悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

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第8章  収束への道のり

323. 噴き出した悪意

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「ここだよ! これに間違いないよ!」

 ミッチェル君の声に皆がそこに集まった。

 探していた空間を封じていた扉。
 魔物達に壊されて、踏みつけられているだろうそれが本当に見つかるかは本当は分からなかった。でもスティーブ君に『修復』ってスキルがあるって聞いた時に「出来る」って思ったんだ。もっともそんな事を言ったらダニエル君に行き当たりばったりだとか、無謀とか、計画性がないとか怒られちゃうような気がするけれど。


「取り出してみよう」

 エリック君がそう言って闇魔法で包み込むとそれをズルリと地中が引きずり出した。

「わぁ、すごいね。その魔法」
「闇魔法だからエディにもできるよ」
「そうなのかな。練習してみようかな。ふふ何だか宝物探しみたいだよね」

 僕がそう言うと皆は「エディらしいね」って笑った。えっと、どういう事かな。

「うん。確かに陣の跡がある。それにこれは魔法で作り出されて相当強化されている物質だね。石とも違うし、金属とも違う少し違う」

 スティーブ君が取り出された欠片を見てそう言った。

「でもさぁ、スティーブ。こんなに小さな破片になってしまっても修復できるの? それに全部は揃っていないし」
「もう少し周りの物も掬い上げてみようか。ああ、あとはその辺りの壁も」
「そうだね。出来る事は何でもやってみよう。お願い出来るかな、エリック」
「もちろん」

 エリック君はそう言って周辺のものや周辺の壁の辺りも地上に引きずり出した。

「よし、とにかくやってみるよ」

 僕たちはその場所から少しだけ離れて、スティーブ君を囲んだ。
 スティーブ君が手の平に魔力を集め始めると大小の欠片だったそれはクルクルと回り始めて自然に繋ぎ合わさっていく。目の前で時間が戻っていくようなその様子に僕たちは見入ってしまった。

「……すごい」
「うん。初めて見た」
「構造が判ればもっと早く出来るけれど、それを探りながらだから少し時間がかかるよ。でもすごくきちんとした陣が組まれていたものだから、これ自体がそれを記憶しているね。それだけ長い間そうしていた証拠だよ」

 昔々の王様や魔法使いや賢者たちが皆で考えたのかもしれない首を封じ込める方法。扉はもう一枚モーリスの守塚とダンジョンの間にある。でも修復したものと同じものを作れればその扉も閉めなおすことがきっと出来るはずだ。
 
「ああ、本当に魔法陣も戻っていくよ」
「どうしても分からないところは陣の隙間を埋めて修復をしなければならないけど、何となく大丈夫のような気がするな。なんとかあの魔物の蓋が壊されないうちに出来上がって、ゆがみみたいに感じる空間の前につけ直せるようにしたいね」
「うん、そうだね」
「でもさ、どちらにしてもダンジョンと守塚を繋いでいる所にも付け直すんだよね。魔物が現れないようにするならダンジョンの方を先にした方がいいのかなって……あ、そうか、モーリスもスタンピード中だったんだ」

 自分で言って自分で答えを出したミッチェル君に「良く気付いたな」とクラウス君が声をかけて、勿論ミッチェル君は怒っていた。そうしている間に第一隊の人たちが休んでいる方でわっと歓声が上がった。

「え? どうしたのかな」
「どうやら、援護の騎士隊が来る事が知らされたようだね」

 僕たちの周りを囲んで護衛をしてくれていたジョシュアが教えてくれた。

「え? コートニーズ公爵家? それともニールデン公爵家?」
「いや。聞こえてきた話だとどうやらフィンレーとレイモンドだ」
「! 父様が!」

 僕が思わず声を上げるとミッチェル君も嬉しそうに声を出した。

「わぁ! 良かった。蓋が壊れちゃう前に応援が来るなんて、これで扉も出来たら安心だね」
「ミッチェル、すごいプレッシャーをありがとう」
「えへへへへ。スティーブ、魔力は大丈夫? はい、回復ポーション」

 そんなやりとりをしていると、不意にレナード君が眉間に皺を寄せて立ち上がった。

「どうした? レオン」
「……ああ、いや、何だかおかしな気を感じたような気がして……」
「ああ、それはさきほどまで私も感じていたよ。騎士たちの不安な気持ちとかが魔素を呼んでしまうかと少し心配していたけど、アルフレッド様や隊の指揮官たちが色々やっていたのと、今の歓声で消えたと思ったけど」
「うん。そうなんだけど……ああ、分からないな。気のせいかな」
「いや、でも、俺も何となく……」

 レナード君とユージーン君、そしてクラウスが何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回した。けれど相変わらず地中からは地鳴りのような音が聞こえて、時折震動が伝わってくるだけで特に変わった様子はない。

「集中の邪魔をしてごめん。何となくおかしな気を感じたような気がしたけど、どうやらさっきの歓声で消えてしまったみたいだ。魔物たちの残気でもあったのかな」
「うん、そうだね。そうかもしれない……」

 ジョシュアやマリー、ルーカスも気にして周囲を見回してくれたけれど、結局何もなく僕たちはスティーブ君の作業を見守る事に戻った。何も手伝う事が出来なくて歯がゆいけれど、スティーブ君の手元にはしっかりと魔法陣が刻まれた、四角いものが作り出されている。

「綺麗だね……」
「うん。もう少しなんだけどやっぱり少し分からない所がある。今は使われていないような言葉があるんだ。そのままの形で写し取ったけれど、きちんと発動するのか不安だな」

 スティーブ君は少し疲れたような顔をして「カルロス様がいらっしゃったらお聞きできるんだけど」と言った。
 お祖父様からはやはり王宮神殿の地下の奥にある部屋の封印をする事にしたというお知らせが来ていた。その後は何もないのでまだ続けていらっしゃるんだろう。妖精たちはちゃんとお手伝いをしてくれているかな。
 妖精王が住んでいると言われていた森の向こうにはもう太陽が沈み始めていて、騎士達や兄様たちが魔道具やライトの魔法で辺りを照らし始めていた。

「多分、これで出来たと思う」

 そう言って見せてくれたのは見た目はそれほど大きくはない扉というか、四角い箱のような形をしたものだった。

「おそらく閉じるべき場所に置いて魔力を流すとその場所に合うように広がるんだと思う」
「やってみよう」
「うん。でも魔力を結構使うと思うのと、地下の魔物の状態がどうなっているのか心配だね」
「う~~ん、索敵で見る感じではまだ蓋はそのままになっているけど」
「兄様たちに相談をしてみよう」

 そうして立ち上がった途端、本流の道の先にざわざわとした声がし始めた。ほどなくして現れた人影。先頭でやってきたのはケネス・ラグラル・レイモンド伯爵だった。

「父上だ!」

 ミッチェル君が嬉しそうに立ち上がった。そして間を置かず、今度は僕たちが支流の方からやってきた森の中が騒がしくなる。見えてきた人影。もう辺りは仄暗くなってきていたけれど先頭を歩いて来るその顔はハッキリと見えた。

「やぁ、エドワード。どうしてこんな所にいるんだい? 後で話を聞かせてもらうよ? 怪我はないかい?」
「! 父様!」

 その声が嬉しくて僕は思わず立ち上がった。その瞬間、何かが大きくゆらりと揺れた。
 聞こえてくる明らかに人ではない声。

『余計な事を、フィンレーの小倅が!!』

 まるで、あの日の夢みたいだった。黒いものが僕を頭から飲み込むように降って来た。


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一難去って……
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