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41 普通の転生者、再び話し合いをする
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お祖父様の屋敷に着いて挨拶をしてから、今日の本題へと入った。
忙しないけれど仕方がない。だって明日は仕事なんだもの。
僕はうちでも話をした王城でのアルトマイヤー宰相閣下と第四王子の事を説明した。
アルトマイヤー様からは特に養子になりなさいなどと直接的な事は言われていないし、食事も僕一人だけを呼び出すような事はしていない。そして連日押しかけてくるような事もない。
もしも養子を希望されているという話を知らなかったら、すごく上の人なのに下の人間にまで気安く声をかけてくれて食事まで驕って下さるなんていい人だなぁと、僕の幸せ集めの良い材料……ああ、いや、そのまぁ、貢献してくれる人になっていたと思う。
だけどその裏で養子縁組という事が動いているとすると、好印象が一気に下がるんだ。
「でもお祖父様、以前お話を聞いた時も不思議だったのですが、どうして王家や宰相様の公爵家は僕にこだわるのでしょうか。というかエマーソンに?」
いくら大祖母様が王家のお姫様だったからって言っても、まだその息子であるお祖父様を囲い込みたいとか言うのならば納得できるんだけどね。だってお祖父様はどうやら伝説の人だったみたいだから。文官としても才能があって、剣も強くて、魔法もなんて、もっと早く教えてほしかったよ。僕が子供の時はもうこっちの屋敷に移っていた優しくてカッコいいお爺ちゃんでしかなかったんだもの。
でもお祖父様が駄目ならその息子、それも駄目なら更に孫……なんか意味が分からないんだけどと思うのは僕だけなのかな。
「大祖母様は何か、ええっと大祖父様とは違った意味で特別な力とかそういうものを持っていらしたのでしょうか?」
それでその力があるかもしれないエマーソンの人間を……う~~~~ん、無理があるよね。
「いや、聞いた事はないな。普通のというか、家族を愛していた母であり、妻である可愛らしくも逞しい女性だったと思う」
お祖父様、なんだか印象がとてもバラバラな感じです。えっとまぁ、逞しいって入る辺りが、あんまり深層のお姫様って言う感じではなかったのかな。まぁ、王家を飛び出して子爵家に嫁いできちゃう王女様ってやっぱり珍しいものね。
「顔立ちだけでなく、サミュエルに似ているような気がするよ」
……お祖父様、僕、何だかすごく不本意です。
「やっぱり分かりません。だって別にエマーソン家は後ろ盾になるようなものではありません。領も小さいですし、子爵位ですし。あるのは大祖母様の嫁ぎ先っていうくらいのものです。それなのになぜ、こんな風に縁を結ぼうとされるのでしょうか」
僕がそう言うとお祖父様はさすがに苦笑をした。
「サミュエル、エマーソンはサミュエルが思うほど価値のないものではないんだよ。それは王族を迎えたというだけのものではない。勿論母上の輿入れによって王家の血筋が入った子爵家を取り込みたいと動く者もいるだろうし、それ以外の事でもね」
え?
「エマーソンは強かに生き残ってきた領なんだよ。サミュエル」
「し、したたかに?」
僕の問いにお祖父様はニッコリと笑って言葉を続ける。
「領地は小さくともエマーソンは一年中気候も良く、ロイヤルティと呼ばれる献上用の紅茶はエマーソン産のものだ。この土地の気候がそれを支えており、その製法はエマーソンの一部の者にしか知らされていない」
「はい……それがあるから何とかもっているのだと思っていました」
「ふふふ、まぁ、そうとも言えるかもしれないな。献上される最上の茶葉。高位の貴族たちの茶会用の高級茶葉。それ以外にもこの寒くなりすぎないというこの気候によって実るものもある。だが、裕福になるとそれを面白く思わない人間もいる。エマーソンはエマーソンとして生き残る為に大きくなっても栄え過ぎてもいけない。その匙加減をするためにグレンウィードが付いている」
「えぇ……?」
想定外の言葉に僕は思わず信じられないというような声を出していた。
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忙しないけれど仕方がない。だって明日は仕事なんだもの。
僕はうちでも話をした王城でのアルトマイヤー宰相閣下と第四王子の事を説明した。
アルトマイヤー様からは特に養子になりなさいなどと直接的な事は言われていないし、食事も僕一人だけを呼び出すような事はしていない。そして連日押しかけてくるような事もない。
もしも養子を希望されているという話を知らなかったら、すごく上の人なのに下の人間にまで気安く声をかけてくれて食事まで驕って下さるなんていい人だなぁと、僕の幸せ集めの良い材料……ああ、いや、そのまぁ、貢献してくれる人になっていたと思う。
だけどその裏で養子縁組という事が動いているとすると、好印象が一気に下がるんだ。
「でもお祖父様、以前お話を聞いた時も不思議だったのですが、どうして王家や宰相様の公爵家は僕にこだわるのでしょうか。というかエマーソンに?」
いくら大祖母様が王家のお姫様だったからって言っても、まだその息子であるお祖父様を囲い込みたいとか言うのならば納得できるんだけどね。だってお祖父様はどうやら伝説の人だったみたいだから。文官としても才能があって、剣も強くて、魔法もなんて、もっと早く教えてほしかったよ。僕が子供の時はもうこっちの屋敷に移っていた優しくてカッコいいお爺ちゃんでしかなかったんだもの。
でもお祖父様が駄目ならその息子、それも駄目なら更に孫……なんか意味が分からないんだけどと思うのは僕だけなのかな。
「大祖母様は何か、ええっと大祖父様とは違った意味で特別な力とかそういうものを持っていらしたのでしょうか?」
それでその力があるかもしれないエマーソンの人間を……う~~~~ん、無理があるよね。
「いや、聞いた事はないな。普通のというか、家族を愛していた母であり、妻である可愛らしくも逞しい女性だったと思う」
お祖父様、なんだか印象がとてもバラバラな感じです。えっとまぁ、逞しいって入る辺りが、あんまり深層のお姫様って言う感じではなかったのかな。まぁ、王家を飛び出して子爵家に嫁いできちゃう王女様ってやっぱり珍しいものね。
「顔立ちだけでなく、サミュエルに似ているような気がするよ」
……お祖父様、僕、何だかすごく不本意です。
「やっぱり分かりません。だって別にエマーソン家は後ろ盾になるようなものではありません。領も小さいですし、子爵位ですし。あるのは大祖母様の嫁ぎ先っていうくらいのものです。それなのになぜ、こんな風に縁を結ぼうとされるのでしょうか」
僕がそう言うとお祖父様はさすがに苦笑をした。
「サミュエル、エマーソンはサミュエルが思うほど価値のないものではないんだよ。それは王族を迎えたというだけのものではない。勿論母上の輿入れによって王家の血筋が入った子爵家を取り込みたいと動く者もいるだろうし、それ以外の事でもね」
え?
「エマーソンは強かに生き残ってきた領なんだよ。サミュエル」
「し、したたかに?」
僕の問いにお祖父様はニッコリと笑って言葉を続ける。
「領地は小さくともエマーソンは一年中気候も良く、ロイヤルティと呼ばれる献上用の紅茶はエマーソン産のものだ。この土地の気候がそれを支えており、その製法はエマーソンの一部の者にしか知らされていない」
「はい……それがあるから何とかもっているのだと思っていました」
「ふふふ、まぁ、そうとも言えるかもしれないな。献上される最上の茶葉。高位の貴族たちの茶会用の高級茶葉。それ以外にもこの寒くなりすぎないというこの気候によって実るものもある。だが、裕福になるとそれを面白く思わない人間もいる。エマーソンはエマーソンとして生き残る為に大きくなっても栄え過ぎてもいけない。その匙加減をするためにグレンウィードが付いている」
「えぇ……?」
想定外の言葉に僕は思わず信じられないというような声を出していた。
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