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サプライズ2

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 ――あゆみさん。結婚おめでとう。あなたは私に対して申し訳なく思っているみたいだけど、気にしなくてもいいのよ。
 聡一郎さんはね、まさに瓜二つの男だったの。私の人生最愛の男と。大がいくつもつくような恋愛をした男とね。あなたが思っているように、私は聡一郎さんに一目惚れしたと言えなくはないけど、人生最愛の男に惚れ直したって言った方が正確なの。聡一郎さんは惚れ惚れしちゃうくらいに、彼によく似ていたから。それで、私はあなたによく似たタイプの女から、聡一郎さんを奪ったの。幼馴染で事実上の許嫁だった女からね。
 略奪婚と言ってよかったし、お義母さんから白無垢綿帽子を譲り受けるのも拒んだし、池内家に嫁いだ後も自分のやり方や生き方を曲げずに好き勝手にやったから、私はすっかりお義父さんお義母さんや、親族や会社の人たちから嫌われちゃったの。あなたは当面、まわりから言われた通りにあれこれやって、元幼稚園の先生らしく愛嬌を振りまいていれば、今度の嫁は従順でいい子だって気に入られて、きっとうまくいくはずよ。聡一郎さんもね、私みたいに気が強くてハッキリと物を言う背の高い女より、あなたみたいに控え目でおとなしくて小柄な女の子の方が好みなの。
 私は人生最愛の男によく似た顔をした息子が欲しかった。淳一郎が生まれきてくれて、思い通りになったわ。聡一郎さんにそっくりで、私の人生最愛の男、ジュンとも瓜二つ。出産した翌日に、顔のはっきりしてきた淳一郎が父親似なのを確認したときに、もう死んでもいいと思った。
 だからって訳じゃないのでしょうけど、その後に乳癌が見つかって、三年後に再発して死んじゃったの。でも、淳一郎を産んで、四年も育てることができて、満足しているわ。人間の根本的な教育は、幼稚園に預けるまでの三、四年もあれば、充分にできるもの。
 天から授かった私のピアノの才能は、淳一郎に引き継がれる。土台はしっかり固めたつもり。後を託せるピアノ講師も運よく見つかったし。あなたが心配しなくても、淳一郎は立派に育って、勝手に才能を開花させるはず。だから、私は少しもあなたを恨んでなんかいないの。
 あゆみさん。聡一郎さんは、あなたの人生最愛の男でしょう。痛いだとか怖いだとか言っていないで、子どもをさっさと産んで育ててみなさいよ。父親似の男の子だったらいいわね。本当に、本当に可愛いわよ。母親にとって、自分が心から愛した男によく似た顔をした実の息子って。心をトロトロに溶かされるくらいにね――
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