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8.完
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「おかしいですわ! 絶対おかしいですわ‼︎」
何故ヒロインとくっつかないーーーーーー⁉︎
乙女ゲームが始まってから数ヶ月、そろそろ王子とヒロインがくっついてもいい時期になっているのに、未だにその前兆がない。
いつものように膝に乗せられる俺。
「お・は・な・し・になってくださいまし‼︎」
「なにがおかしいのか説明してくれたら降ろしてあげる」
「だから何度も言っていますでしょう! 私ではなく『ユア様(※ヒロイン)と結婚してくださいまし!』と‼︎」
髪に頬を埋められる感触にゾワっとしながら、俺は懸命に抗議する。
「ああ、その子は今グルーシスと恋仲になってるらしいよ? まあ、結構前からだけど」
「はい? 何ですって⁉︎」
グルーシスと言えば、ヒロインの幼馴染で乙女ゲームの悪役。つまり、俺と同じ立場じゃなかったのか⁉︎
「ああ、確かユアって子は"グルーシス様尊すぎ!"とか言ってたな」
お前もかぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
腹黒サイコパス王子の言葉に俺は内心絶叫した。"尊い"などという言葉はこの国には存在しない。とすれば、ヒロインは転生者、記憶持ちしかいないのである。
つまり、俺の逃げ道は塞がれた。
お、終わった…………
「ふふ、エラのその顔私は好きだよ。絶望感に満ちたその顔。でも、私は笑顔も見てみたいかな。あんまりみてないから……」
さわりと腹に回された手が動く。
俺の未来が決定した瞬間だった。
「ねぇエラ。私は君に言われた通り我慢したよ? もういいでしょう? 私はそこまで気が長い方じゃないんだ」
スルリと上がってくる手にグイッと顎を掴まれる。
「おはにゃしくだしゃい」
「エラ? もう乙女ゲームは終わるはずなんでしょう? でも私はエラの側にいる。ね、聡明なエラならその意味わかってるんじゃない? 私の性格も知ってるんでしょう?」
確かに知っている。腹黒サイコパス王子だが、もっと厄介な物もついていた。そう、執着が凄いのだ。ゲームでも、中途半端に王子の好感度を上げて他の攻略者対象に行くと何故か王子に拉致られて監禁エンドになっていた。
それも嫌だから逃げたかったんだ! ヒロインであんなに酷い対応をされるんだったら俺はどうなる⁉︎ 悪役令嬢だぞ⁉︎
「まだ私から逃げようとするの?」
「んぅ⁉︎」
すうっと冷たい目になった王子に乱暴に口付けられる。
ああああ……男と……
ぬるりとした物が唇を舐める。今までも触れるだけだがキスをされていた俺はソレが何なのか一瞬わからなかった。
え? 何だよこれ。まさか……⁉︎
驚愕に目を見開く俺に王子の唇がつり上がっていく。スルッと空いた手で背中を撫でられびくつく俺。
「ひっ⁉︎ っっ⁉︎」
思わず開けてしまった口にそれは入ってきた。チュッと舌に吸いつかれ、息が止まる。次第にそれは大胆にも俺の口内を蹂躙し出した。
「んっぅ⁉︎ やっ! やらぁ‼︎」
ぶんぶんと首を振り、逃れようとするが、反対の手でガッチリと後頭部を固定され動けなくなる。
お、俺、ディープキス? してる⁉︎
「はぁ、ご馳走様。ふふ、私はね何度も言うようだけど中身が男だからとかなんとかは関係ないんだよ? 君だからイイんだ。ね? ほら、君もそろそろ折れないと。私が怒ったらどうなるか知ってるんでしょう?」
「はぁはぁ……っ!」
にんまりと笑みを浮かべる王子を見て、俺の勘は警報を鳴らしていた。
ある程度自由に暮らしたかったら頷け! と。
「ううう……」
「実はもう結婚式の準備も済んでるんだ。だからもう諦めようか。ねぇエラ?」
「いっ⁉︎」
耳たぶを食まれ、吐息と共に注ぎ込まれる言葉に逃れようがないのを悟る。
"一国の王子の結婚式がもうすでに準備が整っている"この言葉には言外に「もう逃げられないぞ」と言われているようなものだった。
終わった……
こうして俺は悪魔に捕まったのだった。
○○○
「新国王陛下! 王妃様‼︎ バンザーイ‼︎」
「おめでとうございます!」
あちこちから祝福の言葉がかかる。俺は王子の腕の中でげっそりとしていた。
「ほら、笑顔笑顔」
ムニッとつままれる頬をそのままに俺は結婚を承諾した時のことを思い出していた。
『ああ、やっと捕まえた! もう、私から逃げようなんて思わないようしっかりと愛でてあげる』
腹黒サイコパス王子には珍しい満面の笑みで紡がれたその言葉通り俺は、王宮に連れ去られ結婚式までずっと王子に寝室から出してもらえなかった。
『も、やだ! 助けて! 誰か‼︎』
『ふーん、まだそんな元気があったんだね。ダメだよ、他の人に助けを求めるなんて』
最初は大人しくしていた俺も、王子のあまりの絶倫さに何度も悲鳴をあげて逃げようとした。その度にベットに組み敷かれ貪られる日々。その結果、俺は悟った。これ、絶対遊ばれてる、と。
その考えの通り、俺が逃げようとしなくても王子は普通に俺を抱き潰した。今日、俺が王子の膝の上にいるのもただ単に足腰が立たないせいである。
「今度殿下には私の料理を食べさせて差し上げますわ」
グイッと顔を近づけてきたウルアをギロッと睨みつける。
特製青野菜ジュースを飲むがいい! この世界にはミキサーが無いからな! もしかしたら野菜の塊もあるかもしれないが俺は知らん‼︎
「そうか、それは楽しみだな」
ニコッと笑みを浮かべるウルア。その顔はとてもイケメンだった。
俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男!
少し誘惑されかけた優希なのであった。
○○○
この後、歴史に名を残す賢王となる。傍には美貌の王妃がおり、その王妃も有能だったとか。また、歴史書にはウルア王は愛妻家とも記されており、5人の子供と王妃を抱きしめる絵も残っているとか。それから、ウルア王は毎朝王妃の作った青汁とやらを飲んでいたらしい。「私のために、一生懸命野菜潰す姿がいじらしくて可愛いんだ」と言う名言が残っているーー
【完】
何故ヒロインとくっつかないーーーーーー⁉︎
乙女ゲームが始まってから数ヶ月、そろそろ王子とヒロインがくっついてもいい時期になっているのに、未だにその前兆がない。
いつものように膝に乗せられる俺。
「お・は・な・し・になってくださいまし‼︎」
「なにがおかしいのか説明してくれたら降ろしてあげる」
「だから何度も言っていますでしょう! 私ではなく『ユア様(※ヒロイン)と結婚してくださいまし!』と‼︎」
髪に頬を埋められる感触にゾワっとしながら、俺は懸命に抗議する。
「ああ、その子は今グルーシスと恋仲になってるらしいよ? まあ、結構前からだけど」
「はい? 何ですって⁉︎」
グルーシスと言えば、ヒロインの幼馴染で乙女ゲームの悪役。つまり、俺と同じ立場じゃなかったのか⁉︎
「ああ、確かユアって子は"グルーシス様尊すぎ!"とか言ってたな」
お前もかぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
腹黒サイコパス王子の言葉に俺は内心絶叫した。"尊い"などという言葉はこの国には存在しない。とすれば、ヒロインは転生者、記憶持ちしかいないのである。
つまり、俺の逃げ道は塞がれた。
お、終わった…………
「ふふ、エラのその顔私は好きだよ。絶望感に満ちたその顔。でも、私は笑顔も見てみたいかな。あんまりみてないから……」
さわりと腹に回された手が動く。
俺の未来が決定した瞬間だった。
「ねぇエラ。私は君に言われた通り我慢したよ? もういいでしょう? 私はそこまで気が長い方じゃないんだ」
スルリと上がってくる手にグイッと顎を掴まれる。
「おはにゃしくだしゃい」
「エラ? もう乙女ゲームは終わるはずなんでしょう? でも私はエラの側にいる。ね、聡明なエラならその意味わかってるんじゃない? 私の性格も知ってるんでしょう?」
確かに知っている。腹黒サイコパス王子だが、もっと厄介な物もついていた。そう、執着が凄いのだ。ゲームでも、中途半端に王子の好感度を上げて他の攻略者対象に行くと何故か王子に拉致られて監禁エンドになっていた。
それも嫌だから逃げたかったんだ! ヒロインであんなに酷い対応をされるんだったら俺はどうなる⁉︎ 悪役令嬢だぞ⁉︎
「まだ私から逃げようとするの?」
「んぅ⁉︎」
すうっと冷たい目になった王子に乱暴に口付けられる。
ああああ……男と……
ぬるりとした物が唇を舐める。今までも触れるだけだがキスをされていた俺はソレが何なのか一瞬わからなかった。
え? 何だよこれ。まさか……⁉︎
驚愕に目を見開く俺に王子の唇がつり上がっていく。スルッと空いた手で背中を撫でられびくつく俺。
「ひっ⁉︎ っっ⁉︎」
思わず開けてしまった口にそれは入ってきた。チュッと舌に吸いつかれ、息が止まる。次第にそれは大胆にも俺の口内を蹂躙し出した。
「んっぅ⁉︎ やっ! やらぁ‼︎」
ぶんぶんと首を振り、逃れようとするが、反対の手でガッチリと後頭部を固定され動けなくなる。
お、俺、ディープキス? してる⁉︎
「はぁ、ご馳走様。ふふ、私はね何度も言うようだけど中身が男だからとかなんとかは関係ないんだよ? 君だからイイんだ。ね? ほら、君もそろそろ折れないと。私が怒ったらどうなるか知ってるんでしょう?」
「はぁはぁ……っ!」
にんまりと笑みを浮かべる王子を見て、俺の勘は警報を鳴らしていた。
ある程度自由に暮らしたかったら頷け! と。
「ううう……」
「実はもう結婚式の準備も済んでるんだ。だからもう諦めようか。ねぇエラ?」
「いっ⁉︎」
耳たぶを食まれ、吐息と共に注ぎ込まれる言葉に逃れようがないのを悟る。
"一国の王子の結婚式がもうすでに準備が整っている"この言葉には言外に「もう逃げられないぞ」と言われているようなものだった。
終わった……
こうして俺は悪魔に捕まったのだった。
○○○
「新国王陛下! 王妃様‼︎ バンザーイ‼︎」
「おめでとうございます!」
あちこちから祝福の言葉がかかる。俺は王子の腕の中でげっそりとしていた。
「ほら、笑顔笑顔」
ムニッとつままれる頬をそのままに俺は結婚を承諾した時のことを思い出していた。
『ああ、やっと捕まえた! もう、私から逃げようなんて思わないようしっかりと愛でてあげる』
腹黒サイコパス王子には珍しい満面の笑みで紡がれたその言葉通り俺は、王宮に連れ去られ結婚式までずっと王子に寝室から出してもらえなかった。
『も、やだ! 助けて! 誰か‼︎』
『ふーん、まだそんな元気があったんだね。ダメだよ、他の人に助けを求めるなんて』
最初は大人しくしていた俺も、王子のあまりの絶倫さに何度も悲鳴をあげて逃げようとした。その度にベットに組み敷かれ貪られる日々。その結果、俺は悟った。これ、絶対遊ばれてる、と。
その考えの通り、俺が逃げようとしなくても王子は普通に俺を抱き潰した。今日、俺が王子の膝の上にいるのもただ単に足腰が立たないせいである。
「今度殿下には私の料理を食べさせて差し上げますわ」
グイッと顔を近づけてきたウルアをギロッと睨みつける。
特製青野菜ジュースを飲むがいい! この世界にはミキサーが無いからな! もしかしたら野菜の塊もあるかもしれないが俺は知らん‼︎
「そうか、それは楽しみだな」
ニコッと笑みを浮かべるウルア。その顔はとてもイケメンだった。
俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男俺は男!
少し誘惑されかけた優希なのであった。
○○○
この後、歴史に名を残す賢王となる。傍には美貌の王妃がおり、その王妃も有能だったとか。また、歴史書にはウルア王は愛妻家とも記されており、5人の子供と王妃を抱きしめる絵も残っているとか。それから、ウルア王は毎朝王妃の作った青汁とやらを飲んでいたらしい。「私のために、一生懸命野菜潰す姿がいじらしくて可愛いんだ」と言う名言が残っているーー
【完】
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ウルアいい!
青汁ぐびぐび飲む王子様とかもう惚れるしかないやないですか(笑)
確かにそうですね🤣
最後までお読みいただきありがとうございましたm(__)m