
「いいから、制服に着替えて来てくれる?」
「理由を教えてくれる?」
「分かったわ。あなた、今日殺されるの。だから、私が守るのよ」
アリサが私をじっと見つめた。
「……狂った?」
「狂ってないわよ。そのせいで私は今日は二回目なの。後で証明するわ」
「よく分からないけど、あなた、本当に変わったわね。こんな訳の分からない強引な誘い方をする人ではなかったわ」
「お願いだから、一緒に来て」
アリサはふうっとため息をついた。
「……いいわよ。どうせ暇だから。少し待っててね」
三十分ほど待って、本当に来るのか不安になって来たころに、制服姿のアリサが現れた。メイクしていて、いつもに増して綺麗だった。
「お待たせ、クレア。あなたもメイクしてたから……」
「アリサ、訳の分からない理由しか言えない私の誘いに付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして。意味が分からないから、逆に興味が出たのよ。今日の予定を教えてちょうだい」
「馬車の中で説明するわ」
2
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
「お前の代わりはいくらでもいる」と笑った婚約者が、翌日から報告書一枚書けなくなった件
歩人
ファンタジー
子爵令嬢リーゼロッテの取り柄は、文章を書くことだけ。
華やかさのかけらもない彼女は、婚約者アルベルトの政務報告、外交書簡、
演説原稿——その全てを代筆していた。
「お前の代わりはいくらでもいる」
社交界の花形令嬢に乗り換えたアルベルトは、笑ってそう言った。
翌日から、彼の机の上には白紙の報告書だけが積み上がっていく。
——代わりは、いなかった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる