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29 普通の転生者、改めて告白される
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その後、僕は「何を言っているのか全然分からない」って頭を抱えて、フィルの眉間に深い皺を作らせた。
でもそれは僕が馬鹿だからっていうだけじゃないよ! フィルの言葉が足りなさすぎるんだ! って逆切れた。
うん。まぁ、それでね、ここで二人で怒っても何もならないので話をきちんとすり合わせようって事になって、お互いに頑張ったよ。うんうん。
フィルの話を要約するとこういう事だった。
ええっと、フィルはその……僕の事がずっと好きだった。
それで、僕を守るって思っていてくれて学園にも一緒に来て、いずれは僕と一緒に領に戻って、フィルは自領の騎士団を作るつもりでいたらしい。
でも僕が領には戻らずに王城に務めるつもりだって言い出したからその計画は大きく変わる事になった。
「もともとは卒業の時にちゃんとあの色石を渡して、結婚の申し込みをするつもりだったんだ。だけど王家も公爵家も絡んでくるし、お前は領に帰らずに独り立ちして幸せを見つけるみたいな事を言い出すし。ああ、今まではサミーにとっては幸せじゃなかったのかって本気で落ち込んだ」
「うぅぅ、それはすみません」
思わず謝ってしまった僕にフィルは小さな子にするみたいに僕の頭をポンポンってした。
「いや、俺も計画していた事が出来るのか分からない状態だったから、話もきちんと出来なかったし。でもサミーは本当に公爵家の養子の話も、王家との縁談も受けるつもりはないのか?」
「あ、うん。全然興味ない」
「そうか……」
すっぱり言い切った僕にフィルがホッとしたような顔をして、なぜか胸がトクンと鳴ったような気がした。でもその意味はまだはっきりとは分からない。だって、フィルはずっとずっと隣にいてくれたんだもの。それが当り前だったんだもん。卒業後もどうしてだか自分でも理解できないけど一緒に居られるような気がしていたんだ。よく考えれたら、ううん。ちょっと考えても、それはありえない筈なのに。
そんな事をつらつらと考えているとフィルは再び口を開いた。
「じゃあ、俺にもまだチャンスはあるな」
「え……」
「色石……藍色に近い魔石を贈ったのは、本当にそういう気持ちだからだ。お前と一緒にこれからもあり続けたい。だけど勿論それを押し付けるつもりもないし、お前が言っていた幸せっていうものを邪魔するつもりもない。それでも自分の気持ちだけはきちんと伝えておきたかったし、出来る限りそばに居たいって思ったんだ」
「フィル……」
「三年」
「え?」
「三年間。お前に振り向いてもらえるように頑張るよ。だけど、それでもお前の気持ちが俺に向かなければ諦める。……そういう約束なんだ」
誰と約束をしたのか。それは今の僕には聞けなかった。ううん。聞いたらいけないような気がしたんだ。
トクントクンという胸の鼓動はドクンドクンと少しだけ大きくなって僕の身体の中に響いていく。
フィルが僕を好きだったこと。
一緒に居たいと思ってくれていた事。
そしてなぜか三年間の期限がついている事。
僕は……きちんと考えなきゃいけない。自分の事とフィルの事。どうしたいのか。どうしたら僕は自分が思っていたように幸せになれるのか。考える。
あの人にしてしまったみたいに、後悔をしないように。
「……ねぇ、フィル。さっきさ、伯爵家の養子になったって」
「ああ、領地なしの男爵家の次男じゃ、王城の中の警備には就けなかったからな。というわけで、今年からは一緒に王城勤めだ。大旦那様からも、学園の騎士科からも推薦をしてもらったから頑張るよ。まぁ、一番頑張らないといけないのはサミーの気持ちを向けさせる事だけどな」
あわわわわ……ニヤリって笑うのは反則だよ、フィル。
「とりあえず、魔石は受け取ってくれ」
「う、うん」
「いつか、お前の色石をもらえるのを待っている。お前が言っていた幸せの中に、俺がいてほしいって願っているよ、サミー」
「…………なんか、ちょっと、カッコよすぎだよ、フィル」
思わず赤くなってしまった顔でぼそぼそとそう言うと、フィルは「口説いているんだ、当たり前だろう」って笑って、飯でも食いに行こうって誘ってくれた。
用意のいい幼馴染みは、ちゃんと近くの食事処も把握済みだった。
そして更に驚いた事に。
「え……嘘……」
僕の部屋はニ階の官吏用の部屋なんだけどね、フィルは一階端にある仮宿舎護衛用の部屋に住むんだって。部屋は僕の所よりも狭いって言っていたけど、さすがの僕も問題はそこじゃないって思ったよ。
いや、問題っていうか……何て言うかさ……
「襲う様な事はないから安心して寝ろ」
そんな風に爽やかに笑うのは反則だよ、フィル!
あううううう……こうして、僕達の新しい生活が始まった。
でもそれは僕が馬鹿だからっていうだけじゃないよ! フィルの言葉が足りなさすぎるんだ! って逆切れた。
うん。まぁ、それでね、ここで二人で怒っても何もならないので話をきちんとすり合わせようって事になって、お互いに頑張ったよ。うんうん。
フィルの話を要約するとこういう事だった。
ええっと、フィルはその……僕の事がずっと好きだった。
それで、僕を守るって思っていてくれて学園にも一緒に来て、いずれは僕と一緒に領に戻って、フィルは自領の騎士団を作るつもりでいたらしい。
でも僕が領には戻らずに王城に務めるつもりだって言い出したからその計画は大きく変わる事になった。
「もともとは卒業の時にちゃんとあの色石を渡して、結婚の申し込みをするつもりだったんだ。だけど王家も公爵家も絡んでくるし、お前は領に帰らずに独り立ちして幸せを見つけるみたいな事を言い出すし。ああ、今まではサミーにとっては幸せじゃなかったのかって本気で落ち込んだ」
「うぅぅ、それはすみません」
思わず謝ってしまった僕にフィルは小さな子にするみたいに僕の頭をポンポンってした。
「いや、俺も計画していた事が出来るのか分からない状態だったから、話もきちんと出来なかったし。でもサミーは本当に公爵家の養子の話も、王家との縁談も受けるつもりはないのか?」
「あ、うん。全然興味ない」
「そうか……」
すっぱり言い切った僕にフィルがホッとしたような顔をして、なぜか胸がトクンと鳴ったような気がした。でもその意味はまだはっきりとは分からない。だって、フィルはずっとずっと隣にいてくれたんだもの。それが当り前だったんだもん。卒業後もどうしてだか自分でも理解できないけど一緒に居られるような気がしていたんだ。よく考えれたら、ううん。ちょっと考えても、それはありえない筈なのに。
そんな事をつらつらと考えているとフィルは再び口を開いた。
「じゃあ、俺にもまだチャンスはあるな」
「え……」
「色石……藍色に近い魔石を贈ったのは、本当にそういう気持ちだからだ。お前と一緒にこれからもあり続けたい。だけど勿論それを押し付けるつもりもないし、お前が言っていた幸せっていうものを邪魔するつもりもない。それでも自分の気持ちだけはきちんと伝えておきたかったし、出来る限りそばに居たいって思ったんだ」
「フィル……」
「三年」
「え?」
「三年間。お前に振り向いてもらえるように頑張るよ。だけど、それでもお前の気持ちが俺に向かなければ諦める。……そういう約束なんだ」
誰と約束をしたのか。それは今の僕には聞けなかった。ううん。聞いたらいけないような気がしたんだ。
トクントクンという胸の鼓動はドクンドクンと少しだけ大きくなって僕の身体の中に響いていく。
フィルが僕を好きだったこと。
一緒に居たいと思ってくれていた事。
そしてなぜか三年間の期限がついている事。
僕は……きちんと考えなきゃいけない。自分の事とフィルの事。どうしたいのか。どうしたら僕は自分が思っていたように幸せになれるのか。考える。
あの人にしてしまったみたいに、後悔をしないように。
「……ねぇ、フィル。さっきさ、伯爵家の養子になったって」
「ああ、領地なしの男爵家の次男じゃ、王城の中の警備には就けなかったからな。というわけで、今年からは一緒に王城勤めだ。大旦那様からも、学園の騎士科からも推薦をしてもらったから頑張るよ。まぁ、一番頑張らないといけないのはサミーの気持ちを向けさせる事だけどな」
あわわわわ……ニヤリって笑うのは反則だよ、フィル。
「とりあえず、魔石は受け取ってくれ」
「う、うん」
「いつか、お前の色石をもらえるのを待っている。お前が言っていた幸せの中に、俺がいてほしいって願っているよ、サミー」
「…………なんか、ちょっと、カッコよすぎだよ、フィル」
思わず赤くなってしまった顔でぼそぼそとそう言うと、フィルは「口説いているんだ、当たり前だろう」って笑って、飯でも食いに行こうって誘ってくれた。
用意のいい幼馴染みは、ちゃんと近くの食事処も把握済みだった。
そして更に驚いた事に。
「え……嘘……」
僕の部屋はニ階の官吏用の部屋なんだけどね、フィルは一階端にある仮宿舎護衛用の部屋に住むんだって。部屋は僕の所よりも狭いって言っていたけど、さすがの僕も問題はそこじゃないって思ったよ。
いや、問題っていうか……何て言うかさ……
「襲う様な事はないから安心して寝ろ」
そんな風に爽やかに笑うのは反則だよ、フィル!
あううううう……こうして、僕達の新しい生活が始まった。
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