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護衛
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私たちは地道にポイントを稼いで、Dクラスに昇進した。
セシルはしばしば変装して、私たちの宿屋に遊びに来るようになった。
「セシル、こんなに戦場から抜けて来ても大丈夫なの?」
「ええ、私は実家が戦場に近いですから、家に帰らせてもらえるんです。その方が、治癒力が回復しやすいって、軍には説明しています」
セシルによると、王国軍はまだゴブリンキングを倒せないでいるらしい。
「お兄様はどうされているの?」
ステーシアがあまり会話に加わって来ないので、私から彼女が興味のある話を振ってみた。ステーシアが全身で耳をそばだてている。
「ずっと王都ですよ。今は王都の守りが任務だそうです。ところで、聖女様、ジョージ殿下の代わりにテリュース殿下が、新たな援軍を引き連れてこられています」
テリュース王子は側室の子だが、聡明で武勇に優れている。私も何度かお会いしているが、優秀なのに控えめで、常に正室の王子を立てるように振る舞っていた。ジョージから嫌がらせを受けても、静かに笑っている人だった。
「テリュース殿下ね。あの人なら、戦況を変えられるかもね。ところで、セシル、今はもうあなたが聖女なのだから、聖女様って呼ぶのはやめて頂戴。本来なら、私があなたを聖女様って呼ばないといけないでしょう? 紛らわしいから呼ばないけど」
「私にとっての聖女様は聖女様だけなのですっ。聖女様、テリュース殿下ですよっ。仲がよろしかったではないですか」
「滅多なことは言わないで頂戴。そんなのじゃないから」
「テリュース殿下、相変わらずめちゃくちゃ格好良かったです。王国で一番格好いいんじゃないですか」
この発言には、ステーシアも黙ってはいられないようだった。
「あなたのお兄様も格好いいわよ」
セシルはクスッと笑った。
「ステーシア姉様、身内のことはよく分からないのです。そうそう、テリュース殿下ですが、ジョージ殿下を殴りとばしたらしいです」
「え? なぜ?」
私は驚いた。あのテリュース王子がこともあろうか、ジョージを殴るなんて考えられない。
「聖女様を殺してしまった話を聞いて、あのテリュース殿下が激怒されたそうです。ジョージ殿下は陛下に言いつけたそうですが、何のお咎めもなかったようです。殴られて当然ですから」
「ルミ、あなた、惚れられてるんじゃないの?」
ステーシアがニヤニヤしながら、肘でツンツンしてくる。
「そんなわけないわよ」
確かに波長の合う人だとは思ったが、私はジョージと婚約していて、お互い挨拶を交わす程度の仲だった。
「聖女様、私、思うのですが、聖女様とステーシア姉様なら、一点突破でゴブリンキングを仕留めたりできないですか?」
「突然、何を言い出すのよ。ゴブリンが多すぎて、ステイが疲れちゃうわよ。それに、そもそも軍が冒険者を雇うの?」
「私が個人的に護衛として随行してもらう分には問題ないです。それで、可能であれば、聖女様に殿下にお会いいただいて、作戦を進言したいです」
「面白そうね」
ステーシアが話に食いついて来た。
「ステイ!? すごい数のゴブリンよ」
「もちろん二人だけで突っ込んだらやられちゃうわよ。でも、軍と軍がぶつかって、ゴブリンキングが視認出来る位置にいたら、やれるんじゃない? ルミの治癒の力があれば、しばらく私は無敵状態になれるのでしょう?」
「ステーシア姉様の仰る通りです。私はここ最近は最前線で治癒作業に携わることが多いのですが、しばしばゴブリンキングを目にします。王国軍がゴブリンキングを目指して突き進むと、軍と軍との衝突になりますが、そこから一点突破出来るのではとずっと考えていました」
「数で押し潰されると思うけど……」
「治癒の届く距離はどれくらい?」
「見えていれば、五メートルぐらいまでなら届くけど」
「一度、どういう状態なのか、見てみる価値はあるとは思うわよ」
「分かったわ。見てみることについては、反対しないわ」
セシルは帰ってすぐに行動に移したようだ。
冒険者組合に聖女の護衛の募集が貼り出された。女性二名の募集がかけられたのだが、エントリーしたのは私たち以外にも数組いたらしい。
面接のうえ、私たちともう一組が採用された。当初は私たちだけを採用する予定だったのだが、試してみたくなった組があったのだという。
「聖女様、ステーシア姉様、軍ではルミ様とステイ様とお呼びしますね。ちょっと予定が変わりました。組んでいただいた方がいいと思うペアがあったのです。魔法使いの双子の若い女性です」
会ってみると、私よりも二つ歳下の可愛いらしい女の子の二人組だった。
「アミです」
「ミアです」
名前を逆さにしただけの二人組だが、ツイン魔法という珍しい魔法を使う。二人で放った魔法が絡み合って、威力を増すところを見せてもらった。
「すごいな。いろんなパーティから誘われるんじゃないのか?」
ステーシアが感心している。
「昨日冒険者登録したばかりなんです」
妹のミアが説明してくれた。
「こんな可愛いのが二人で行って、絡まれたりしなかったのか?」
「男装してマスクして、目にテープを貼って行きました」
姉のアミが答えた。
「あはは、私たちと同じだ」
私は笑ってしまった。運命の出会いかもね。
私たち四人はセシルに連れられて、翌日、戦場入りした。
セシルはしばしば変装して、私たちの宿屋に遊びに来るようになった。
「セシル、こんなに戦場から抜けて来ても大丈夫なの?」
「ええ、私は実家が戦場に近いですから、家に帰らせてもらえるんです。その方が、治癒力が回復しやすいって、軍には説明しています」
セシルによると、王国軍はまだゴブリンキングを倒せないでいるらしい。
「お兄様はどうされているの?」
ステーシアがあまり会話に加わって来ないので、私から彼女が興味のある話を振ってみた。ステーシアが全身で耳をそばだてている。
「ずっと王都ですよ。今は王都の守りが任務だそうです。ところで、聖女様、ジョージ殿下の代わりにテリュース殿下が、新たな援軍を引き連れてこられています」
テリュース王子は側室の子だが、聡明で武勇に優れている。私も何度かお会いしているが、優秀なのに控えめで、常に正室の王子を立てるように振る舞っていた。ジョージから嫌がらせを受けても、静かに笑っている人だった。
「テリュース殿下ね。あの人なら、戦況を変えられるかもね。ところで、セシル、今はもうあなたが聖女なのだから、聖女様って呼ぶのはやめて頂戴。本来なら、私があなたを聖女様って呼ばないといけないでしょう? 紛らわしいから呼ばないけど」
「私にとっての聖女様は聖女様だけなのですっ。聖女様、テリュース殿下ですよっ。仲がよろしかったではないですか」
「滅多なことは言わないで頂戴。そんなのじゃないから」
「テリュース殿下、相変わらずめちゃくちゃ格好良かったです。王国で一番格好いいんじゃないですか」
この発言には、ステーシアも黙ってはいられないようだった。
「あなたのお兄様も格好いいわよ」
セシルはクスッと笑った。
「ステーシア姉様、身内のことはよく分からないのです。そうそう、テリュース殿下ですが、ジョージ殿下を殴りとばしたらしいです」
「え? なぜ?」
私は驚いた。あのテリュース王子がこともあろうか、ジョージを殴るなんて考えられない。
「聖女様を殺してしまった話を聞いて、あのテリュース殿下が激怒されたそうです。ジョージ殿下は陛下に言いつけたそうですが、何のお咎めもなかったようです。殴られて当然ですから」
「ルミ、あなた、惚れられてるんじゃないの?」
ステーシアがニヤニヤしながら、肘でツンツンしてくる。
「そんなわけないわよ」
確かに波長の合う人だとは思ったが、私はジョージと婚約していて、お互い挨拶を交わす程度の仲だった。
「聖女様、私、思うのですが、聖女様とステーシア姉様なら、一点突破でゴブリンキングを仕留めたりできないですか?」
「突然、何を言い出すのよ。ゴブリンが多すぎて、ステイが疲れちゃうわよ。それに、そもそも軍が冒険者を雇うの?」
「私が個人的に護衛として随行してもらう分には問題ないです。それで、可能であれば、聖女様に殿下にお会いいただいて、作戦を進言したいです」
「面白そうね」
ステーシアが話に食いついて来た。
「ステイ!? すごい数のゴブリンよ」
「もちろん二人だけで突っ込んだらやられちゃうわよ。でも、軍と軍がぶつかって、ゴブリンキングが視認出来る位置にいたら、やれるんじゃない? ルミの治癒の力があれば、しばらく私は無敵状態になれるのでしょう?」
「ステーシア姉様の仰る通りです。私はここ最近は最前線で治癒作業に携わることが多いのですが、しばしばゴブリンキングを目にします。王国軍がゴブリンキングを目指して突き進むと、軍と軍との衝突になりますが、そこから一点突破出来るのではとずっと考えていました」
「数で押し潰されると思うけど……」
「治癒の届く距離はどれくらい?」
「見えていれば、五メートルぐらいまでなら届くけど」
「一度、どういう状態なのか、見てみる価値はあるとは思うわよ」
「分かったわ。見てみることについては、反対しないわ」
セシルは帰ってすぐに行動に移したようだ。
冒険者組合に聖女の護衛の募集が貼り出された。女性二名の募集がかけられたのだが、エントリーしたのは私たち以外にも数組いたらしい。
面接のうえ、私たちともう一組が採用された。当初は私たちだけを採用する予定だったのだが、試してみたくなった組があったのだという。
「聖女様、ステーシア姉様、軍ではルミ様とステイ様とお呼びしますね。ちょっと予定が変わりました。組んでいただいた方がいいと思うペアがあったのです。魔法使いの双子の若い女性です」
会ってみると、私よりも二つ歳下の可愛いらしい女の子の二人組だった。
「アミです」
「ミアです」
名前を逆さにしただけの二人組だが、ツイン魔法という珍しい魔法を使う。二人で放った魔法が絡み合って、威力を増すところを見せてもらった。
「すごいな。いろんなパーティから誘われるんじゃないのか?」
ステーシアが感心している。
「昨日冒険者登録したばかりなんです」
妹のミアが説明してくれた。
「こんな可愛いのが二人で行って、絡まれたりしなかったのか?」
「男装してマスクして、目にテープを貼って行きました」
姉のアミが答えた。
「あはは、私たちと同じだ」
私は笑ってしまった。運命の出会いかもね。
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