目が覚めたら異世界で草生える

みももも

文字の大きさ
80 / 89
大平原

盗賊団は本日をもって……

しおりを挟む
「見えて来たぞ、あれが俺らの家族マーダーだ。リーダーのところまでは案内してやるが、そこから先はそっちで勝手にやりな!」
「アカネさん、いよいよ盗賊団のボスと対面ですね。緊張します?」
「なんか大ごとになっちゃってるしね……。私は私の荷物を返してもらって、旅の安全だけ保証してもらえればそれでいいんだけど……」
 私たちが最初に出会った盗賊は、盗賊団の中でも下っ端だったみたいで、話の流れで彼らの親玉のもとまで案内されることになってしまった。え、なに? このまま私が矢面に立って交渉する感じなの? 本当は交渉ごととかは長さんに任せたいぐらいなんだけど、長さんの言葉が分かる人間は私だけみたいだから、どちらにせよ私が間に立たないとダメなのか。
 などと考えている間にも事態は進んで、「呼んでくる」と言って走って行った盗賊さんが走って戻って来た。
「お待たせしました、リーダーが話を聞きたいと。連れてってやるから俺について来な!」
 なんか偉そうな態度が鼻につくけど、まあいいや。盗賊さんについていくと、左右から盗賊どもの荒々しい視線が私たちに降り注ぐ。交渉を優位に進めるためにわざとやってるんだろうけど、正直なことを言うとむっちゃ怖い。今すぐ帰りたい……。
 そうして辿り着いたのは、地面に打ち付けられた杭とロープで区切られただけの謎の空間だった。正方形に区切られた結界の真ん中には、他の人と比べたら多少豪華に見えなくもない服装をしたおじさんが偉そうに座っている。

「オヤジ! 客人を案内したぜ!」
「ご苦労、お前は下がれ。さて客人よ、我ら大草原盗賊団にいかな用事かな?」
「いや、え? 用事っていうかとりあえずテントとかを返して欲しいん……」
「聞いた話によるとあなたがたはこの土地の貴族様なのだとか。ということは我々を取り締まるのが目的ですかな?」
「いやだから、それ以前に……(シグレさん、この人全然こっちの話が通じないんだけど!)」
「(お任せください、アカネさん!)やい貴様ら! アカネさんはこの土地の貴族である! アカネ様からの命令に従わねば、この土地の法に則って裁きが下ると知れ!」
「え、いや、え⁉︎」
 違う、シグレさん。そうじゃないよ! 私はもっと穏便にまとめて欲しかったんだけど、どうやらシグレさんも権力に酔っちゃってるみたい? ……これがハロー効果ってやつか。

「待ってくれ、なにが目的だ? まさか盗賊団を解散させるのが目的か⁉︎ だが待ってくれ、突然解散と言われても困る。俺たちだって家族を守るために仕方なくやってたんだ!」
 なるほど、盗賊行為で生計を立ててた人の言い分はそうなるんだ。でも、そんな言い訳を思いつくということは逆に言えば……。
「でも悪いことだってことは君達もわかってるんだよね。だったらやめなよ、こんなこと。あ、あとそうだ。この土地の馬たちを追い回して殺し回るのもやめてね。むしろそっちの方が本題かな……」
「そんな! いいか、馬狩りは俺たちに代々伝わる行事で……」
 盗賊の言い分を聞くには、この馬狩りはこの平原の一族に代々伝わる伝統的な狩りで、この狩りで生計を立ててる人もいて、今まで禁止しようという試みは何度かあったけど全て跳ね除けてきたらしい。つまりだからどういうこと? それを聞いて私が「仕方ないね、じゃあOK」っていうとでも思ったの?

「……うん、わかった。今日から馬狩りは禁止ね!」
「おい、俺の話を聞いてたか? 俺たちの言い分も……」
「うんだからそれは、君たちの言い分でしょ。私が納得する理由にはならないじゃん。裁量権が私にあるなら私の結論は変わらなかったし。従わないなら地震……神の裁きでもなんでもやってでも止めさせてもらうから!」
 てか、話を聞かないのはそっちの方でしょ。
「おいあんた。あんた人間と馬のどっちが大切なんだ?」
「そりゃ今の状態ならお馬さんたちの味方かな。君たちはうるさいけどお馬さんたちはうるさくないし、君たちよりもお馬さんの方が話が通じるからね!」
 なんてことを言ったところでこの人が私のいうことを聞くとはとても思えないんだけど。ていうかやっぱり普通に逆上するだけだよね。お馬さんが睨みを聞かせてくれてるおかげか、さすがに襲いかかっては来ないけど。
 なんていうか、平行線というよりはねじれの関係に近いのかな。そもそも話の軸が違うからわかり合うとかは無理な感じ。

『お主よ、もはやこれになにを言っても無駄だと思うぞ』
『俺もそう思う。そうだ、こんな奴ら放っておいてお前が馬の群れを率いてくれないか? ……いや、それは無茶か』
「なに、馬の国でも作って私が王様になれってこと?」
「アカネさん! それです。それですよ! アカネさんが国を作って王様になればいいんです!」
「はぇ? シグレさん、どゆこと?」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...