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お花畑
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今日は教室の移動が多く、アリサと話が出来たのは昼休みになってからだった。
これまでは、昼休みはいつもユリウスといっしょだったが、もう終わりだ。解放感いっぱいで、すごく清々しい気分だ。婚約解消して、本当によかった。
(男のことで、精神をすり減らさなくていいって、なんて素敵なの!)
アリサの教室にいくと、相変わらず彼女の周りに人が集まっていた。
今までの私だったら、この状態であれば、遠慮して声をかけることはなかったが、今の私は平気で声をかける。
「アリサ、話があるの、ちょっと来てくれる?」
アリサを囲んでいた数人が驚いて私の方を見たが、私だと知って、アリサを解放してくれた。
「クレア、遠慮なくなったね」
「重要な話の途中だったら遠慮するけど?」
「ううん、大丈夫よ。どこに行けばいいの?」
「池にしようか」
「え? 池……?」
「あそこなら人が多いわりには、会話の内容が周りに聞こえにくいから」
「そ、そうよね」
(何よ、また殺されるとでも思ったのかしら)
アリサの華奢で小さな後ろ姿を見ていると、ナイフを突き立てた瞬間がフラッシュバックしてくる。
でも、もう二度とあんなことはしない。時間が戻って本当によかったと思う。あんなつまらない男のために、アリサの人生も、私の人生も台無しにしてしまうところだった。
私たちは池の近くのベンチに二人並んで、本邸から持ってきたお揃いのランチボックスを食べながら、話し始めた。
「昨日の第一王子様の誕生パーティだけど、殿下は途中で退出されたそうよ」
「そうなの? 何かあったの?」
「招待していた人が行方不明になったんだって。それってあなたのことじゃない?」
「それはないはずだわ。私はご招待をお断りしたもの」
「どうやって断ったの?」
「どうやってって、招待状のお返事を出さなかったのよ」
「微妙ね……。ところで、寮って門限あるの?」
「門限は夜の八時だけど、それには間に合わないと思ったから、届けは出したわ。届けさえ出せば、外泊しても構わないのよ」
「そう。殿下とはよく連絡するの?」
「いいえ。フィリップ様の誕生会ぐらいよ。私は殿下の大勢の招待客の中の一人でしかないわ」
ひょっとして……
「ねえ、アリサ、自分が好かれているか、嫌われているか、ちゃんと分かっている?」
「どういうこと?」
「そうね、例えば、ユリウスはあなたのことをどう思っているか分かる?」
「どうって? 婚約者の親友で、あ、元婚約者か。それで、実家が金持ちだと勘違いしてる?」
「ユリウスはあなたのことが好きなのよ」
「え? まさか。色々と良くしていただいているけど、あなたの親友だからでしょう?」
「良くしてって、例えば、どんなこと?」
「一人暮らしで困っていることがないかって聞いてくれて、困ってるってお話しするとすぐに手配してくれたり、毎週のようにお花を贈って頂いたり、色々とお土産を頂いたり、かな」
「……」
(このダメージは何!? 今となってはどうでもいい男だけど、この女にも男にも無性に腹が立つわ)
「どうかした?」
「いいえ、大丈夫よ。フィリップ王子は良くしてくれてるの?」
「お花を月に一度頂いているわ。小さいときに約束したことを律儀に守っていらっしゃるの」
「どんなお約束をしたの?」
「お花畑で二人で遊んでいたときに、一生お花に囲まれて暮らしたいって話したら、願いを叶えるって仰ってくれて、それから毎月お部屋いっぱいのお花を贈ってくださるの」
(あなたの頭がお花畑よ! 完全にフィリップ様からも好かれているじゃないっ)
「ねえ、お部屋いっぱいのお花の話は誰かにした?」
「いいえ、フィリップ様が話してはダメだと仰るから。クレアも内緒にしていてね」
「安心して、誰にも話さないから。それで、王子様には私のところに引っ越すことはお伝えするのよね。どうやってお伝えするの?」
「私は何もしないの。家の手のものがその辺りは全てやっているみたい」
間違いない。王子が探していた行方不明者はアリサだ。王子の部下が監視しているのだろう。昨日もいつもは寝ている時間に私が迎えに行ったために見失ったに違いない。
問題は、アリサを殺そうとしているのは誰なのか、ということだ。
「他にも贈り物をしてくれる方はいらっしゃるの?」
「ええ、みなさんよく贈り物を下さるわ」
「……」
分かった。こいつを殺したいと思う人間が沢山いるということが。
これまでは、昼休みはいつもユリウスといっしょだったが、もう終わりだ。解放感いっぱいで、すごく清々しい気分だ。婚約解消して、本当によかった。
(男のことで、精神をすり減らさなくていいって、なんて素敵なの!)
アリサの教室にいくと、相変わらず彼女の周りに人が集まっていた。
今までの私だったら、この状態であれば、遠慮して声をかけることはなかったが、今の私は平気で声をかける。
「アリサ、話があるの、ちょっと来てくれる?」
アリサを囲んでいた数人が驚いて私の方を見たが、私だと知って、アリサを解放してくれた。
「クレア、遠慮なくなったね」
「重要な話の途中だったら遠慮するけど?」
「ううん、大丈夫よ。どこに行けばいいの?」
「池にしようか」
「え? 池……?」
「あそこなら人が多いわりには、会話の内容が周りに聞こえにくいから」
「そ、そうよね」
(何よ、また殺されるとでも思ったのかしら)
アリサの華奢で小さな後ろ姿を見ていると、ナイフを突き立てた瞬間がフラッシュバックしてくる。
でも、もう二度とあんなことはしない。時間が戻って本当によかったと思う。あんなつまらない男のために、アリサの人生も、私の人生も台無しにしてしまうところだった。
私たちは池の近くのベンチに二人並んで、本邸から持ってきたお揃いのランチボックスを食べながら、話し始めた。
「昨日の第一王子様の誕生パーティだけど、殿下は途中で退出されたそうよ」
「そうなの? 何かあったの?」
「招待していた人が行方不明になったんだって。それってあなたのことじゃない?」
「それはないはずだわ。私はご招待をお断りしたもの」
「どうやって断ったの?」
「どうやってって、招待状のお返事を出さなかったのよ」
「微妙ね……。ところで、寮って門限あるの?」
「門限は夜の八時だけど、それには間に合わないと思ったから、届けは出したわ。届けさえ出せば、外泊しても構わないのよ」
「そう。殿下とはよく連絡するの?」
「いいえ。フィリップ様の誕生会ぐらいよ。私は殿下の大勢の招待客の中の一人でしかないわ」
ひょっとして……
「ねえ、アリサ、自分が好かれているか、嫌われているか、ちゃんと分かっている?」
「どういうこと?」
「そうね、例えば、ユリウスはあなたのことをどう思っているか分かる?」
「どうって? 婚約者の親友で、あ、元婚約者か。それで、実家が金持ちだと勘違いしてる?」
「ユリウスはあなたのことが好きなのよ」
「え? まさか。色々と良くしていただいているけど、あなたの親友だからでしょう?」
「良くしてって、例えば、どんなこと?」
「一人暮らしで困っていることがないかって聞いてくれて、困ってるってお話しするとすぐに手配してくれたり、毎週のようにお花を贈って頂いたり、色々とお土産を頂いたり、かな」
「……」
(このダメージは何!? 今となってはどうでもいい男だけど、この女にも男にも無性に腹が立つわ)
「どうかした?」
「いいえ、大丈夫よ。フィリップ王子は良くしてくれてるの?」
「お花を月に一度頂いているわ。小さいときに約束したことを律儀に守っていらっしゃるの」
「どんなお約束をしたの?」
「お花畑で二人で遊んでいたときに、一生お花に囲まれて暮らしたいって話したら、願いを叶えるって仰ってくれて、それから毎月お部屋いっぱいのお花を贈ってくださるの」
(あなたの頭がお花畑よ! 完全にフィリップ様からも好かれているじゃないっ)
「ねえ、お部屋いっぱいのお花の話は誰かにした?」
「いいえ、フィリップ様が話してはダメだと仰るから。クレアも内緒にしていてね」
「安心して、誰にも話さないから。それで、王子様には私のところに引っ越すことはお伝えするのよね。どうやってお伝えするの?」
「私は何もしないの。家の手のものがその辺りは全てやっているみたい」
間違いない。王子が探していた行方不明者はアリサだ。王子の部下が監視しているのだろう。昨日もいつもは寝ている時間に私が迎えに行ったために見失ったに違いない。
問題は、アリサを殺そうとしているのは誰なのか、ということだ。
「他にも贈り物をしてくれる方はいらっしゃるの?」
「ええ、みなさんよく贈り物を下さるわ」
「……」
分かった。こいつを殺したいと思う人間が沢山いるということが。
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