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「ん……」
明るい? それに暑い……
謎の穴に飲み込まれ、気絶していたハルは意識を取り戻し、ゆっくりと起き上がる。
その際に、コロンと自身の上から転がり落ちてきた物があった。
「……なにこれ」
恐る恐る手にとったそれは、粗い紙のようなモノを丸めて粘土でくっつけた……
古代エジプトの手紙っぽいね。
ペリッとおもむろに粘土を剥がし、中身を読んでみることにしたハル。
「えーっと?」
【拝啓、ハル様。
貴方は私に転生しました。
私は監禁されそうになって逃げているのですが、もう嫌になりました。
私は貴方に転生して、楽しむことにします。
あ、ちゃんと記憶も渡しているので頑張って逃げ切ってください。
by元ヒロイン】
(※ちなみにこの世界はハル様がやっていた乙女ゲームの世界ですよ)
とご丁寧に説明してくれている手紙を読んだハル。
少しの間、状況が読み込めなくて静止していた。再起動したハルは、手紙を持ったまま絶叫したのだった。
「っえ"ーーーーーーーーーー!?」
ウッソでしょ!? あの乙女ゲームの監禁ルートってもう既に詰んでね?
頭を占めるのはハルが以前やった時の監禁ルートの映像。
手枷を嵌められ、ぐったりするティティナ(ヒロイン)をこの国のファラオであるクフ王が満足げに眺める場面。
「いやいやいやいやいや、王から追われる身でどうやってここまで逃げた!?」
思わずツッコミを入れてしまうハル。そりゃそうだ。何故なら監禁ルートに入ってしまったが最後、ティティナには常時監視がつくようにされるからだ。
「逃げたら見つかって監禁じゃん、詰みじゃん」
がっくりと項垂れたハルだが、ある事に気づく。
「ん? あ、布があるんだ。これで姿を隠して逃げたのかな?」
どこにでもありそうな普通の布。ヒロインであるティティナはアルビノであり、多分その白い髪を隠す為に巻いたのだろう。
今は取れているが、ハルの肩口からサラリと零れ落ちる白い髪は、太陽に照らされて白銀のようにキラキラと光っていた。
なんちゅう綺麗な髪や……
感心して見ていたハルだが、その呑気な時間は長くは続かなかった。ティティナを追っていた兵士がやって来たのである。
「こっちからティティナ様の声が聞こえたぞーーーー!」
「げっ⁉︎」
慌てて髪を纏めて布を被せ、クルリと後ろを向く。
「あ、肌が白すぎてバレる!」
もう一度布を解き、今度は体全体を包むようにして布を巻きつけたハル。ほとんどミノムシ状態だった。
「なんで私がこんな目に……」
ガックリと項垂れるハルだが、兵士達の足音が近づいてくる事に内心ドキドキしていた。
ガサガサと草の生い茂った茂みを掻き分けこちらに近づいてくる。
「おい、そこのもの」
み、見つかったーーーーーーーーーー!
「返事をしないか!」
「なんでしょう」
ティティナの声は高く透き通っている。それを利用して、ハルはできる限り低い声を出した。
「……ティティナ様がこの様な声を出されるはずがない。うむ、なんでもない」
そう言って去っていく兵士にホッと息を吐くハル。しかし、一難去ってまた一難という、ことわざがあるのをご存知だろうか?
先程の光景を別の方面から見る者がいたのである。
明るい? それに暑い……
謎の穴に飲み込まれ、気絶していたハルは意識を取り戻し、ゆっくりと起き上がる。
その際に、コロンと自身の上から転がり落ちてきた物があった。
「……なにこれ」
恐る恐る手にとったそれは、粗い紙のようなモノを丸めて粘土でくっつけた……
古代エジプトの手紙っぽいね。
ペリッとおもむろに粘土を剥がし、中身を読んでみることにしたハル。
「えーっと?」
【拝啓、ハル様。
貴方は私に転生しました。
私は監禁されそうになって逃げているのですが、もう嫌になりました。
私は貴方に転生して、楽しむことにします。
あ、ちゃんと記憶も渡しているので頑張って逃げ切ってください。
by元ヒロイン】
(※ちなみにこの世界はハル様がやっていた乙女ゲームの世界ですよ)
とご丁寧に説明してくれている手紙を読んだハル。
少しの間、状況が読み込めなくて静止していた。再起動したハルは、手紙を持ったまま絶叫したのだった。
「っえ"ーーーーーーーーーー!?」
ウッソでしょ!? あの乙女ゲームの監禁ルートってもう既に詰んでね?
頭を占めるのはハルが以前やった時の監禁ルートの映像。
手枷を嵌められ、ぐったりするティティナ(ヒロイン)をこの国のファラオであるクフ王が満足げに眺める場面。
「いやいやいやいやいや、王から追われる身でどうやってここまで逃げた!?」
思わずツッコミを入れてしまうハル。そりゃそうだ。何故なら監禁ルートに入ってしまったが最後、ティティナには常時監視がつくようにされるからだ。
「逃げたら見つかって監禁じゃん、詰みじゃん」
がっくりと項垂れたハルだが、ある事に気づく。
「ん? あ、布があるんだ。これで姿を隠して逃げたのかな?」
どこにでもありそうな普通の布。ヒロインであるティティナはアルビノであり、多分その白い髪を隠す為に巻いたのだろう。
今は取れているが、ハルの肩口からサラリと零れ落ちる白い髪は、太陽に照らされて白銀のようにキラキラと光っていた。
なんちゅう綺麗な髪や……
感心して見ていたハルだが、その呑気な時間は長くは続かなかった。ティティナを追っていた兵士がやって来たのである。
「こっちからティティナ様の声が聞こえたぞーーーー!」
「げっ⁉︎」
慌てて髪を纏めて布を被せ、クルリと後ろを向く。
「あ、肌が白すぎてバレる!」
もう一度布を解き、今度は体全体を包むようにして布を巻きつけたハル。ほとんどミノムシ状態だった。
「なんで私がこんな目に……」
ガックリと項垂れるハルだが、兵士達の足音が近づいてくる事に内心ドキドキしていた。
ガサガサと草の生い茂った茂みを掻き分けこちらに近づいてくる。
「おい、そこのもの」
み、見つかったーーーーーーーーーー!
「返事をしないか!」
「なんでしょう」
ティティナの声は高く透き通っている。それを利用して、ハルはできる限り低い声を出した。
「……ティティナ様がこの様な声を出されるはずがない。うむ、なんでもない」
そう言って去っていく兵士にホッと息を吐くハル。しかし、一難去ってまた一難という、ことわざがあるのをご存知だろうか?
先程の光景を別の方面から見る者がいたのである。
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