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8.転輪

百七十五話 拘束して運搬して

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175話 人質は盾として使える

音で気付かれなくても、女達に見つかるとどうなるか判らない
今はただぐったりしているようだが、何かしら反応してくる可能性はある
だがなにもしないなら簡単かもしれない、見る限り武器もなさそうだし
拘束するのには左腕に巻いている鎖と脱ぎ散らかされた服が使えそうだ
取り敢えず最初に口を押さえて騒がれないようにしなければいけないな
そこは服を拾って使えばいいか、後は腕や足を縛って動きを封じるとして
運びやすいようにしておきたいが···拘束に時間を掛けると女達にも反応される
かもしれないし、なにより対象の拘束や女達の対処に手間取ると逃げられるかも
しれない、手早く済まさないといけないな、逃げるのは来た道を辿るように···
でも地下はもう使う意味がないし、場所は分かるから後は真っ直ぐ向かえばいいか
兵士に気付かれなければ隠れながら、見付かったら強行突破···よし
やることは決まった、まずは奴等に気付かれないように男の後ろに転移しないとな
しゃがみながら転移できれば女たちの視界には確実に入らないんだが
この体勢で行くしかない以上残念だが無理だ、だが一応転移と同時に身を屈め
視界に入らないようにする、女は全員天井を向いているから大丈夫なはず
そして転移した時と屈むと時、同時にやったためか床が軋んで小さな音が出る
小さいとは言えそれは確実に聞こえる程の大きさはある、急に聞こえた時
気になるが驚かない程度の大きさだ、そんな異音が出れば気付いてもおかしくない
が···幸いにも誰も音に反応しない、まだ気付かれてはいないようだ
奴等周囲への警戒心がなくなっているな、少し位音が出ても気付かなそうだ
近くの脱ぎ捨てられた服の中から捕縛に使えそうな物を選ぶ
取り敢えず長袖2枚とズボン1枚が使えそうだが、1枚づつしか拾えそうにない
服を掴み男の後ろに周り口を押さえるように服を押しあて後ろで縛る
「マッムグー!」
何を言ってるか判らない男を盾に女達を確認するも、1人も動くことなく
死んだような濁った眼をこっち···いや男に向け僅に微笑む表情を続けている
窓からでは顔が見えなかったが、多分最初からこの表情だったのだろう
反応してこないなら放っておいていい、無駄に暴れる男を床に叩き付け
腕をズボンで縛る、だが縛りが緩いのか服の強度が足りないのか暴れられると
腕が抜けるほどの隙間が出来てしまい拘束が解けてしまった、解けたズボンは
変わりに足を縛る事にした、こっちなら隙間は出来ても抜けなさそうだ
腕は左腕に巻いている鎖で縛っておく、首もとの服を掴んで持ち上げる
女達はやはり無反応だが···さっきと違ってこっちを見ている、いや武器か?
濁った瞳からはまるで死を望んでいるような、そんな感じがした
まぁついでだし死なせてやろう、3人まとめて首を斬るだけですむ
ベッドの横に周り長刀を振り上げる、すると3人共がこっちへ顔を向けた
そこへ降り下ろし一直線に並んだ首をベッド事一気に斬る、少し床も斬れた
入ってきた窓を押して外すように割る、上側の殆どを外せそこを乗り越え···
何か聞こえた気が?まぁさっきから男は煩いんだが、それとは違う声
「ありがとう」
今度ははっきりと聞こえた、今のは少し掠れていたが女の声と思われる
横を向き死体を見るとなんとなく分かった、多分この3人の内の誰かの声だろう
首を斬り落とされて死んでいると言うのにどうして聞こえた、と思ったが
アンデッド化はしてないし、まぁ魂とか霊体としてとかそんな感じなのだろう
それとも実はただの気のせいだったか···いやそれはないか
感謝されてしまった以上このまま放置も出来ず、シーツを被せて隠してやる
窓を乗り越えると周囲の兵士が慌ただしく動いているのが分かった、部屋の中に
兵士が入ってきた、窓を割った音に反応したのか兵士達がこっちに集まってくる
入り口の方から向かってきている足音が幾つも聞こえてきて、すぐ近くの地面に
矢が幾つか刺さった、それを認識して直ぐに兵士が正面から槍を構え向かってくる
そこに引きずっている男を持ち上げ盾にすれば、武器は構えたまま足を止める
後続の兵も同じようにしてその場で止まる、やはりこれには攻撃できないようだ
盾として構えたまま近付いても動かない、その槍へと男を押し付けようとすると
槍を引き構えを解く、どうやら何も出来ず突っ立っているだけのようだ
兵士向け長刀を大きく降り首を断ち斬る、時には後ろの兵士も巻き込みながら
2以上同時に処理し手早く近くの兵士全てを排除する、屋内や遠くにいる弓兵には
こっちから攻撃できないし、あっちも攻撃してこれないため放っておいていいかな
さっきまで騒がしかったのに静かになっている男を左肩に担ぐようにして運ぶ
ふーむこれだけの重さだと屋根に上がるにはどれだけの力で跳べばいいだろうか?
少し強めにしておけば大丈夫か?一度目の屋敷の屋上に登るのは思ったより跳んだ
そのまま進んで城まで向かい、今度は2階まで上る必要はないため低めに跳んで
1階の屋根に跳び乗った···はいいが斜めだから少しバランスを取るのが難しい
しかも下側が左だから普通に居るだけで左に傾いて動きにくいのに
更に左に担いでいるから尚更体が傾くせいで歩きづらい···そのせいか力が入って
さっきから右足がめり込む、そのお陰で倒れないのはいいが崩れないか心配だ
城の正門側までくると既にそこら一帯が血だらけになっており、兵士達の死体が
転がったり壁にめり込んだりしている、最初に見た数より明らかに多いな
これならもう帰り道に兵士はいなさそうだ、大通りを通って門へと向かう
途中で死体に躓きかけ蹴り飛ばしてしまったり、踏み潰してしまったり
なんとも締まらない帰還になってしまった、足元に気を付けていたんだがな···
思ったよりも物や死体が散乱しており、乾いた血の表面が削れ滑りかけた事も
あったがゆえだ、そう思えば街中でもう妖精達を見かけないが帰ったのか?
ヒュウゥと小さな風を切るような音が聞こえ音を追って見上げると
兵士が飛んできており崩れかけの屋根にぶつかり、屋根を砕いて家を崩す
飛んできた方向からするとさっきいたあの屋敷の方だろうか?
残っていた兵士の処理をしてくれたのかな、後生き残りの排除もしているのか
門に着けば殆ど揃っていた、出ているのはトロールと剣持のゴブリンのようだ
「持ってきましたよ、これが合っているといいんですが」
もしかしたら間違っていたり他にも重要人物が居るかもしれないからな
「おぉ見付けていたのですね、王はそれで合っています、感謝しますよ」
指揮しているゴブリンが床に落とした男の顔を確認してそう言った
と言うことはこれで任務完了だな、役に立ててよかった
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