37 / 89
旅3
ヒサメくんに魔力を借りて、氷の魔導を体験してみた
しおりを挟む
「終わりましたよ、お姉さん。この子良い馬ですね。獣を全く恐れないし、人にもよく懐いています」
「あ、うん。ありがとうヒサメくん。お馬さんもお疲れ様」
『ふむ。あの程度であれば朝飯前である!』
狼の群れを追っ払ったヒサメくんは、馬の首をパシパシと叩きながら撫でて、馬から降りると隣にいた騎士さんに手綱を渡して馬車に戻ってきた。
私があんな暴れ回るお馬さんに乗ってたら、10秒で満身創痍になりそうだし、なんだったら落馬しててもおかしくないぐらいなんだけど、ヒサメくんはまだまだ余裕みたい。
私だって運動部に所属してたはずなんだけど……。
「ヒサメくんは、乗馬歴は長いの? 見事なお馬さん捌きだったけど」
「ああ、はい。幼い頃から両親に叩き込まれてますし、大人も交じる大会で結果を残したこともありますよ! まあ、貴族の嗜みってやつです」
「ヒサメくん、やっぱり貴族だったんだ……」
良いね、貴族。
もしヒサメくんが、せめて私と2歳差ぐらいだったら恋愛の対象として考えていたかもだけど、さすがに小学生は……ねえ。
色々と倫理的な問題があるわけですよ。
しょうがないからヒサメくんはピピちゃんかマリーちゃんに譲ってあげることにしようかな。って、そんなことを言う私は何様だよって感じだけど。
「アカネ姉さんは、ボクが貴族だと知っても態度があまり変わらないんですね」
「え? もしかしてゲスいことを考えてるのが顔に出てた?」
「いえ、皮肉とかではなく本音です。ひどい人だと露骨に媚びてきたり、逆に恩着せがましくしてきたりするので……」
「……あ、もしかして貴族って、なんか強い権限持ってたりするの⁉︎」
「そういえばアカネ姉さんは記憶喪失って言ってましたね。貴族に関する記憶も失ってしまったんでしょうか」
「さあ、もしかしたらそうなのかも。で、貴族には何ができるの?」
てっきり名ばかりの貴族ってか、単なるお金持ちぐらいに考えてたんだけど、本当になんかすごい権限とか持ってるのかな。私は権力はどうでも良いけど、貴族には何ができるのかがすごい気になってきた。
てか、仮に単なるお金持ちだったとしても、元の世界に戻るために大金が必要になる可能性もあるわけだから、仲良くしといて損はないかな。
「良いですか、アカネさん。貴族とはそもそも、土地の権利を管理する人のことを表す言葉なんです。土地の所有権を得た貴族はその土地に住むことができるだけでなく、その土地が発生させる魔力を管理することができます。
ボクの家系は代々、氷と水の魔力を発生させる土地の権限を持っています。だからボクはこうして自在に冷気を操れますし、ボクが許可した人間に数パーセント分の魔力の使用権を与えることもできるんです」
「え、ちょっと待って、ついていけない……」
「要するに、ボクと仲良くすればそれだけで氷の魔導が使えるようになる可能性があるってことなんです。わかりやすく言うと」
「……すっごいじゃん。え、それって凄くない⁉︎ え、それって私でも使えるようになるの?」
「試してみますか? 一時的に0.1%の魔力使用権をアカネ姉さんに授けます……はい。試してみてください」
「た、め、す?」
「そうですね……手を窓から外に向けて、手のひらから冷たい空気が噴き出すようなイメージをしてみてください」
えっと……こう、かな?
ヒサメくんに言われた通りに手を外に出して、粉雪混じりの冷たい風が手のひらから吹き抜けていく様子をイメージする。
すると、私の存在が見たこともない山の景色と接続したような感覚になって、私の体を通り抜けて何かが外へと溢れ出していく。
びっくりして思わず瞑ってしまった目蓋を開けると、掌の向く先には雪景色が広がっていた。
「やっべえ、0.1%でこの威力なの⁉︎」
「これは……、ボクもここまで魔力との親和性が高い人は初めて見ました。普通の人は体内の魔力が邪魔してろくに魔力を使えないものなんですけど……」
「あ、うん。ありがとうヒサメくん。お馬さんもお疲れ様」
『ふむ。あの程度であれば朝飯前である!』
狼の群れを追っ払ったヒサメくんは、馬の首をパシパシと叩きながら撫でて、馬から降りると隣にいた騎士さんに手綱を渡して馬車に戻ってきた。
私があんな暴れ回るお馬さんに乗ってたら、10秒で満身創痍になりそうだし、なんだったら落馬しててもおかしくないぐらいなんだけど、ヒサメくんはまだまだ余裕みたい。
私だって運動部に所属してたはずなんだけど……。
「ヒサメくんは、乗馬歴は長いの? 見事なお馬さん捌きだったけど」
「ああ、はい。幼い頃から両親に叩き込まれてますし、大人も交じる大会で結果を残したこともありますよ! まあ、貴族の嗜みってやつです」
「ヒサメくん、やっぱり貴族だったんだ……」
良いね、貴族。
もしヒサメくんが、せめて私と2歳差ぐらいだったら恋愛の対象として考えていたかもだけど、さすがに小学生は……ねえ。
色々と倫理的な問題があるわけですよ。
しょうがないからヒサメくんはピピちゃんかマリーちゃんに譲ってあげることにしようかな。って、そんなことを言う私は何様だよって感じだけど。
「アカネ姉さんは、ボクが貴族だと知っても態度があまり変わらないんですね」
「え? もしかしてゲスいことを考えてるのが顔に出てた?」
「いえ、皮肉とかではなく本音です。ひどい人だと露骨に媚びてきたり、逆に恩着せがましくしてきたりするので……」
「……あ、もしかして貴族って、なんか強い権限持ってたりするの⁉︎」
「そういえばアカネ姉さんは記憶喪失って言ってましたね。貴族に関する記憶も失ってしまったんでしょうか」
「さあ、もしかしたらそうなのかも。で、貴族には何ができるの?」
てっきり名ばかりの貴族ってか、単なるお金持ちぐらいに考えてたんだけど、本当になんかすごい権限とか持ってるのかな。私は権力はどうでも良いけど、貴族には何ができるのかがすごい気になってきた。
てか、仮に単なるお金持ちだったとしても、元の世界に戻るために大金が必要になる可能性もあるわけだから、仲良くしといて損はないかな。
「良いですか、アカネさん。貴族とはそもそも、土地の権利を管理する人のことを表す言葉なんです。土地の所有権を得た貴族はその土地に住むことができるだけでなく、その土地が発生させる魔力を管理することができます。
ボクの家系は代々、氷と水の魔力を発生させる土地の権限を持っています。だからボクはこうして自在に冷気を操れますし、ボクが許可した人間に数パーセント分の魔力の使用権を与えることもできるんです」
「え、ちょっと待って、ついていけない……」
「要するに、ボクと仲良くすればそれだけで氷の魔導が使えるようになる可能性があるってことなんです。わかりやすく言うと」
「……すっごいじゃん。え、それって凄くない⁉︎ え、それって私でも使えるようになるの?」
「試してみますか? 一時的に0.1%の魔力使用権をアカネ姉さんに授けます……はい。試してみてください」
「た、め、す?」
「そうですね……手を窓から外に向けて、手のひらから冷たい空気が噴き出すようなイメージをしてみてください」
えっと……こう、かな?
ヒサメくんに言われた通りに手を外に出して、粉雪混じりの冷たい風が手のひらから吹き抜けていく様子をイメージする。
すると、私の存在が見たこともない山の景色と接続したような感覚になって、私の体を通り抜けて何かが外へと溢れ出していく。
びっくりして思わず瞑ってしまった目蓋を開けると、掌の向く先には雪景色が広がっていた。
「やっべえ、0.1%でこの威力なの⁉︎」
「これは……、ボクもここまで魔力との親和性が高い人は初めて見ました。普通の人は体内の魔力が邪魔してろくに魔力を使えないものなんですけど……」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる