私の婚約者が伯爵令嬢に取られそうでしたので、思い詰めてその伯爵令嬢を殺したのですが、殺す前の日にタイムリープしちゃうのです

もぐすけ

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婚約破棄の仕込み

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 よく死ぬ気になれば何でもできるというけれど、人殺しする気になれば何でもできる、というのが正しいような気がする。

 自分が死ぬよりも、人を殺す方がハードルが高い、絶対に。

 それを二回やってしまった私は、アリサが言うように、別人になったのかもしれない。

 まず、ユリウスがクズ男に見えてきた。あんなに好きだったのだが、すっかり冷めてしまい、今はどうやって婚約破棄に持っていくかを真剣に考えている。

 アリサのことは今でも嫌いだが、第一王子になびかないのは、普通じゃなくて気に入った。政治に巻き込まれたり、人間関係に煩わされたりするのが、アリサには我慢出来そうもないらしい。

 アリサには婚約破棄のための餌になってもらう必要があるので、しばらく仲良くしておこう。

 あれから、ユリウスが毎日のように、パーティについて来てくれとせがんで来る。

 今日もお昼休みにつかまってしまった。そうだ、いいことを思いついた。

「なあ、クレア、何とかならないのか?」

「もう無理ですわ。他の方をお誘いしてはいかがでしょうか?」

「君は僕の婚約者だろう。婚約者がいる身で、婚約者以外の女性を連れてはいけないだろう」

「アリサはいいのですか?」

「ほ、ほら、彼女は君の親友だから、君の急用の代理ってことで筋が通ると思うんだ」

「あら、では、レベッカに頼んでみましょう。彼女も私の親友ですから」

「え? 誰? その人……?」

「教室で私の隣の席の女性です。素敵な女性ですので、きっとお気に召されると思いますわ」

「あ、ああ。もう時間がないんだよ。レベッカさんにお願いしてみてくれ」

「かしこまりました。ところで、すごい話を聞いたのです。アリサのことです」

「アリサ嬢がどうかしたのかい?」

「彼女の領内で金山が発見されたらしいですわ。すごい埋蔵量みたいですのよ」

「あ、ああ、貴族社会ではその話で持ちきりだ」

 アリサによると、金山が見つかったのは本当らしいが、昔に掘り尽くした金山が再発見されただけのようだ。ただ、アリサの家は金山なんかなくても、鉱山をいくつも持っており、かなり裕福なはずだ、と父が言っていた。

「それで、アリサに婚約の申し込みが殺到しているみたいなのです」

「その話も有名だよ」

 これは本当らしい。ユリウスもここに参加したいのだ。

「それで、彼女困ってしまっていて……。何とか助けてあげたいですわ。親友ですもの」

 実際には、困っちゃう、と言いながら、嬉々として男たちを吟味しているのだが。

「なあ、こういうのはどうかな? 僕が君との婚約を解消して、アリサ嬢に婚約を申し込む。もちろん騒ぎが収まるまでの偽の婚約さ。騒ぎが収まったら、もう一度、君と婚約し直す。どうかな?」

「まあ、すてきなお考えですわ。さすがユリウス様ですわ。善は急げです。早速婚約解消しましょう」

「え? アリサ嬢に確認しなくていいのか?」

「彼女は優しいですから、先に話してしまうと、彼女のために一時的とはいえ、私たちが婚約解消することは許してくれないと思いますわ。婚約解消してから話を持っていかないと、断られてしまいますわ」

「そ、そうだな。クレアのいう通りだ。では、早速、明日、学園に届けを出すよ」

 婚約解消は男性の方から公の場で宣言すれば成立となる。学園への届けでも十分に有効だ。

「はい、私はレベッカにパーティの件、話しておきますわ」

 ユリウスは軽快にターンをして、三年生の校舎に戻って行った。

 何なの、あの無駄な動きは。昔はあれが格好いいと思ってただなんて、私って、本当にバカだったのね。

 それにしても、上手く行き過ぎてしまった。女から婚約解消出来ないから苦労するが、婚約解消さえしてしまえば、こっちのものだ。

 でも、ユリウスはアリサが婚約を受けてくれると、本当に思っているのだろうか。アリサは誰にでも愛想がいいのだが、それを勘違いしているような気がする。

 まあ、いいか。思いっきりがっかりすればよい。

 レベッカとはすでに約束している。華やかなパーティに参加できるとあって、テンション上がりまくりだった。私の勝負ドレスを貸してあるので、パーティでは是非とも目立って欲しい。
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