魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第3話 人生が変わった日

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「第7の柱、アモン、焼き尽くせ!」

ジェイソンさんがそう叫んだ瞬間、毒々しい色の炎が足元の魔法陣から吹き上がり、目の前のウインドウルフを焼き尽くした。けれども周りの木々は無傷だしウルフは死んでおらずぐったりと力を失っている。これが能力を下げる魔法ってこと?

「本当に焼かれたくなければ失せることだな」

現れたときは今にも襲いかかってきそうだったウインドウルフたちがキャイン……と力なく鳴いている。ジェイソンさんたちはそんなウインドウルフを横目に通り過ぎていった。もちろん俺も置いていかれては生きて帰れないのでついて行く。

「ジェイソンお前やってんなぁ」
「俺もそう思う。ちょっとやりすぎた」
「後輩に良いとこ見せたくなっちゃった?」
「お前らが煽るからだろ」

ケビンさんはジェイソンさんをからかっているが、メアリーさんは気まずそうだ。さっきまでにこにこ話してたのに黙り込んでいる。

「メアリーさん?」
「あ、アインくんごめんね、考えごとしてたの」
「てっきりジェイソンさんの魔法にドン引いているのかと」
「あはは、確かにね。ジェイソンの魔法ってこんな感じだよ、気味悪いでしょ」
「メアリーまで言うか」

ジェイソンさんはやりすぎたなぁと頭をかいて先へ進んでいく。一方、ケビンさんは考え込んでいるメアリーさんに話しかけた。

「メアリー、なんか考え込んでるみたいだけど、ウルフの様子、なんかいつもと違ったか?」
「うん、今までは偵察っぽかったけど、今日はこっちに襲いかかってきてたから」
「3回目だからなー。覚えられてんのかもな」
「そうだといいけど……」
「他に何か原因が?」
「他の魔道士に操られているかもと思って。ジェイソンみたいに……まあ、ジェイソンが操るのは死体だけどね」
「他の魔道士が噛んでるってことか?」
「とにかく、群れのリーダーに聞いてみないとわからないね」
「よしきた。奥に進もう」

俺たち一行が森の奥に足を進めているとき、かすかに別の足音が聞こえた気がした。気のせいか?

道中、数匹のウインドウルフが群れで何回か襲いかかってきたが、その度にケビンさんとジェイソンさんが追い払ってくれた。俺はというと、ケガしないように身を守るので精一杯だ。

「アイン大丈夫か?しんどくなったらすぐ言えよ」
「大丈夫です!」
「ウインドウルフをやっつけるのは俺らに任せとけ。な」
「は、はい」
「ついて来られるだけ大したもんだよ。さすがスライム退治のMVPだ」

ジェイソンさんに褒められて、俺は嬉しくなってしまった。学校でもこんなに持ち上げられることは滅多にない。

森の奥にたどり着くと、ひときわ大きなウインドウルフが他のウルフに囲まれていた。こいつが群れのリーダーだろうか?

ウインドウルフのリーダーはジェイソンさんたちを見るやいなや立ち上がって、ゆっくりと歩み寄ってきた。敵意はなさそうだ。

「またお前たちか。配下が迷惑をかけたな」
「あ知ってるんですね」
「こら、アインくん」

ウインドウルフのリーダーがこの事態を把握してることについ驚いて余計なことを言ってしまった。普通にメアリーさんに小突かれた。すいません……。

「何度も申し訳ない。最近この森の魔力の巡りがおかしくてな、先日は妙な魔道士の影もあって」
「妙な魔道士?」
「あっ……もしかして」
「アイン、何か知ってるの?」
「ここを進む時に別の人の足音がしたから、俺たちの他に誰かいるかもなと思って」
「えっ……なにそれ!じゃあそいつがウインドウルフに細工して暴れさせてたってこと?だとしたらひどい話ねえ」
「確証はないな、もともと魔力の巡りもおかしいし、そのせいもあるかもしれない」

メアリーさんはひどく怒っているようだった。害獣扱いされているとはいえ、ウインドウルフ……というか動物のことが好きなんだろう。ジェイソンさんはさすが隊長といった感じで、冷静だ。

肝心のウインドウルフのリーダーは申し訳なさそうにうつむいている。ジェイソンさんたちと普通に意思疎通できてるみたいだし、襲いかかってきたたくさんのウインドウルフ達と本当に同じ生き物か疑いたくなるくらいだ。

「どっちにしてもそちらさんも俺たちも困っちゃう話だ。俺の使い魔を守護に置いていくんで使ってやってくれ」
「ありがたい。その使い魔はいつお前の元へ返したら良いのだ?」
「そちらさんに差し上げますよ」

そう言うと、ケビンさんは妖精さんを呼び出してウインドウルフの方へ連れていき、呪文を唱えて守護の魔法をかけた。召喚士っていろいろなことができるんだな。

「そしたらみんな、帰ろうか。妙な魔道士の件は引っかかるが、なにしろ手がかりがない。今後の申し送り事項ってことにしておこう」

ジェイソンさんがそう言うころにはとっぷりと日が暮れていた。

森を抜け、平原を出て俺たちはラドニールの市街地に帰り、ジェイソンさんたちが夕飯を奢ってくれた。

「ジェイソンさん、メアリーさん、ケビンさん、今日はありがとうございました。ご飯までご馳走になってしまって……」
「お礼を言いたいのはこっちだぜ、アイン!ありがとな」
「ケビンの言う通りだ。これくらいさせてくれ」
「アインくん、疲れたでしょう。明日に響くといけないから、疲労回復の魔法をかけておくね」
「すみませんメアリーさん、ありがとうございます」
「どうだった、初めての任務は……って、昨日スライム退治の任務はやってるから2回目かな?」
「やっぱり先輩たちは凄いです。日々の鍛錬の賜物なんでしょうね」
「やだなー、お上手!アインくんだって十分すごいよ!私今日ほとんどアインくんに回復魔法使ってないもん」
「アイン、きみずいぶん立ち回りのセンスがあるんだな」
「いやそんな俺は邪魔にならない場所に逃げ回ってただけで」
「それが案外難しいんだよ。アインは自分が戦うってなってもうまく立ち回れるだろうね。一緒に訓練するのが楽しみだ」
「そういえばアイン、お前ものすごい啖呵切って入隊宣言してたよな。明日ちゃんと採寸して隊服仕立てようぜ」
「かっこよかったよ、入隊宣言してるアインくん」
「うっ……」
「なんで気まずそうなんだよ、俺たち嬉しかったんだぜ!」

メアリーさんにもジェイソンさんにも、ケビンさんにもめちゃめちゃ褒めちぎられて、なんだかくすぐったい気持ちになった。

「アイン、もう今日は遅いし送ってくぜ」
「そうだなケビン。頼んだ」
「そ、そんなわざわざ……ありがとうございます」

帰り道、ケビンさんはいろいろな話をしてくれた。召喚士のカリキュラムは他の魔法使いと違うこと、ケビンさんたち3人はものすごい成績優秀者らしいこと (俺は目が回るかと思った)、それから、ケビンさんの話しぶりからして、どうやらもう1人隊員がいたらしいこと……。

「そういえばケビンさんが前に言っていた魔法生物に詳しい人ってメアリーさんのことだったんですか?」
「いや?違うよ」
「じゃあジェイソンさん……?」
「いやジェイソンでもない。リ……アイツはもういないんだよな。このことは他の2人には聞くなよ、ちょっと話がこみいってて面倒なんだ。そのうちアイツらから話す時が来ると思うし」
「は、はぁ」
「そんな事よりさぁ、アインお前ずいぶん自信なさげだけど本当は成績めっちゃ良いだろ」
「んなわけないでしょ!……です!中くらいですよ中くらい」
「フーン」
「なんでそうみなさん俺の事を持ち上げるんですか、びっくりですよほんと」
「事実お前はちゃんとできてるんだよ、演習授業でもあそこまで動ける奴はそうそういないぜ。自信持てよ、ちゃんと自信がついてると思い通りに動きやすくなるからな」
「が、頑張ります」
「で、自信つけてセリアちゃんとも仲良くなれ、な!」
「んなっ……なんでそこでセリアが出てくるんですか!」

ケビンさんはニヤニヤと俺をからかってくる。絶対面白がってるじゃん。

「おじさんはね~、うだうだ片想いしてる子の背中を押したくなっちゃうんだよ」
「ケビンさんもまだ若いでしょ!なにがおじさんですかっ」
「間違ってもメアリーには手を出すなよ」
「出しませんよ!!なんで急に真顔になるんですかおっかないですね!メアリーさんに事情でもあるんですか?!ケビンさんの彼女とか??」
「ちげーよやめてくれ、俺とジェイソンの妹分だから手を出されるとムカつくってだけ。アインにはセリアちゃんという子がいるんだから」
「?????」

急に釘をさすので驚いたが理由がしょうもない。本当にこの人はおじさんくさい。

「……それはそうとっ、ケビンさんには恋人とかいないんですかっ」
「今は俺フリーなの。彼女募集中~。でもまあこの仕事だからな、なかなか出会いはないよね!妖精とはめちゃめちゃ出会ってるけど」

ウケていいのか分かりづらい召喚士ジョークを数回飛ばしつつ、ケビンさんは俺を家 (に続くテレポート駅)まで送ってくれた。

「アイン、今日はお疲れ!また明日の放課後、今日と同じ建物な。隊服仕立てなきゃだから。隊服って言うけど、ちゃんとした装備だからマジで来いよ、今日みたいにペラペラの制服で戦場に出てるとそのうちガチで死ぬからな」
「は、はい」
「あ、あとニルドラ先生には俺らの方から連絡しとくわ。授業とか調整入れる必要があるかもしれないし、あと単位出るし」
「あ、ありがとうございます。俺からは……」
「とりあえず明日はいいや。先生からなんか言われたら対応、って感じでいいよ」

そんなこんなで、俺、アイン・ビロクシスはラドニール魔法部隊の隊員になったのだった。


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