魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第7話 天空界の試練

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「ほーん、このはんぺんがあのシノリディアンねえ。ホンモノは初めて見たな」
「この紫のお兄ちゃん、さっきから失礼だからきらいっ」
「ごめんごめん、もうはんぺん呼ばわりしないから、ツリー」
「ちゃんと名前で呼んでよねっ、ツリーってね!」
「うんうん」

俺はアイン・ビロクシス。現在は雲の絨毯の上、天空界でメアリーさんとケビンさんと3人で大絶賛迷子中だ。

ケビンさんも落ち着いてきたらツリーアニマルの存在に気づいたようで、さっきからずっとこの調子だ。ツリーアニマルは自称・俺についてきた魔法生物で、メアリーさんいわくハチャメチャに珍しい絶滅危惧種の激レア魔法生物、シノリディアンだそうだ。確かに人の言葉が通じるので魔物とは質が違う。そういえばウインドウルフのリーダーも言葉が通じたな。

とはいえ、いつまでも3人でツリーと遊んでいるわけにもいかない。時間が経てば腹が減るし、眠くもなる。そういえば、カナウス様に放り出されてからどのくらい経ったか分からない。日が沈む気配もないし……

「ねえケビン、妖精を呼んできて使い魔に探してもらうとかできないの?」
「それがさ、どうもできないみたいなんだよな。魔力の大気みたいなものの質が違って感覚が狂うんだと。かろうじて身体強化はやってくれるから、気合いであちこち動き回ってた」
「よく合流できたわね。下手したらくたびれて行き倒れちゃったんじゃないの」
「ははは、おっしゃる通りで……それでいくと、危ないんだよな、隊長が」
「アインくんも魔力切れが近いみたいだし、いったんカナウス様のおうちに帰る?」
「それがいい。ちなみに、家にカナウス様はいなかったぞ。あの神様やべーよ、ノーヒントにもほどがありすぎるって」

ケビンさんが見つけた地図を頼りに、カナウス様の家に戻った。家にはルナ様 (カナウス様の妻で、月の女神)がおり、かいがいしく世話を焼いてくれた。

「あら、いったん休憩?」
「はい、ちょうど仲間とも合流できましたし。全員ではないですが」
「あの、魔力が回復できる食べ物か何かをいただいても?」
「もちろん。でも一番は睡眠ね。そこに寝床を用意したから休んでいきなさいね」
「ありがとうございます。アインくん、よく食べてよく寝なさい」
「は、はい」

神様の家とはいえ、おばあちゃん家のような至れり尽くせりっぷりだ。結局俺がいちばんの末っ子なので、ものすごく世話を焼かれている。

「ジェイソンあたりもあの地図を見つけてここに戻ってきたら合流なのになぁ」
「あいつらの場合、単独でカナウス様に会ってとっくに試験終了してるまでありそうだけどな」
「薄情ねえ、セインはわからないけど、ジェイソンがそんなことするかなぁ」
「何はともあれ、俺たちも休めたら再出発しよう」

いつの間にか俺は大爆睡をかましていたらしく、すっきり目覚めるとケビンさんとメアリーさんが俺の支度を待っていた。

「すみません、すぐ準備します!!」
「ゆっくりでいいぞアイン。どうせ急いだところでジェイソンもセインも見つからんからな」
「ところで、どのくらい時間が経ったんだろう?ルナ様、教えていただくことはできますか?」
「天空界の時間の流れは不均一なの。だから、どのくらいかははっきり教えられないわねえ」
「そうですか……」

ルナ様いわく、カナウス様は試練が終わればプロビンスで家を訪ねた数時間後くらいの時間に戻してくれるだろうとのことだが、体感で時空がゆがみまくっている。さすが神様の国、天空界だ。

再度3人 (プラス1匹)で出発し、ジェイソンさんとニルドラ先生を探す。

途中、よく分からない魔法道具を拾いつつ進んで行く中で、見慣れぬ小石がとにかく集まっていっていた。

「またですね、なんですかこの小石みたいなのは」
「たぶん、セインかジェイソンのマイルストーンかなと思うよ」
「とすると、魔力がちょっとずつ濃くなってれば近づいてるってことで合ってるはずだ」
「あの二人も参ってるみたいねえ、魔力削ってマイルストーンを置くくらいなんだから」

マイルストーンとは何かと聞くと、魔道士なんかが探索をするときに仲間に道筋を教えるのに使う魔法の一種なのだそうだ。物体魔法に分類されるがきわめて初歩的なので、これが扱えないと非常にまずいらしい。そのうち授業で習うとメアリーさんは言ってくれたが、知らないことが多すぎる……。

マイルストーンを拾い集めてたどり着いた先はというと、ジェイソンさんでもニルドラ先生でもなく、カナウス様だった。

「かっ……カナウス様!」
「おお、アイン少年とその一行か。よくたどり着いたな」
「ジェイソンはどこ?あっ、セインは???」
「遅いぞー、お前ら」
「あーっ!ふたりとももう着いてる!!」
「ジェイソンお前どうしてたんだよ、単独?」
「いや、俺はセインと一緒だった」
「……俺だけか、ぼっちだったの」
「かわいそう」
「よかったです、合流できて」
「アイン、お前いいやつだよな。お前はいつまでもそのままでいてほしいよ」
「そこの紫髪の大男は一番強そうだったからな」
「カナウス様も見る目があるんだかないんだか……」
「一番強いのはメアリーですよ」
「そうか。アイン少年と一緒にして正解だったようだ」

カナウス様は満足げに俺たちを見ているが、試練は合格のはずだ。早く帰してほしい。

しかし、カナウス様はさらに試練を重ねてきた。鬼畜すぎる。

「さて、君たちの実力をいま一度見極めさせてもらおう……手合わせ願う!」
「ええっ、カナウス様と!?」
「嘘だろ……」

ジェイソンさんとニルドラ先生は分かりやすく憔悴している。あの様子を見るに、1度も休憩をはさんでいないのだろう。

「安心したまえ、本気でぶつかるわけではない」
「そういう問題かねぇ?」

カナウス様は当然強く、たった一人で俺たち5人を相手してまだ余裕がある。ジェイソンさんの指示で連携を組み、対策を取るけど攻撃は当然当たらないし、それ以前に攻撃しようとしているところに蹴りが入るし、カナウス様の魔法は避ける側のこっちが笑うくらい当たるし、もうボロボロだ。

「ちくしょう!」

俺はヤケクソで炎魔法を放った。それがたまたまカナウス様の肩に当たると、カナウス様との手合わせはやめになった。

「ふむ、実力のあるチームのようだな」
「どうも……」

ジェイソンさんとニルドラ先生はぜえぜえいっている。早く休ませてあげてほしい。

「そこの少年。アインといったかな」
「は、はい」
「技術は未熟だが伸びしろがある。機会があれば魔装剣の魔術を習うといい」
「まそうけん?」
「おっ、俺の開発した技術だな。今度稽古をつけてやろう」
「あっ……ニルドラ先生の!」
「さて、ラドニール魔法部隊よ、長々とご苦労であった。私の家で疲れを癒すといい」

カナウス様は自宅に俺たち全員とワープした。いいなぁ、神様は移動が自在で……

「みんな、おかえりなさい。お疲れ様」

ルナ様がごはんを用意して待っていてくれたようだ。ありがたい……

ごはんをいただきながら話を聞くと、カナウス様とは違う流派 (?)の神様が悪さをしようとしているらしく、どうやらそれの阻止に俺たちラドニール魔法部隊の協力がほしいらしいことがわかった。

「そういうことでしたらそういう依頼をくだされば……」
「ばか、ジェイソン、そんなの安請け合いしたら私たち死ぬよ」
「その通り。だからこそ試練を課したのだ」

課さなくていいです。ここはそんなスケールのでかいことをする部隊じゃないはずです。

……と思ったら、まったく同じことをニルドラ先生が言ってくれた。

「恐れながらカナウス様、ラドニール魔法部隊はもともと学生の自治団体のようなもので、神様の代理戦争を請け負う存在ではありませんよ」
「しかし、実力もそうだが、ランスブルクの魔道軍は団体として機動力がない。私の名のもとに動かすには障壁が多すぎるのだ。その点、ランスブルクという国名ではなくラドニールという我々にちなんだ名を冠するここは都合がよい」
「あっ、そこが本音なんですね」

メアリーさんがだいぶトサカにきているのがわかる。リリアさんの件もあるからピリピリするのだろう。俺たちくらいにしか聞こえないくらいの小声で「は?ありえない。神様の喧嘩ならそっちでやってよ」と悪態づいている。

「ラドニール神話を知っているかね?私たち神々は人間に積極的に力を貸す人間派と距離を置こうとする分離派に分かれているのだが」
「あー……要するに、人間派がやらかしてるとかですか」

ジェイソンさんがなんとか相槌をうつ。さすが隊長だ。他のみんなは迷惑そうな顔をしている。

「その通り。しかし1000年前の同じような大戦で神同士でやりあった結果、人間界が焼け野原になってな……。天界であっても神々の戦争は人間界に大きな打撃を与えかねないし、人間派の神は人間に神の力を与えかねない……何事もなければそれでよいのだ。だが、ハインリヒ……件の邪神が人間をそそのかし神の力を与え大事になってからでは遅いのだ」
「はぁ……カナウス様は分離派なんですね」
「いや、私とルナは中立派だ。ハインリヒは前科があるのだよ、人間には大きすぎる力を与えて世界を掌握しようとする節がある。神は天界で、人間は地上で。人間が困った時に困った分だけ力を貸すのが神のあるべき姿だ」

さっきまで険しい顔をしていたニルドラ先生がようやく納得したかのように大きくため息をついて、口を開いた。

「そういうことであれば、ラドニールの街の保安に限定してお受けしましょう」
「ありがたい。年長者の理解が得られたようで嬉しいぞ」

カナウス様はぱっと笑顔を見せて、こう言い放った。

「では、世界中から仲間を集めなくてはな!」
「なんで???」

つづく
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