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9 普通の転生者、なぜか怒られる
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「サミー!」
とりあえず、寮に帰ろうと思って歩いていると、すごい勢いで名前を呼ばれた。
振り返るとフィルが走って来るのが見えた。
「あれ~、フィルどうしたの?」
「どうしたのはお前の方だろう! 公爵家の子息に連れて行かれたって。一体何をしたんだ!」
あららら、そんなフィルの所にまで届くくらい噂になったのか。まぁ、そうだよね。しがない子爵家の三男坊が公爵家のサロンに連れていかれたら、まず「お前は一体何をしでかしたんだ!」って思うよね。
「ん~、迷っていたから道案内しただけ」
「は?」
フィンが声を失っているけど、僕だって驚いたよ。世の中にはまだまだ僕が思いつかないような事を思う人がいるんだね。
「それだけだよ。それでお礼にお茶とお菓子をいただいたの。ほら、お土産も。美味しかったよ。さすが公爵家だよね。フィルも欲しいなら一つだけならあげるよ?」
「いらねぇ………ハァ、まぁ、それならそれで……っていうか、どこで、付き合うって話がくっついたんだ……?」
「うん?」
へ? 何? 何がついたの?
「ああ、なんでもない。クソ、本当にお前といると寿命が縮む」
そう言われて僕は思わずムッとしてしまった。僕だって好きこのんで連れていかれたわけじゃないんだから。
「もう、フィルは失礼な事をわざわざ言いに来たの?」
「なんだ、それ。最近のサミーはおかしい。心配させてごめんとか、ありがとうじゃないのか?」
「おかしいのはフィルでしょう? 寿命が縮むとか言われて普通は有難うって言わないよ。それに心配したなら心配したって言わないと分からないでしょう?」
「そのくらい察しろ、馬鹿!」
「また、馬鹿って言った!」
「うるさい……もう、好きにしろ!」
フィルはふいっと顔を背けると、来た時と同様に走って行ってしまった。
え? 何、これ? 僕が悪いの?
この状況って、公爵家の子息に連れて行かれたって聞いて、心配して駆けつけてくれた幼馴染みに、寿命縮むとか言うなよって言って怒らせて追い返したって流れ?
これってそういう状況なの?
「えぇぇぇ……」
納得がいかずに呆然としていると、ブラッドがやってきた。
「ああ、サミュエル、何だかおかしな噂を聞いて心配したよ。大丈夫かい? こんな所に立ちすくんで何かあったの?」
「ああ、うん。普通はこれだよね」
「え?」
「あ、うん。心配をするっていうのはこういう事だよね。いきなり一体何をしたんだとか、寿命が縮むとか言わないよね」
「え? 何? どうしたの?」
「なんかちょっと、自分がおかしいのかなぁって一瞬思ったけど、やっぱりそうじゃなかったなって」
「サミュエル?」
恐る恐るというように覗き込んでくる顔に僕はにこっと笑った。
「ありがとう、ブラッド。大丈夫だよ。この前のマルシェでたまたま道が分からなくなった公爵家の人を道案内しただけ。そしたらお礼にお茶とお菓子をごちそうになって、お土産ももらった。それだけだよ」
そう言ってちゃっかりもらってきたお菓子を見せるとブラッドはハァと息を吐いて。
「良かった。サロンの方に連れて行かれたなんて聞いたから何があったのかと思ったよ」
「何もないよ。でも僕もびっくりした。でももう二度とごめんだよ」
うん。そうだよね。心配って言うのはこういう事で、ちゃんと心配してくれているって分かれば僕だってっこうやって落ち着いて受け答えが出来るんだ。
「なんかもう、ほんとに分かりづらい……」
「サミュエル?」
思わず小さく呟いた声にブラッドが不思議そうな顔をした。
「ううん。何でもない。ありがとうね。じゃあ、僕今日は予定があるから」
「気を付けて! サミュエルは色々巻き込まれやすいから」
「大丈夫だよ、ありがとね、ブラッド」
僕はそう言って寮に向かって走り出した。そうなんだ。急がないと今日は食堂の日だ。とりあえずロイになって急がなきゃ!
ふと頭を掠めた、好きにしろという言葉。
(まぁ、勿論好きにするけどさ……)
でも何となく、そう何となくその言葉に胸の中がイガイガして、僕はいけないいけないと首を横に振った。こんな事を思っていたら最近増えて来ているような気がする幸せが、仲間を求めていなくなってしまうよ。
「よし、リセット!」
前世の言葉でそう言って、僕は人がいないのを確かめてると、自分の部屋まで転移した。
とりあえず、寮に帰ろうと思って歩いていると、すごい勢いで名前を呼ばれた。
振り返るとフィルが走って来るのが見えた。
「あれ~、フィルどうしたの?」
「どうしたのはお前の方だろう! 公爵家の子息に連れて行かれたって。一体何をしたんだ!」
あららら、そんなフィルの所にまで届くくらい噂になったのか。まぁ、そうだよね。しがない子爵家の三男坊が公爵家のサロンに連れていかれたら、まず「お前は一体何をしでかしたんだ!」って思うよね。
「ん~、迷っていたから道案内しただけ」
「は?」
フィンが声を失っているけど、僕だって驚いたよ。世の中にはまだまだ僕が思いつかないような事を思う人がいるんだね。
「それだけだよ。それでお礼にお茶とお菓子をいただいたの。ほら、お土産も。美味しかったよ。さすが公爵家だよね。フィルも欲しいなら一つだけならあげるよ?」
「いらねぇ………ハァ、まぁ、それならそれで……っていうか、どこで、付き合うって話がくっついたんだ……?」
「うん?」
へ? 何? 何がついたの?
「ああ、なんでもない。クソ、本当にお前といると寿命が縮む」
そう言われて僕は思わずムッとしてしまった。僕だって好きこのんで連れていかれたわけじゃないんだから。
「もう、フィルは失礼な事をわざわざ言いに来たの?」
「なんだ、それ。最近のサミーはおかしい。心配させてごめんとか、ありがとうじゃないのか?」
「おかしいのはフィルでしょう? 寿命が縮むとか言われて普通は有難うって言わないよ。それに心配したなら心配したって言わないと分からないでしょう?」
「そのくらい察しろ、馬鹿!」
「また、馬鹿って言った!」
「うるさい……もう、好きにしろ!」
フィルはふいっと顔を背けると、来た時と同様に走って行ってしまった。
え? 何、これ? 僕が悪いの?
この状況って、公爵家の子息に連れて行かれたって聞いて、心配して駆けつけてくれた幼馴染みに、寿命縮むとか言うなよって言って怒らせて追い返したって流れ?
これってそういう状況なの?
「えぇぇぇ……」
納得がいかずに呆然としていると、ブラッドがやってきた。
「ああ、サミュエル、何だかおかしな噂を聞いて心配したよ。大丈夫かい? こんな所に立ちすくんで何かあったの?」
「ああ、うん。普通はこれだよね」
「え?」
「あ、うん。心配をするっていうのはこういう事だよね。いきなり一体何をしたんだとか、寿命が縮むとか言わないよね」
「え? 何? どうしたの?」
「なんかちょっと、自分がおかしいのかなぁって一瞬思ったけど、やっぱりそうじゃなかったなって」
「サミュエル?」
恐る恐るというように覗き込んでくる顔に僕はにこっと笑った。
「ありがとう、ブラッド。大丈夫だよ。この前のマルシェでたまたま道が分からなくなった公爵家の人を道案内しただけ。そしたらお礼にお茶とお菓子をごちそうになって、お土産ももらった。それだけだよ」
そう言ってちゃっかりもらってきたお菓子を見せるとブラッドはハァと息を吐いて。
「良かった。サロンの方に連れて行かれたなんて聞いたから何があったのかと思ったよ」
「何もないよ。でも僕もびっくりした。でももう二度とごめんだよ」
うん。そうだよね。心配って言うのはこういう事で、ちゃんと心配してくれているって分かれば僕だってっこうやって落ち着いて受け答えが出来るんだ。
「なんかもう、ほんとに分かりづらい……」
「サミュエル?」
思わず小さく呟いた声にブラッドが不思議そうな顔をした。
「ううん。何でもない。ありがとうね。じゃあ、僕今日は予定があるから」
「気を付けて! サミュエルは色々巻き込まれやすいから」
「大丈夫だよ、ありがとね、ブラッド」
僕はそう言って寮に向かって走り出した。そうなんだ。急がないと今日は食堂の日だ。とりあえずロイになって急がなきゃ!
ふと頭を掠めた、好きにしろという言葉。
(まぁ、勿論好きにするけどさ……)
でも何となく、そう何となくその言葉に胸の中がイガイガして、僕はいけないいけないと首を横に振った。こんな事を思っていたら最近増えて来ているような気がする幸せが、仲間を求めていなくなってしまうよ。
「よし、リセット!」
前世の言葉でそう言って、僕は人がいないのを確かめてると、自分の部屋まで転移した。
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