魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第9話 魔道具いろいろ

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俺はアイン・ビロクシス。ラドニール魔法学園に通う高校生、かつ学園の魔道士部隊ラドニール魔法部隊のメンバーだ。

今はちょうど同じ部隊のメンバーかつ学校の先生であるニルドラ先生に魔装剣を習っているところだ。魔装剣はニルドラ先生が開発した、魔法攻撃の力を武器に付与するエンチャント魔法の一種で、普通の剣でもうまく魔法をかければ魔装剣として運用できる。魔装剣の運用にもコツがいるが、使えるようになれば物理攻撃と魔法攻撃を同時にできる魔道士界の革命的ウェポンだ。

「そうだそうだアイン!いいぞ、炎が剣の周りに渦巻いてるだろ、これだよ!」
「こっ、これですか!?」
「アイン、お前やっぱり筋がいいなぁ!炎に近い雷もやってみよう」

ニルドラ先生は褒めてくれるが、俺の剣から出ている炎の魔法はお世辞にも炎とは言えず、強いて言えばマッチの火だ。

「でもこの炎魔法、マッチくらいしかないですよ」
「そりゃそうだ、昨日作ったばっかりだからな。毎日稽古して使い込んでこそ戦闘に耐える魔装剣になるんだよ。だから魔装剣が若いうちにいろんな属性を仕込んでおくことが大事なんだ。アイン、雷は扱えるか?」
「中学レベルなら、多少は……」
「おっ、いいねえ。ほかの属性は?」

ニルドラ先生に言われるがままに魔装剣に魔法を仕込んでいく。まるで漬物を漬けているみたいだ。

……というか、魔装剣を鍛えてツリーに魔力をあげてって、俺の魔力はもつのか?

「もたないね。ツリーに自分の魔力をあげるのはよくないよ」

メアリーさんに一蹴されてしまった。

「シノリディアンなぞ、そのへんの魔力を食えば十分だろう。ジェイソンもケビンもメアリーも魔力が多いからダダ漏れだ」
「カナウス様、事実ですけどデリカシーがなさすぎます」
「いやですわ~、カナウス様のエッチ!」
「メアリーさん……」
「心配しないでアイン!ツリー、自分でごはん食べられるもん」
「そ、そうか」

ツリーに気を使われている気もするが、メアリーさんもカナウス様も俺が魔力切れで倒れる方が大変なのでやめろと言うので、大人しく従うことにした。

ところで、メアリーさんはずーっと錬金釜と睨み合っている。どうやらメアリーさんは錬金術の心得もあるみたいで、簡単な薬程度であれば錬金術で作っているそうなのだ。

「メアリーさんの魔力があれば錬金術で薬を作るまでもなさそうですけど……」
「魔力が多いからってあるだけ使おうとすると、回復するのが大変なの。貯められる量が多いだけで、消費するスピードも回復するスピードもアインくんとほとんど同じなんだよ」
「ああ、なるほど……」
「まあ、中には消費が早すぎて貯めるのが大変な体質の人もいるみたいだけどね」
「ちなみにメアリーさんは今何を作ってるんですか」
「簡単な傷薬だよ。ちょっとアインくんも手伝ってよ」
「は、はい」

メアリーさんの指示に従って、俺は材料の下処理を手伝った。メアリーさんいわく、高校の授業でもある程度はやるから予習だと思えとのことだ。

「この前、話に出ていたサウスランドの錬金術師は、釜がなくても錬金術が扱えるんだって」
「あ、それが現地錬金術って呼ばれてる……?」
「うん。突き詰めてしまえば錬金術も魔法だから無理な話ではないけど、直感には反するよね」
「ところで錬金釜ってなんで必要なんですか?」
「錬金釜そのものが魔法道具の一種なんだよ。アインくんが育ててる魔装剣もそうだし、私の魔法陣ノートもそう。魔力のめぐりを効率よくするために特別に魔法が仕込まれてるんだ。普通の錬金術でも釜があったうえで魔力をこめて複雑な術式の魔法を組んではじめて錬金術として成り立つから、釜がいらないって相当高度なんだよね」
「……それって、メアリーさんが錬金術使ったら余計な魔力がおまけされません?」
「ご明察~!そうなんだよ~、だからこの釜はちょっといじってて、魔力単体は中身に作用しないようにしたんだ。錬金術っていっても私はあんまり高度なことはしないし、使う魔力も少ないから余剰魔力も誤差みたいな量なんだけど、やっぱり気になるから」
「へー、魔道具って奥が深いんですね」
「セリアちゃんからそういう話は聞かないんだね。セリアちゃんってそういう関係の研究をしてるんでしょ?」
「え?」

まただ。

なんでみんなこうセリアの話をするんだろう。

「まあ、まだ高校生だから研究とまではいかないかぁ。セリアちゃんにここを手伝ってもらうわけにはいかないの?」
「いかないでしょう。なんか話が世界規模神様規模にでかくなってる手前、ラドニールの生徒は俺一人でじゅうぶんです」
「そっか、そうだよね」

そんな話をしながらメアリーさんの錬金術を手伝っていたら、わらわらとジェイソンさんとケビンさんが混じってきた。

「メアリーおつかれー。アインを助手にしてんの?」
「そうなのー。まだ高校生だから授業で多少覚えてるし、助かっちゃう!ケビンと違ってね」
「おい、一言余計だぞ」
「えへへっ、わざとだよーだ」

ケビンさんとメアリーさんは仲良さそうに軽口を叩きあっている。ジェイソンさんは出来上がった薬を運んでくれており、俺もそれを手伝った。

「メアリーに錬金術を習っていたのか?」
「いえ、ちょっとだけお手伝いを」
「そうか。アインはなんでもできるな」
「大げさですよ。まだ高校生ですし、専門が定まってないだけで」
「俺がアインくらいのときは召喚魔法が専門なのが分かりきってたからなぁ。ちょうどアインと同じ学年の時だったかな、悪魔召喚を専門にしたの。だからアインもそのうち専門が決まってくるだろうな」

そうか、高校生はそろそろ専門が決まる時期なのか……。セリアは高校に入る時点で物体魔法の魔術をやるんだと息巻いていたが、専門が決まる時期も個人差があるからと、今までは特に気にせずにいた。

俺も、なんでもかんでも手を出さないで専門を決めた方がいいのかな?

ジェイソンさんと作業場に戻るとケビンさんとメアリーさんが仲良さそうに話していた。

……ケビンさん、ああは言ってもメアリーさんとそういう仲なんじゃないのかと疑わざるをえない。

「あっ、ジェイソン、アインくん、おかえりー。運んでくれてありがとうね」
「いつもメアリーには世話になってるからな。メアリー、あとで治療を頼めるか」
「はいはい。また野良悪魔?」
「違う違う、攻撃魔法用の雑魚悪魔」
「オッケー。契約はサウスランド行きまでに間に合うの?」
「うん、もう契約は終わったから、怪我してるだけ」
「そしたら2人もいることだしさっさと済ませちゃいましょ。怪我見せて」

ジェイソンさんは当たり前みたいにジャケットを脱ぎ、シャツをまくって腕の傷を出した。

驚く俺にケビンさんが耳打ちする。

「万一悪魔が残ってたりすると暴れだしてヤバいんだ。だから俺らは監視役。なんかあったらジェイソンの顔面を殴ってでも止めろよ」

メアリーさんはジェイソンさんの腕の傷に手をかざして、魔力を込めた。あの人たちの凄いところは呪文すら唱えないところだ。俺は一番得意な炎魔法ですら省略形の詠唱が必要だというのに……

ところがジェイソンさんの腕の傷はわずかに薄くなった程度で、ほとんど治らなかった。

「ありがとう。これで十分だ」
「まーた面倒くさい契約のしかたをしたわね。刻印式の契約は避けろってカナウス様は言わなかったのかしら」

ジェイソンさんは気まずそうに目を逸らしている。ジェイソンさんは隊長としてはしっかりしているのに、自分の事になるといつもこうだ。自分を粗末にするなとケビンさんもメアリーさんも口を酸っぱくしているし、俺も今まさにそう思っている。

「隊長、自分を粗末にするのはよくないですよ」
「ついにアインにも言われてんじゃねえか」
「こっちの方が話が早いからあえてそうしてるんだっ」
「情けないわね~、そんなことばっかりしてると長生きできないよ!魔道士生命を自分で縮めてどうするの」

「ふむ、話は理解した」

後ろからカナウス様の声がして、俺たち4人は飛び上がった。振り返ると、カナウス様とニルドラ先生がやれやれといった様子で作業場の入口から俺たちを見ている。

「カナウス様、この悪魔使い、なんとかなりませんかねぇ」

ニルドラ先生の口ぶりも「いつもこいつこんな感じなんですわ」と言いたげだ。ジェイソンさんのこの自己犠牲系問題行動は隊員全員の知るところらしい。

「どの悪魔と契約するかは本人次第だからどうすることもできんな。ただ、72柱や召喚霊名鑑から探せるようなものであれば多少は安全だろう」
「おいジェイソン、カナウス様も野良悪魔はやめておけと言ってるぞ」
「野良悪魔だと?呆れたな」
「呆れられてんじゃん」
「ラドニールに悪質な悪魔が少ないのはそういうことだったか。ジェイソン、お前の慈善活動には感心するが、野良悪魔は契約するものではなく殺すものだぞ」
「……以後気をつけます」

そんなこんなで時は過ぎ、いよいよ現地錬金術師エリス・アルケミーのスカウトのためにサウスランドに出張に出かける時がきた。

つづく
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