魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第6話 プロビンス村に神様が?!

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「へえーっ、ここがアインくんの地元かぁ」
「それで、入隊希望のお宅に行くんですよね。おおかたあの新築でしょう」
「さっすがアイン。地元に詳しい奴がいると助かるぜ」

俺はアイン・ビロクシス。ラドニール魔法部隊に入りたての高校2年生。
今日は部隊の入隊希望者からの依頼で、部隊総出で訪問だ。

「あれっ、アインじゃないか。あれから見かけないと思ったら、ラドニール魔法部隊に入ったんだってな!」
「あっ、おじさん」
「この人達が先輩……ああいや、上司?」
「お久しぶりです。また困ったことがあったら気軽に依頼してくださいね」
「ああ!こないだのスライム退治のお兄さん!あの節はお世話になりました」

俺の地元のプロビンス村はそりゃもう狭い田舎町なので、見慣れぬ人間はとりあえず捕まる。今日は俺がいるので俺をとっかかりにして、いろんな村人が殺到してきた。

ぶっちゃけ、訪問どころの騒ぎじゃない。

「アインー!人気者だねっ」
「……セリア、学校ぶりだな」
「やだなぁ、何よっ、そのよそよそしい態度は」

俺としてはこの状況をジェイソンさんかケビンさんに発見されると気まずいのだが、これをきっかけにすると本来の目的であるところの訪問に話題を変えられる……

どうしよう。俺が恥をかけば解決かな。

俺も部隊に入ってずいぶん肝がすわったらしい。ケビンさんあたりに気づかれるまで、セリアと話をしつつ本来の目的であるところの訪問先について聞きこむことにした。

「今日は部隊に入りたいって人の依頼で俺たち総出で訪問に来てるんだ」
「へーっ。ああ、じゃあもしかしてあの新築の人かな?」
「俺もそうかなと思って」
「そういえばさぁ、アインは部隊に入ってから寮生活かなにか?」
「うん、部隊の規律で」
「そうなんだ。すごいねえ」

ジェイソンさん、ケビンさん、見つけてくれ。この際メアリーさんでもニルドラ先生でもいい。割り込んでくれ。

「ありゃ。アインくん、そちらはどなた~?」
「メアリーさん!セリアです、この間お話しした幼なじみの」
「アイン、部隊の先輩?」
「うん」
「はじめまして。早速お尋ねしたいのだけど、このあたりで金髪の背の高いお兄さんが引っ越してきてたりしません?」
「ああ、ちょうどアインとその話をしてたんです。あの新築かなと思いますよ」
「そうなんだ。どうもありがとう!」
「いいえ~、任務がんばってください!」
「ケビン!ジェイソン!!いつまでも油を売ってないで行くよ!」

メアリーさんはさらっとジェイソンさんとケビンさんをつかまえて例の家まで向かっていく。

もしかしたら、部隊でいちばんのしっかり者はあの人なのかもしれない……

「アインくん、あの子……セリアちゃんと本当に何もないの?」
「見りゃ分かるでしょう、あれですもん」
「やめてよ、私が泥棒猫になっちゃうじゃない。いい子だよね、大事にしなよ?」

メアリーさんの釘の刺し方がいちばん痛いかもしれない。俺の振る舞い次第でケビンさんにも袋叩きにされそうだ。

件の新築を訪ねると、中から出てきたのはメアリーさんよりもひとまわり小さい女の子だった。新婚というか子連れってこと?

「ああ、カナウスの。お待ちしてましたわ、中にどうぞ」

室内は外から見た様子を疑うほど広く、軽く豪邸だった。物体魔法だか空間魔法の最新技術でも使っているのだろうか。

「おお、君たちがラドニール魔法部隊か。私はカナウス。入隊希望を出して君たちに来てもらったのはほかでもない、私が入隊するのにふさわしいか判断したくてな」
「カナウス……って、ラドニール八神の一柱と同じお名前なのですね」

メアリーさんがすかさずはさみこんだ。どおりでどこかで聞いた名前なわけだ。

ラドニール八神はちしんはこの世界を作った偉大な神と言われていて、ラドニール魔法学園では必ず習う超有名な存在だ。

「当然だ。私自身がそのラドニール八神の一柱であり父であるカナウスそのものだからな。こちらは私の妻、ルナだ」
「ごめんなさいね、うちのカナウスが無理を言って」

そう言ってカナウス様が肩を抱いているのが、さっき迎え入れてくれた女の子だった。娘じゃなくて妻、しかも神様かよ。

意味のわからないことしか起きておらず、俺はあっけにとられて何も言えない。どうにか会話をしようとしているメアリーさんには頭が上がらない。

そしてもう一人の頭の上がらない存在、隊長としてきちんと仕事をするジェイソンさんがそれはそれとして……とでも言いたげに口を開いた。

「……それで、カナウス様」
「カナウスと呼び捨てでよい。私はラドニールの守護神だからな。君たちに加護を与える気でいるのだよ」
「ではカナウス。判断とは何を?」
「外を見てみなさい」
「外を?」

窓から外を見てみると、そこはプロビンス村ではなく雲の上だった。

「え……ここどこ?」
「ここは私たちの家……天空界だよ。プロビンス村はちょうどラドニールと距離もあって接続するのに都合がよくてな」
「都合いいんですか?テレポート使わないと通学もままならないのに」
「そのくらい距離がある方が良いのだ少年よ。君、名前は」
「アイン・ビロクシスです……」
「ではアイン少年。君たちはこれから天空界におもむいてもらおう。再び私と会えれば試練合格とする。では、最善を尽くすのだぞ」
「試練って何……」

俺が聞くより先にカナウス様は何かの魔法を使い、俺たちを家から天空界に放り出した。有無を言わさないこの傲慢な感じ、確かに教科書通りのカナウス様だけど!

気がつくと、辺り一面は雲の絨毯で、無駄に見晴らしがいい。

「アインくん、気がついた?」
「あ、メアリーさん」
「よかったぁ、あのね、今のところ私たちだけ。ジェイソンもケビンもセインもはぐれちゃった」
「試練ってそういうことですか」
「ぜんっぜんわかんない!あの神様やばいよ、何がいるのかわかんないのに。私たちが死んだらどうするつもりなのかしら」

「おにいちゃん、アインっていうの?」

どこからともなく聞いた事のない声がして、俺とメアリーさんは飛び上がった。もう何が起きても命の危機だ。

声の主は小さな魔法生物だった。お世辞にも襲いかかってきそうな姿ではない、はんぺんにペンで雑に手足を描いたような見た目をしている。

「アインくん下がって、何が起きるか分からないから」
「ちがうよう、いじめないで!あたしが守ってほしいくらいなのに!」
「……この見た目……もしかしてシノリディアン?」
「そうだよ!ツリーアニマルっていうの、ツリーってよんで!」
「ツリー、あなたはここに住んでるの?」
「ちがうよ?そこのおにいちゃんについてきたの」
「……アインくん、だめだよこんな貴重な魔法生物連れてきちゃ。本物のシノリディアンなんて初めて見たよ私」
「俺も知らないですよ!なんなんですかこいつ」
「無理もないかぁ。シノリディアンって、成長とともに魔力をたくわえて姿が変わる超珍しい魔法生物だよ。むかしは魔法使いのステイタスみたいな扱いでペットみたいな存在だったんだけど、そのせいで詳しい生態も知らないくせに30年前くらいに乱獲されまくって絶滅危惧種」
「く、詳しいですね」
「リリアの受け売りだよ。アインくん、おおかたジェイソンあたりから聞いたでしょ?リリアの話」
「……は、はい。ジェイソンさんから聞きました」
「リリアは私の幼なじみでもあったの。私、もうあんなふうに仲間を喪うのはごめんだよ。だからアインくんは絶対死なないで。絶対生きて全員合流しよう」
「……はい!」
「ねえ、ツリーは?あたしはどうするの?」
「ついてきたいなら来ればいいんじゃないかな」
「アインくん、間違ってもこの子をかばって怪我したりしないでよ」
「もちろんですって」

いまひとつ頼りにならなさそうな仲間を加えて、俺とメアリーさんで他の仲間を探しに出る。幸か不幸か、天空界は見晴らしがいいので敵の襲来が分かりやすく、鳥のような魔物がちょっかいをかけてくる。メアリーさんは回復魔法使い、ツリーアニマルは正体不明。

ここは俺がしっかりしなければ。いつまでも先輩に頼りきりという訳にはいかないし、メアリーさんに迷惑をかけようものなら俺がケビンさんとジェイソンさんに顔向けできない。

鳥のような魔物がこちらを敵意を向けてきた。光の刃のようなものが飛んできて、メアリーさんは身軽にかわす。ツリーアニマルもひょいひょいとかわしており、とりあえず気にかける必要はなさそうだ。俺は照準を合わせて炎の魔法を放った。

ここ最近の特訓の成果か、魔法は勢いよく矢のように魔物に飛んでいき、無事命中した。魔物はひるんで、空中でしばし旋回した。

もう一度……と照準を合わせていたところ、背後からものすごい物量の魔力が放たれた。

魔力が魔物に命中するや、魔物はあとかたもなくはじけとんでしまった。

俺が驚いて後ろを見ると、やはりというか、魔力の発射元はメアリーさんだった。

「メアリーさん、攻撃魔法も使えたんですね」
「ううん、これは単純に魔力をぶつけてるだけだから攻撃魔法とかではないよ」
「魔力をそのままぶつけるって疲れません?できる範囲にはなりますけど、俺が攻撃を担当しますよ」
「大丈夫。私、最大魔力が2メガリプルはあるんだ」
「メガリプルぅ!?」

メガリプルとかいう魔力単位は初めて聞いたぞ。俺はまだ80キロリプルまでしか貯められないし……

魔法使いが体内に貯められる魔力はリプルという単位で数えられ、メアリーさんの話を信じるとすると俺がめちゃくちゃ頑張って貯められる量の25倍の魔力を貯められるらしい。

メアリーさんひとりでアイン・ビロクシス25人分である。もはや特異体質まである。

「まあ、魔力も有限だもんね。あの鳥の魔物くらいだったらアインくんに任せた方が良さそうね」
「はい、まかせてください」

あてもなく歩き回り、ときどき大声でジェイソンさんやケビンさん、ニルドラ先生の名前を呼んでみるが、返事が返ってくる気配は無い。

「困ったなぁ。天空界の不思議パワーで10分後には全員集合とかにならないかしら」
「カナウス様のことだからやりそうですけどね」
「他のみんなは無事かなぁ。まあ、あの3人は単独で放り出されても大丈夫だろうけど……他のみんなは逆にアインを心配してるだろうね。いちばん一人にしたら危ないもん。ところでアインくん、魔力の残りは大丈夫?」
「実はちょっと危ないです……すみません……」
「わかった、無理はしないで。いざとなったら私で片付るね」

情けない。メアリーさんに迷惑をかけないようにするつもりが、圧倒的に鍛錬が足りてない。

そうこうしているうちに、背後から猛スピードで近づいてくる気配を感じた。
ケビンさんだ。

「……あれ、ケビンさんが近づいてきてますかね」
「ほんとだ。アインくん、よく気づいたね」
「おーい!メアリー、アイン!」
「ケビン!あなたひとり?」
「おうよ。お前らは?」
「私たちは最初から二人一組だったよ。あの神様もそのへんは人の心があったみたい」
「よかったあー……」

ケビンさんはへなへなと座り込んだ。ずいぶんと心配していたらしい。

「さてと、ケビンとも合流できたことだし、我らが隊長と先生を探さなければね」
「そうだそうだ、俺、道すがらこんなもんを拾ったんだ」

ケビンさんはポケットから水晶玉のようなものを取り出した。覗き込んで見ると、地図のようなものと、現在地らしいマーカーが見える。

「これ……地図ですか?」
「おそらく。ただこれカナウスさんちと現在地しかわかんないんだよ」
「ともだちの場所も知りたい?」
「なんだこのはんぺんは」
「はんぺんじゃないっ!ツリーアニマル!!」
「ツリー、何かできるのか?」
「うん。これは生き物の魔力を映しているから、よく見ればともだちの場所もわかるよ!」
「どこだどこだ」

ケビンさんはツリーアニマルもそこそこに地図を覗き込む。

「あっ、ほんとだ。これがアインで、これはたぶんメアリーで、この色が違うのがはんぺんだ」
「だからぁ、はんぺんじゃないもん!」
「メアリーさんは魔力があるからマーカーが濃いですね」
「ほんとだ。魔力の量に応じてるんだね……ってアインくん、ピンチじゃない」
「俺はいいんですよ、隊長と先生はどこなんでしょう」

現在地らしいマーカーから離れると、魔物らしきマーカーやその他のマーカーもうっすらとしか見えない。

「ジェイソンも最大魔力はあったはずだから、近づきさえすれば見つけられそうね」
「しかしまあ、ダウジングマシンか何かみてえな感度しかねえな」
「ないよりマシよ。根気よく探しましょう」

つづく
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