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4.ガレア王国
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「聖女が現れたとお告げがあり、来てみればどういう事ですか?」
「魔の森にいるとお告げが出たようです」
ガレア王国に到着した聖協会の聖官達は、困惑した様子で話し合っていた。それもそのはず、自国から"聖女の存在位置が魔の森と表示された"と知らされたのだ。
「神聖紙が嘘をつく訳がない」
「なら、先程会われた聖女様は偽物ということですか?」
「いえ、妊娠していると聞きました。もうすでに力を失ったのでしょう」
「では、新たな聖女が誕生したと?」
「そう捉える方が賢明でしょう」
その間、聖官達をもてなしていた国王の側近は冷や汗をダラダラと垂れ流していた。
(魔の森だと⁉︎ 死んでいなかったのか! まずい、魔の森には魔石回収の為に真影部隊を派遣しておる。勝手に入ったとなれば只ではすまんぞぉ⁉︎)
「聖官様方。私はここいらで失礼させていただきます。力を失ったとは言え、聖女様は放っておけませんのでね」
今から元聖女の所へ向かうから邪魔するなと、言外に伝える。
「では、私たちもこれで」
それを読み取った聖官は用は済んだとばかりに席を立ち上がる。が、側近はそれを止めた。
「いえ、せっかく来ていただいたのに何もしないのでは我が国の面子が潰れてしまいます。この後の食事を楽しんでくれ、と我が王から伝言がありました」
一国の王の頼みとあっては断れるはずもない。
「では喜んで」
渋々また席についた聖官だが、その顔には焦りが浮かんでいた。
側近が出て行ったのを見計らって、聖官の1人が今回のまとめ役である聖官にこそっと耳打ちする。
「よいのですか? この国は聖女の魔石を悪用していると言う噂が以前から流れておりました。この事を知った今、既に魔の森に兵を差し向けているのでは?」
「いや、それは無いだろう。魔の森は大国が領土争いで互いに監視している。そこにこの小国が入ろうモノならただでは済まない。バカではない限り万が一のことは起こらないはずだ」
そこまで言ってからグッと眉間に皺を寄せる聖官。何故なら聖協会も手を出しにくい場所であることを改めて認識したからだ。
(最近、魔の森を狙っている大国どもが力をつけてきた。聖協会の権力が年々落ちている今、厄介なものよ。せめて聖女さえ確保できておれば……)
どこか、もどかしい気持ちを抱えながら聖官達は振る舞われた食事を食べるのだった。
○○○
一方、聖官達の話を聞き部屋を出た側近は、すぐに王の元へ向かった。
「私でございます」
「入れ。それで? 上手く騙せたか?」
「はい、ですが……」
「なんだ。不備でもあったのか」
「いえ、魔の森で聖女がいると先程お告げがあったそうです」
「なに⁉︎ まだ生きていたと言うのか⁉︎」
ガタンッと派手に音を立てながら立ち上がる国王。その顔には焦りが浮かんでいた。
「まさか、我らが探していたのを感づいたのか? だが、真名がある限り追跡可能であろう? 追跡が切れたのではなかったのか⁉︎」
「聖官達の見立てでは、新たな聖女が生まれたのではないか……と」
「バカか。普通の人間が魔の森に入れる訳がない」
「で、ですが冒険者なら可能です」
「ならばS級冒険者がそれに違い強さの者が聖女として覚醒したと?」
「はい。そうとしか考えられません」
王の放つ威圧にびっしりと脂汗を額に浮かべながら懸命に答える側近。
「分かった。だが、それはそれで好都合。ユリアの母親のように聖協会の手に渡る前に捕らえて能力を封印しろ。ユリアには逃げられたが、まあいい」
「かしこまりました。では真影部隊にも魔の森の人間を片っ端から捕まえてこいと伝令を送っておきます」
「うむ」
これが成功すれば、聖結界の心配もなくなる。聖協会の奴らもいい仕事をしてくれたものだ。1人残った王はニヤリと笑みを浮かべたのだった。
「魔の森にいるとお告げが出たようです」
ガレア王国に到着した聖協会の聖官達は、困惑した様子で話し合っていた。それもそのはず、自国から"聖女の存在位置が魔の森と表示された"と知らされたのだ。
「神聖紙が嘘をつく訳がない」
「なら、先程会われた聖女様は偽物ということですか?」
「いえ、妊娠していると聞きました。もうすでに力を失ったのでしょう」
「では、新たな聖女が誕生したと?」
「そう捉える方が賢明でしょう」
その間、聖官達をもてなしていた国王の側近は冷や汗をダラダラと垂れ流していた。
(魔の森だと⁉︎ 死んでいなかったのか! まずい、魔の森には魔石回収の為に真影部隊を派遣しておる。勝手に入ったとなれば只ではすまんぞぉ⁉︎)
「聖官様方。私はここいらで失礼させていただきます。力を失ったとは言え、聖女様は放っておけませんのでね」
今から元聖女の所へ向かうから邪魔するなと、言外に伝える。
「では、私たちもこれで」
それを読み取った聖官は用は済んだとばかりに席を立ち上がる。が、側近はそれを止めた。
「いえ、せっかく来ていただいたのに何もしないのでは我が国の面子が潰れてしまいます。この後の食事を楽しんでくれ、と我が王から伝言がありました」
一国の王の頼みとあっては断れるはずもない。
「では喜んで」
渋々また席についた聖官だが、その顔には焦りが浮かんでいた。
側近が出て行ったのを見計らって、聖官の1人が今回のまとめ役である聖官にこそっと耳打ちする。
「よいのですか? この国は聖女の魔石を悪用していると言う噂が以前から流れておりました。この事を知った今、既に魔の森に兵を差し向けているのでは?」
「いや、それは無いだろう。魔の森は大国が領土争いで互いに監視している。そこにこの小国が入ろうモノならただでは済まない。バカではない限り万が一のことは起こらないはずだ」
そこまで言ってからグッと眉間に皺を寄せる聖官。何故なら聖協会も手を出しにくい場所であることを改めて認識したからだ。
(最近、魔の森を狙っている大国どもが力をつけてきた。聖協会の権力が年々落ちている今、厄介なものよ。せめて聖女さえ確保できておれば……)
どこか、もどかしい気持ちを抱えながら聖官達は振る舞われた食事を食べるのだった。
○○○
一方、聖官達の話を聞き部屋を出た側近は、すぐに王の元へ向かった。
「私でございます」
「入れ。それで? 上手く騙せたか?」
「はい、ですが……」
「なんだ。不備でもあったのか」
「いえ、魔の森で聖女がいると先程お告げがあったそうです」
「なに⁉︎ まだ生きていたと言うのか⁉︎」
ガタンッと派手に音を立てながら立ち上がる国王。その顔には焦りが浮かんでいた。
「まさか、我らが探していたのを感づいたのか? だが、真名がある限り追跡可能であろう? 追跡が切れたのではなかったのか⁉︎」
「聖官達の見立てでは、新たな聖女が生まれたのではないか……と」
「バカか。普通の人間が魔の森に入れる訳がない」
「で、ですが冒険者なら可能です」
「ならばS級冒険者がそれに違い強さの者が聖女として覚醒したと?」
「はい。そうとしか考えられません」
王の放つ威圧にびっしりと脂汗を額に浮かべながら懸命に答える側近。
「分かった。だが、それはそれで好都合。ユリアの母親のように聖協会の手に渡る前に捕らえて能力を封印しろ。ユリアには逃げられたが、まあいい」
「かしこまりました。では真影部隊にも魔の森の人間を片っ端から捕まえてこいと伝令を送っておきます」
「うむ」
これが成功すれば、聖結界の心配もなくなる。聖協会の奴らもいい仕事をしてくれたものだ。1人残った王はニヤリと笑みを浮かべたのだった。
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