【R18】悪役令嬢?いいえ、悪役夫人です!

たかはし

文字の大きさ
13 / 28

番外編 バレンタインですのよ!②

しおりを挟む
抱き上げて連れてこられたのは錬金術準備室、ではありませんでしたわ。緊急用に準備されている、学園用の馬車乗り場でした。学園に通っている生徒達は、行き返りにしか馬車を使いません。ですので何か急ぎの要件があった場合、すぐに移動できるよう馬車を学園が管理しているのです。
今回の場合あまり褒められた使用用途ではありませんが、あのまま学園にいても抜け殻のようになったわたくしは何もできなかったでしょう。そういう意味ではジェラルドさまの判断は正しいと言える、のでしょうか?
ジェラルドさまも一緒に帰るのはどうかと思いますが…。でもこうして隣に旦那さまのぬくもりを感じて、安心しているところもあります。
泣いたからでしょうか?程よいぬくもりと安心感で、わたくしの瞼は閉じていったのでした。


目が覚めれば、そこはわたくし達の寝室でした。窓から見える様子を見れば、あれからそう時間は経っていないように思います。
寝室というプライベートな場所に帰ってきたことで、わたくしは安心したのと共に今朝までのあのドキドキ感を思い出しました。そしてその結果も。
あんなに繊細な細工だったチョコレートのバラは、粉々になって、きっと茎すらもぽっきり折れてしまっているでしょう。ずっと握っていたプレゼントの箱を振ったら、そういう音がしますし…。バレンタインのチョコ、どうしましょうか…。

そうしてしょんぼりしていると、寝室のドアが開きジェラルドさまがいらっしゃいました。

「ああ、起きた?気分はどう?今メイドのメリーが、君の好きな紅茶を入れてるけど…飲む?」

ジェラルドさまは学園でのことは、無かったように接してくださいました。でも、わたくし…

「い、いただきますわ…。……ジェラルドさますみません。今日はバレンタインですのに…チョコをお渡しできませんの…」

ぎゅっと角がへこんだ箱を抱きしめて、そう言いました。こんな壊れて姿をとどめていない、ただのチョコレートの破片なんて差し上げられませんわ…。
せっかくのイベント事だというのに、どうしてこうもうまくいかないのでしょうか。また涙が出てしまいそうですの…。

「ねえ、アデリーナちゃん。ずっと抱きしめてるその箱、チョコが入ってるんだよね?俺にくれないの?見た感じちょっと箱がへこんでるけど、もしかして『チョコが割れたから、俺に渡したくない』とかかな?」

ジェラルドさまはまだベッドから降りていないわたくしの隣に腰掛け、そしてつんっとわたくしの腕の中にある箱をつつきました。そこまでわかっているなら察して欲しいのですが。
泣きそうになりながらこくんと頷くと、ジェラルドさまはにこーっと笑ってわたくしの額にちゅっと軽くキスをして、それから割れたチョコのバラが入った箱を取り上げてしまわれたのです。
あっという間のことでしたわ。気が付いたら箱がジェラルドさまの手の中にあるのです。

「ジェラルドさま!だめっ返してくださいっ!そんな壊れてしまったものなんて…!」

「アデリーナちゃん。思い出してごらん?君の夫が何を得意としているのか。それにね、俺はアデリーナちゃんにはずっと笑顔でいて欲しいんだよ」

そう言うとジェラルドさまは止める間もなく、箱を開けてチョコを出してしまったのですわ。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

大金で買われた少女、狂愛の王子の檻で宝石になる ―無自覚な天才調合師は第二王子の婚約者(虫除け)を演じることになりました―

甘塩ます☆
恋愛
「君を金貨三十枚で買ったのは、安すぎたかな」 酒浸りの父と病弱な母に売られた少女・ユナを救ったのは、国中から「放蕩王子」と蔑まれる第二王子・エルフレードだった。 ​「虫除けの婚約者になってほしい」というエルの言葉を受け、彼の別邸で暮らすことになったユナ。しかし、彼女には無自覚の天才調合師だった。 ​ユナがその才能を現すたび、エルの瞳は暗く濁り、独占欲を剥き出しにしていく。 「誰にも見せないで。君の価値に、世界が気づいてしまうから」 ​これは、あまりに純粋な天才少女と、彼女を救うふりをして世界から隠し、自分の檻に閉じ込めようとする「猛禽」な王子の物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

十歳の花嫁

アキナヌカ
恋愛
アルフは王太子だった、二十五歳の彼は花嫁を探していた。最初は私の姉が花嫁になると思っていたのに、彼が選んだのは十歳の私だった。彼の私に対する執着はおかしかった。

処理中です...