デブ執事

saionji41

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第13話 貂彩学園の猛獣

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始業式の翌日、本格的に授業が始まる日。
まだ夏休み気分が消えない生徒も多いだろう。
それは先生方も同様である。

始業式が早く終わるのも相まって、夜遅くまで遊んでしまう生徒も多い。
先生も同様である。
この学園は始業式の週は、登校時間を1時間遅らせている。
もちろん先生の遅刻が多いからだ。

そんな中、希美はいつも通りの時間に登校する。
そもそも希美は夏休みもほとんど6時起きであった。
生活リズムを崩したくないということでこの週も変わらず登校している。
人気のない朝の学校というのが好きだというのもあるが。

ゆっくり本でも読もうかと、教室のドアをくぐるとそこには今日も人影があった。
昨日もそうだが、1学期は希美より早く来ている生徒は誰もいなかった。
それが2学期に入ってから2日連続で先客がいる。
希美は不穏な空気を感じながら、影の主を窺う。

一心不乱にキーボードを叩いているその影は、保険委員の鮎ケ瀬紬であった。
おかしい。
少年探偵のように希美は勘案する。

彼女はいつも時間ギリギリに登校していた。
遅刻するときもたまにあったくらいだ。
さらに何かレポートのようなものを作成している。
夏休みの課題は昨日が期限で、今日は特に他の課題もない。
課題が提出してなかったのは私の所属する2組にはいない。もちろん鮎ケ瀬さんも提出しているはず。
あまり教室の入口で黙ったままいるのも不自然なので、腹を決めて声をかける。

「鮎ケ瀬さんおはよう。めずらしいね、こんな時間にいるなんて。」
希美は自席に荷物を置くと、後ろから声をかける。
しかし紬は聞こえていないのか、パソコンの画面から背けずに作業している。
希美はこれだけ集中している中で声をかけるのは忍ばれるが、その異様な光景とで天秤が揺れる。
しばらく様子を窺うことにして、希美は座って文庫本を開く。

しかし、開いてはいるが内容は入ってこない。
どうして紬がこんな時間に何の作業をしているのだろう。
杞憂であればよいが、どうしても気になってしまう。
後ろの席から見てても、紬は焦燥感に包まれている。
時間が経てば経つほど、天秤がどんどん傾いていく。

しばらくすると、集中が切れたのか、紬は一息ついて伸びをする。
それを見て希美は紬に声をかける。
「おはよう。何やってるの?」
希美は紬の肩に手をかけながら、そう問いかける。
肩に手をかけられたころで、きゃっ、と放ちながら紬は後ろを振り返る。
「砂糖元さん、おはよう。びっくりした~。」

紬はそう言うとそっと画面を閉じて笑顔を見せる。
希美は再度、何をやっていたかを尋ねると、紬は困ったように口ごもる。

「んーと、ね。」
紬は言葉に詰まって言い淀む。
この反応を見て、希美は一つ思い当たる節がある。
邪推になってしまうが、どうしても拭いきれないものがある。

「鮎ケ瀬さん、もしかしてだけど」
ガラガラッ!
希美が確かめようとしたその時、まだ寝起きの扉が乱暴に転がされた。
瞬間、希美の推察は確信へと変わった。

「つむぎ~、もう終わったか~?」
そう問うたのは、1組の中心人物である鯱下藍子だ。
この一瞬でもわかる通り、悪い意味での中心人物だ。
彼女は希美達と同じ2組の鮫口留美子と、クラスは違えどいつも一緒にいる。
留美子も無断遅刻無断欠席無断早退と問題児ではあるが、藍子はその比ではない。

「鯱下さん、えっとまだできてなくて。。」
「えー、まだできてないの?始まるまでに出すって言ってあんだから早くしてよ。」
ごめんなさい、と紬は再びパソコンを開いてカタカタとキーボードを叩く。
「できたら教えろよ~」
藍子はどこかで寝ていたのか、欠伸をしながら戻っていく。

「待ちなさい!」
うひゃぁ、と紬が椅子から転げ落ちそうになる。
呼び止められたであろう藍子は、何も言わずにゆっくりとこちらを振り返る。
呼び止めた本人の希美は、指を揃えて開いた手をゆっくりと下す。

「鮎ケ瀬さん、そんなこと今すぐ止めなさい。やる必要なんてないわ。」
紬は驚きつつも、手を止めて希美をじっと見つめる。
しかしすぐに藍子に睨まれて、ひぃっと言いながら作業を続ける。
「それで良いんだよ、さっさと終わらせてくれよ。砂糖元は関係ないんだから余計な事言うなよ。これはあたしとつむぎの問題なんだから。」
紬が作業に戻って安心したのか、希美に釘を刺して立ち去ろうとする藍子に、希美はなおも食い下がる。

「あなたこそ、私と鮎ケ瀬さんの会話に入ってこないでくれないかしら。鮎ケ瀬さん、もうそんなことしなくても大丈夫よ。雲龍先生に私から言っておくわ。」
希美はそう言うと、紬のパソコンをそっと閉じる。
そうして紬を席から立たせ、職員室へと連れて行こうとする。
すると藍子が不敵な笑みを浮かべながら紬に声をぶつける。

「いいのか、つむぎ~。お前の母親がどうなってもよぉ。」
恫喝の言葉を投げられたとたんに、紬は歩を止めてしまう。
「お母さん?」
希美は事態を把握できずに紬の沈鬱な顔を覗き込む。
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