普通の転生者は幸せになる計画を立てる。でも幸せって何?

tamura-k

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40 普通の転生者、自分の気持ちが分からない

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 エマーソン領に到着をしたのはお昼に近い時間だった。

 勿論事前に行くと連絡はしていたけれど
「急にすみません。ご相談をしたい事があって」と言うと父上も母上も笑って頷いてくれた。

 紅茶を出されてちょっとホッとしながら僕は王城の中で起きた事を説明して、公爵家の養子になる事も、第四王子と婚約をする事もお断りをしたいと言った。
 父様と母様は黙ってそれを聞いていた。

「サミー」
「はい」
「養子の件も婚約の件も一応お断りは入れているんだ」
「え?」

 じゃあどうして宰相様は僕をランチに誘うのかな? そして第四王子はどうして婚約者候補呼ばわりしちゃうんだろう?

「本人に任せているなんて言うから話がきちんと伝わらなかったんじゃないの? 貴方」
「いや、その前にきちんと断ると言っているんだからね」
「断ると言っても、本人がいいって言うならいいのかもしれないって思ったのかもしれない。頭が悪いにもほどがあるな」

 母と父と兄の言葉に僕は頭を抱えたくなった。
 え? 本当に? そんな事ありえるの? 

「……それってもしかして子爵家が高位の者からの申し出を断れるわけがないっていう?」
「い、いや、私も、父上もそれで断っているし」
「とりあえず、お祖父様からももう一度お話をしていただこう」

 そういう家族に僕は「自分でお願いをしにいきます」と言った。
 そうだよね。こんな事をお願いするんだからちゃんと自分でお願いをしなきゃいけないよね。そしてちゃんと聞いてみよう。子爵家の三男が本当にこういう話を断る事が出来るのか。
 断ったらもう王城勤めは難しくなってしまうのか。

 僕は確かにこの家を出る為に王城勤めを考えたんだけど、何かを考えて与えられている課題に向けて組み立てたり、作り上げていくような作業はやっぱり性に合っているって思ったんだ。
 やりながら褒められたり、違う人の手順を見てこんな事も出来るのかって驚いたり、感心したり、城に入ってからはそう言う事が幸せ集めの一つになっていた。
 勿論食堂のご飯に好きな物が出るというのも幸せの一つだったけれど。

 だから出来るならば仕事は続けていきたいんだ。
 でも断る事で仕事が出来なくなるなら悲しいなって思うけど、養子になってまで仕事を取りたいかって言われれば違う事を探そうっていう気持ちの方が大きい。
 勿論あの面倒くさそうな第四王子との結婚なんて論外だ。
 それに……フィルが伯爵家に養子に入ってまで付いてきてくれたんだから頑張りたい。

 そこまで考えて僕はハッとしてブンブンと首を横に振った。

「どうした、サミュエル」
「何でもない。せっかく合格したんだからちゃんと仕事をしたいなって思っただけ」
「ああ、そうだな」

 父様達がうんうんと頷く中、お祖父様にこれから伺いたいという連絡を入れて、僕は前回と同様馬を借りて家を出た。

「…………僕の仕事とフィルは関係ないよね。なんかどうも最近おかしい」

 そう。好きだとは言われたけれど、でも僕は……。
 だって、フィルはずっと一緒に居てくれたから。それが当り前だったから。


 とにかくお祖父様ともう一度ちゃんとお話をして、断ってもらって。そうして、それから……

 何となくモヤモヤとする気持ちを抱えたまま、僕は馬のスピードを上げた。

 


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