27 / 54
27普通の転生者、色石を贈られる
しおりを挟む
フィルは怒ったというよりは呆れているような顔をしていた。失礼な話だけど、きちんとした格好をしているフィルは中々イケているんだなって思って、ちょっと口惜しい気持ちになったけれど、その感情もよく分からない。
「僕は本当に色々と分からない事だらけだったんだな」
「はぁ?」
「ううん。何でもないよ。今まで本当にありがとう。これからはそれぞれの道になるけれどお互いに頑張ろうね」
ああ、なんだかイガイガする。
「サミー、お前何言ってるんだ?」
「何って、卒業だもの。僕はこれから王都の宿舎に行くし、フィルは……どうするのかは分からないけど、ここでお別れだよね。何だかさ、隣にいるのが当り前だったから離れるっていうのがちょっと実感出来な、痛い! 何? なんでおでこを弾くのさ! これきっと赤くなっている!」
「おかしな事をぐだぐだ言っているからだろう。ほら、王都に行くんだろう。行くぞ」
「…………へ?」
何? ちょっと待ってどう言う事? え?
「ちょっと待って! なんで? どうしてフィルが一緒に行くの?」
「ああ?」
僕が思わず声を出すとフィルはニヤリと笑った。
「何言ってんだ、お前。俺はお前の護衛を俺の家からも領主からも任されているんだぞ。ここに一緒に来る時にそう言っただろう」
「え? だってそれは学園の……」
そう、成人になるまで。つまりは学生の間の筈だ。学園に来る時にフィル自身がそう言っていたじゃないか。それにフィルにはフィルの人生がある。
それに王城の中で働く下っ端の文官に護衛なんて付けれる筈がないじゃないか。
「サミー」
「……なに?」
「これ」
フィルはポケットから何かを取り出して、僕の手の中にポトリと落とした。
「え?」
手の中にあったのは、フィルの瞳と同じ色の、深いグリーンの石だった。
さすがにさっきブラッドから聞いたばかりだから渡された石の意味が分からないほど馬鹿じゃない。馬鹿じゃないつもりなんだけど、どうしてそれをフィルが僕に渡すのかが分からない。
「あ、あの……」
これはどう考えたらいいんだろう? それがそのまま顔に出ていたんだろう、フィルは「そのままの意味だ」と言った。
「そ、そのまま……え、え? えぇぇぇぇ?」
「そこでどうして疑問形なんだ。全くお前は最後の最後まで……。ああ、ちゃんと言わなきゃ分からない。お前はそういう奴だよな」
フィルははぁと息を吐いて、せっかく綺麗に整えていた髪を片手でガシガシと掻くと再び口を開いた。
「サミュエル・エマーソン様、お慕い申し上げております。私の色石を贈らせて下さい。そして、叶うことならばこれからも貴方のお側に居させて下さい」
周囲から「キャー」とか「わぁ!」とか「うそ!」とか、何だかよく分からない声が上がった。
「フィ、フィル?」
お慕い? え? 何?
頭の中は混乱していて、どうしてフィルがこんな事をするんだろうとか、何が起きているんだろうとか、グルグルしているんだけど、胸のどこかでそれを嬉しいって思う自分が居るような気がするのは何故なのかな?
さっきフィルが沢山の人に囲まれて石を渡されているのを見た時のムカつく様な気持ちと関係あるのかな。
何も言わず、呆然としている僕にフィルはまたしても呆れたようなでも仕方がないなというような表情を浮かべた。
「まぁ、そういうわけだ。どうせお前の事だから自分の色石なんて持っていないんだろう?」
「う、うん」
「よし。じゃあ、とりあえず王都に行くぞ」
「あ、うん」
1周して同じところに戻ってきた。感じだったけど、さすがにここでこれ以上のやり取りをする気にはなれず、僕はフィルと二人で王都への馬車が出ている方へと歩き出した。
後ろから「お幸せにー!」という声がかけられて、いたたまれない。
お幸せにって僕はフィルに自分の色石を返してはいないからね!
っていうか、どうしてフィルが僕に色石を贈ってくるのかもちゃんと聞いていないんだからね!
「フィル、後でちゃんと話をしようね」
「ああ、もちろん。あ、それからお前、さっき沢山の色石を貰っていたと思うけど間違っても捨てたり、どこか分からない所にしまい込んだりするなよ。いざって時に売れるものもあるからな。魔石はそれなりに、宝石で宝飾に使えるなら結構いい値がつく」
ううう、さすがエマーソン家を支えてきたグレンウィード家の人だ。
「僕は本当に色々と分からない事だらけだったんだな」
「はぁ?」
「ううん。何でもないよ。今まで本当にありがとう。これからはそれぞれの道になるけれどお互いに頑張ろうね」
ああ、なんだかイガイガする。
「サミー、お前何言ってるんだ?」
「何って、卒業だもの。僕はこれから王都の宿舎に行くし、フィルは……どうするのかは分からないけど、ここでお別れだよね。何だかさ、隣にいるのが当り前だったから離れるっていうのがちょっと実感出来な、痛い! 何? なんでおでこを弾くのさ! これきっと赤くなっている!」
「おかしな事をぐだぐだ言っているからだろう。ほら、王都に行くんだろう。行くぞ」
「…………へ?」
何? ちょっと待ってどう言う事? え?
「ちょっと待って! なんで? どうしてフィルが一緒に行くの?」
「ああ?」
僕が思わず声を出すとフィルはニヤリと笑った。
「何言ってんだ、お前。俺はお前の護衛を俺の家からも領主からも任されているんだぞ。ここに一緒に来る時にそう言っただろう」
「え? だってそれは学園の……」
そう、成人になるまで。つまりは学生の間の筈だ。学園に来る時にフィル自身がそう言っていたじゃないか。それにフィルにはフィルの人生がある。
それに王城の中で働く下っ端の文官に護衛なんて付けれる筈がないじゃないか。
「サミー」
「……なに?」
「これ」
フィルはポケットから何かを取り出して、僕の手の中にポトリと落とした。
「え?」
手の中にあったのは、フィルの瞳と同じ色の、深いグリーンの石だった。
さすがにさっきブラッドから聞いたばかりだから渡された石の意味が分からないほど馬鹿じゃない。馬鹿じゃないつもりなんだけど、どうしてそれをフィルが僕に渡すのかが分からない。
「あ、あの……」
これはどう考えたらいいんだろう? それがそのまま顔に出ていたんだろう、フィルは「そのままの意味だ」と言った。
「そ、そのまま……え、え? えぇぇぇぇ?」
「そこでどうして疑問形なんだ。全くお前は最後の最後まで……。ああ、ちゃんと言わなきゃ分からない。お前はそういう奴だよな」
フィルははぁと息を吐いて、せっかく綺麗に整えていた髪を片手でガシガシと掻くと再び口を開いた。
「サミュエル・エマーソン様、お慕い申し上げております。私の色石を贈らせて下さい。そして、叶うことならばこれからも貴方のお側に居させて下さい」
周囲から「キャー」とか「わぁ!」とか「うそ!」とか、何だかよく分からない声が上がった。
「フィ、フィル?」
お慕い? え? 何?
頭の中は混乱していて、どうしてフィルがこんな事をするんだろうとか、何が起きているんだろうとか、グルグルしているんだけど、胸のどこかでそれを嬉しいって思う自分が居るような気がするのは何故なのかな?
さっきフィルが沢山の人に囲まれて石を渡されているのを見た時のムカつく様な気持ちと関係あるのかな。
何も言わず、呆然としている僕にフィルはまたしても呆れたようなでも仕方がないなというような表情を浮かべた。
「まぁ、そういうわけだ。どうせお前の事だから自分の色石なんて持っていないんだろう?」
「う、うん」
「よし。じゃあ、とりあえず王都に行くぞ」
「あ、うん」
1周して同じところに戻ってきた。感じだったけど、さすがにここでこれ以上のやり取りをする気にはなれず、僕はフィルと二人で王都への馬車が出ている方へと歩き出した。
後ろから「お幸せにー!」という声がかけられて、いたたまれない。
お幸せにって僕はフィルに自分の色石を返してはいないからね!
っていうか、どうしてフィルが僕に色石を贈ってくるのかもちゃんと聞いていないんだからね!
「フィル、後でちゃんと話をしようね」
「ああ、もちろん。あ、それからお前、さっき沢山の色石を貰っていたと思うけど間違っても捨てたり、どこか分からない所にしまい込んだりするなよ。いざって時に売れるものもあるからな。魔石はそれなりに、宝石で宝飾に使えるなら結構いい値がつく」
ううう、さすがエマーソン家を支えてきたグレンウィード家の人だ。
56
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる