魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第8話 魔装剣と特訓

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「では、世界中から新たな仲間を集めなければな!」
「なんで?」
「なんでもへちまも無いだろう。試練の間、お前たちを見ていたが、ふざけた組み合わせだ。状態変化ばかりの悪魔使いに結局腕っ節にものを言わせる妖精使い。これはひどいな」
「うっ……」
「魔装剣を扱うのと回復魔法使いはいいとしても、まともな攻撃魔法使いがアイン少年ひとりとは。しかも回復魔法使いも攻撃といいながら魔力をぶつけるだけで非効率的だ。およそ魔道部隊と呼べる代物では無い。王道とはバランスがよく臨機応変に対応できるから存在するのだ。そんなピーキーな性能では遅かれ早かれ組織として崩壊していたぞ」
「うう……」

カナウス様の歯に衣着せぬ酷評に、ジェイソンさんがぺしゃんこにされている。別にやりたくてこの組み合わせじゃないだろうに、カナウス様はひどい。

「ところで隊長は攻撃魔法を扱えるんですか?」
「できる……けど、コストがむちゃくちゃ高い派手なやつしか使えなくて」
「そういうところだぞ。最初から72柱を扱えるのには感心するが、もっとしょぼくれた悪魔をつけて手軽なものを覚えなさい」
「メアリーさんはまたどうして魔力を直接ぶつける戦法なんですか」
「自分の魔力が多すぎるからさ、回復魔法だけは適性があって普通に扱えるんだけど、ほかの魔法は魔法を出したときに余分な魔力が一緒に出てきちゃうんだよね」
「もう仕方がないのだから免許を取って魔法陣を使いなさい」
「免許自体は取得してあるけど……本とか持ち歩くの、機動力が落ちて嫌なのに」
「ケビンさんは……」
「文句こそつけたが、そこの大男はもうそのスタイルでいいと思う。物理魔法のレパートリーが増えるとなお良い」
「なんなんだよ」

3人とも (ケビンさんは違うかもしれない)規格外すぎて逆に不器用みたいな評価を下されている。優秀すぎるのも困りものらしい。

カナウス様は基本的に部隊の本部に降りてきてくれるらしいが、任務や戦闘行為には加わらないとのことだ。確かに、一歩間違えばカナウス様の言う邪神ハインリヒと似たり寄ったりになる。

俺たちは本部に戻り、作戦を練ることにした。

「さて。議題としては仲間集めにあたって求める人材がどんな人かっていうことの共有と、あとは俺たちの特訓やチューニングの内容だな」
「ふむ……本部に来て分かったが、そこの魔術師もなかなか優秀なのだな。欲を言えば現地で魔術が使えるような錬金術師がいると良いのだが」
「お褒めいただき光栄です。ツクレシーと申します。ただ、現地錬金術ってとても高度な技術ですから、ラドニールの大学院にもいるかどうか……」
「サウスランドあたりに確か現地錬金術の扱える錬金術師がいたはずだ。声をかけてみなさい」
「サウスランド……ってことは、エリス・アルケミー?」

メアリーさんの目が輝き始めた。メアリーさんって錬金術が好きなのかな。

「あー、なんかそんな名前だったような、知らんけど」
「カナウス様ってちょいちょい適当ですよね」
「アイン少年。不敬であるぞ」
「あっ、はい、すみません」
「でもここからサウスランドって遠いな~!」

ケビンさんが大きく伸びをしながらこぼし、ジェイソンさんがうんうんと頷いて続ける。

「外国だから出国審査も勘定に入れるとざっくり計算して1ヶ月かかるか?」
「出国審査?」
「アインはまだパスポート持ってないだろ」
「あ~……」
「ほら、ラドニール魔法部隊って学校の組織かつ国のプロジェクトだから。任務で国外出張するってなると学校と国の両方に申請出さないといけないし、アインくんの場合パスポートもあるし」
「じゃあ審査が通るまでの間にアインは先生と魔装剣の特訓をするか!」
「ニルドラ先生!よろしくお願いします!」

俺はニルドラ先生と学園の稽古場で特訓をすることにした。

最初に、先生が魔装剣を見せてくれた。

「魔装剣用にあらかじめ魔法をかけた剣に対して魔力を込めるんだ。単純に魔力をこめれば、こんな風に自分が一番得意な属性の魔力が宿るぞ」

ニルドラ先生の剣の周りに、風魔法の力が渦巻いた。これが魔装剣……

先生は簡単そうにやっているが、これがまあ難しい。そもそも、魔装剣用の魔法をかけるために魔力の術式を組むのからして大変だ。

「違う違う、アイン、そうじゃなくて、そこは斬属性を組み込むんだって」
「えーと???」
「おう、混乱してるな。一旦落ち着いて紙に書いてみろ。そうそう、そこまでは合ってるから……」

ややあって、ようやく魔装剣を作ることに成功した。ここからまた魔装剣に魔法の力を込めて攻撃できるようにしなければならない。

「アイン、とりあえず今日はここまでにしよう。これ高校の授業でやろうとすると平気で数ヶ月かかるんだよな。よくやってるよ、初日で形だけでも魔装剣作ってるんだから」
「は、はい。ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

部隊の寮に戻ると、ジェイソンさんが何やら書き物をしている。

「お疲れ様です、隊長。国外出張の書類ですか?」
「いや、悪魔召喚の手続きというか」
「あー、カナウス様に言われてたやつですね」
「野良悪魔はよくひっかけてるんだけど、その中に攻撃魔法を使えるやつはいなくてさ。新しく呼ばないといけないから面倒なんだ」
「野良悪魔ぁ?」
「あっ、まずい。これ内緒な」
「隊長は内緒話が多いですね」
「はは、ほんとだな」
「聞こえてるぞー、ジェイソン」

ケビンさんがにこにこと笑いながら混じってきた。様子を見るに、ジェイソンさんは内緒と言ったが、ケビンさんは訳知りのようだ。

「ケビン、書類はいいのか?」
「あとはツクレシーさんがやってくれるってさ。ところでアインお前、パスポートの手続きはしたか?」
「はい。ニルドラ先生の特訓の前に終わらせてます」
「で?ジェイソンお前、また新しく契約するんか。何体目?」
「わからん。72柱のうち5柱だか6柱だかを契約してるのと、あとは野良悪魔が多すぎて数えてない」
「うわー、見境ねえなー」
「外聞きの悪い言い方をするな!」
「それで生傷まみれになって帰ってきて迷惑するのはメアリーだぞ。よく考えろよなー」
「ちゃんと召喚するから大丈夫だって」

……なんか、聞いちゃいけない会話な気がする。

「……あの、契約ってどういうやつなんですか」
「どう……そうねえ、俺の場合は妖精なわけだけど、まず召喚魔法を使って精霊界から呼ぶだろ?そのあと、俺からこれだけ魔力をあげるので、呼んだら来てくださいって契約するな」
「妖精みたいな精霊界から呼ぶ召喚霊にとって魔力は生活するうえで必要な栄養だったり、通貨みたいな存在だったりするんだよ」
「へえー」
「で、ジェイソンみたいにぶっ飛んでる悪魔を呼んだ場合、必ず魔力で取引するとは限らないわけ。おおかた生き血とかあげてんだろ」
「お察しの通りだよ、ケビン……アインも知ってるだろ、魔法使いは血液にも魔力が含まれるんだよ。それを欲しがる奴もいるの」
「痛そう……」
「おいジェイソン、アインがドン引いてるぞ」
「うんだから俺いつも手袋してるでしょ」
「……ああ、だから……」
「見る?」
「ええ!?」

ジェイソンさんは手袋を脱いでシャツの腕をまくって見せてくれたが、確かに傷だらけだ。

ケビンさんは肉体派なので傷は多いものの切り傷だったり剣だこだったりなのだが、ジェイソンさんの方は手先を中心に噛み傷みたいなものが多い。

「痛そう……」
「あんまり露出してると野良悪魔が寄ってきちゃうんだよな」

そう言ってジェイソンさんはシャツを戻して手袋をはめ直した。

「悪いことばかりじゃないんだよ。野良悪魔をうまく手なずければいい用心棒になるから魔物よけにもなるし」
「ラドニールに魔物が少ないのってもしかしてそういうことなんですか?」
「俺個人の影響ではないだろうから、結界を張ってるんだろうなと思うが……全く無関係ではないだろうな」
「こいつ、格好つけてるけど悪魔使いの適性が分かって扱うようになってから大変だったんだぜ。うっかり憑依されて暴れたり契約が甘くてこっちに殴りかかられそうになったり」
「その節はすみませんでした……」
「結局リリアはなんて言ってたんだっけ」
「いざとなったら私がなんとかするから頑張ってみてよって言われたな。占星術で結界張ろうかとかも言われたな」
「はーん、リリアも肝が据わってんなあ」

リリアさんといえば、この前聞いたジェイソンさんの彼女か。もう亡くなってるんだっけ……

ケビンさんは俺がこの話を聞いたのを知ってるんだろうか。メアリーさんから聞いたのかな?

「リリアさんは占星術師だったんですか」
「おうよ。星座の力を呼び出すのが大変だからってメアリーと一緒に魔法陣取扱免許取ってさ、魔法陣をめちゃくちゃ書いた本を片手に戦ってたな」

魔法陣は大きな魔力を扱うときに用いる術式で、普段扱う魔法と違ってどこかに魔法陣を書かなければならず、魔法陣と魔力があれば誰でも起動できる。ただ、魔法陣によっては必要な魔力が多いため、うっかり起動して魔力を吸われすぎて魔力欠乏になり命に関わる事故につながることもあるため、取り扱いには免許が必要なのだ。

「メアリーが魔法陣嫌がるの、リリアのあれを見てたからだよなぁ。確かに使いたい魔法を出すのにいちいちごんぶとの本をペラペラめくって魔法陣のページを開けなきゃいけなくて、よくもたついてたもんなぁ」
「あれはリリアが呼ぶ星座ごとにページを分けてたからだろ。メアリーの場合はもっと単純なはずだ」
「……そういえばですけど、メアリーさんはお二人のなんなんですか?」
「は?」
「あっ、あの、なんなんですかと言いますか、どういう存在なのかなって」
「前に言ったじゃん、妹分だって」
「なんだアイン、メアリーのことが気になってるのか」

ケビンさんは今更何を、みたいな顔をしているがジェイソンさんはニヤニヤしている。俺がケビンさんに殺されるのでそういうことは言わないでほしい。ケビンさんの顔つきがちょっとけわしいじゃないか。

「いや、あの、えっと」
「無理もないか、天空界でしばらく二人きりだったもんな。吊り橋効果ってやつ?」
「ジェイソンさん!からかわないでください!ツリーもいましたからっ」
「そういえばツリーアニマルはどうしたんだ?」
「俺の部屋で飼うことにしました。魔力が主食らしいんで、しばらくは俺の魔力を与えようかと」
「サウスランド行く時はどうすんだよ。まあ連れて行ってもいいと思うけど」

そんな話をしていたら夜遅くなっていたらしく、ニルドラ先生に早く寝るよう言われてしまった。

また明日、魔装剣の魔法を覚えるために特訓しなくては。

つづく
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