悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

tamura-k

文字の大きさ
214 / 303
第9章   幸せになります

375. 新しい年

しおりを挟む
 年が明けてウィルとハリーがタウンハウスにやって来た。
 学園への最終の手続きをしたその日は、兄様が僕にして下さったみたいに、王都の街を案内して、予約をしておいたカフェで王都のお菓子を食べてきたよ。でも二人ともフィンレーの方が美味しいなんて言って笑ってしまった。

 兄様は父様と話をして、父様がフィンレーでのお仕事を、兄様が王都の方でやるようなお仕事をするように手分けをする事にしたんだって。それに伴って父様が書斎として使っていたお部屋は兄様が使うようになった。何だか不思議な感じがした。

 そして兄様は結婚後はグリーンベリーに住む事に決まったよって。以前にも言っていたように僕の領主としての仕事を手助けしながら、フィンレーの仕事をしていくんだけど、魔法で転移も出来るし、タウンハウスへの転移陣もあるから、父様からフィンレーの当主を継ぐまではグリーンベリーを拠点として、お仕事は主にタウンハウスで行う事になるみたい。僕は卒業後は兄様と一緒にグリーンベリーに住んで、予定のない週末はフィンレーの温室の手入れをしたり、お祖父様が当主代理をされている公爵領で引き続きお勉強をさせていただく予定でいる。でもしばらくは忙しいかもしれないな。

 そんな感じでこれからの事が決まり始めて、ウィルとハリーは同じクラスになって学園に通い始めて、僕と兄様がしたように、高等部と同じ講義が受けられる乗馬と魔道具作りを選択した。
 何だかこれも不思議な感じ。僕の中で時間が逆戻りをしたような、でも僕が兄様になっていて兄様にしてもらった事をハリー達にも経験をさせていて……。

 そして、二の月が終わりが近づいてきた頃。ついに……

「出来ましたね」
「ああ、出来たね」
「本当にこんなものが出来ちゃうなんてすごいです!」
「……というか、未だにこれがどういう仕組みなのか分からないんだけど」

 僕たちはタウンハウスの応接室に集まっていた。

「ふふふ、じゃあとりあえず試してみよう。えっと兄様、ここに座って紅茶を飲んでみるのはいかがですか?」
「せっかくだから私が試してみるよ。三人で……ああ、そうだな。エディ、ウィル、ハリー、中庭に行ってみよう。まだ花はあまり咲いてはいないけれど、三人で水まきをしてみるのはどうかな?」
「やってみます! 行こう、二人とも」

 本当はフィンレーの小サロンでやってみたかったけれど、この時期のフィンレーはまだ雪に埋もれている。王都もそれなりに寒いけれど、それでも四方を囲まれている箱庭のような中庭は春の訪れを告げる様な小さな花が咲き始めている。勿論あまり沢山の水をまくことは出来ないけれど、試すにはちょうどいい。
 僕たちは中庭に続くサロンのような部屋にやって来た。天気も良く庭には日が当たり、青い空が見えている。

「では、始めよう」

 兄様はそう言って手にした魔道具に金色の魔石を嵌めこんだ。

「ちょっと緊張します」
 
  ハリーが顔を強張られて口を開いた。

「大丈夫。ほら、魔力を動かして……一、ニの三! 水まき!」

 僕たちの手から柔らかな霧雨のような水が飛び出した。水は日の光に当たってあの時のようにキラキラと反射して、小さな庭に小さな虹を作った。

「虹だ! エディ兄様、虹が出ました!」
「ふふふ、綺麗だね」
「アル兄様、撮れていますか?」
「ああ、多分ね。よし、では終了」

 その言葉に僕たちは水まきを止めて兄様の所に集まった。

「本当に出来るのかな。動く写真なんて」
「写真じゃないよ、ウィル。動画だよ。動画」
「分かっているよ。アル兄様、映したそれはどうやって見るのですか?」
「ちょっと待っててね。ほら、こうして、白い壁に映してみると」

 カチリと小さな音がして魔道具が再び動き出した。すると部屋の壁に僕たちが現れた。

『大丈夫。ほら、魔力を動かして……一、ニの三! 水まき』

 キラキラと光る細かな水。
 小さな花の上に出来た小さな虹。

『虹だ! エディ兄様、虹が出ました!』
『ふふふ、綺麗だね』
『アル兄様、撮れていますか?』
『ああ、多分ね。よし、では終了』

 そうしてふっと切れたそれに僕たちは思わず声を上げてしまった。

「凄いです! 兄様凄いです!」
「僕たちが映っていました! ほんとにそこにいるみたいに」
「声もちゃんと聞こえたよ! 俺の声ちょっと変だったけど」
「ウィルの声はいつもあんな声だよ」
「ええ⁉」

 僕たちのはしゃいだ声を聞きながら兄様は出来上がったビデオカメラの魔道具を見つめていた。

「兄様? 何かありましたか?」
「ああ、いや、成功だよ。ただ撮ったものを映すところをもう少し工夫をしたいなと。ええっと………スクリーンとかいうようなものか、あるいはこれと繋げて簡単に再生出来るもの…………を考えたいな。やはり撮ったらみたいと思うだろう?まぁ、記録的な場合もあるかもしれないけれど」

 多分兄様の頭の中では『記憶』の中にある知識を探しているんだろうな。僕がもう少し『記憶』がはっきりしていたらお手伝い出来たのかもしれないけれど、残念ながら僕の頭の中には『彼の記憶』は今はもうほとんどないんだ。

「エディ、そんな顔をしないで。少しルシルと相談をしてみるよ」
「あ、はい。そうですね」

 ルシルも大分『記憶』が薄れてきているって言っていたけど、それでもあちらの世界の事はルシルの方が詳しい。ルシルと話をした方が早いし、確実だよね。うん。そう。そうなんだけど。なんでかな。どうして胸の中がモヤモヤってするのかな。側近のお仕事はもうない。だから仕事で会うついでというわけではなくて、ルシルと二人で会うという事になるのかな。ああでも、ロイス様とかダニエス様もルシルの所にいたりするのかな。

「エディ?」
「はい?」
「……無自覚か」
「兄様?」
「ええっと、エディも一緒に行かないかい? ルシルはエディの友人だし、学園では話しづらい領での事もあるだろう? それにあちらの領で会うならダニーとロイスもいるかもしれないから、婚約式のお礼も言えたらいいかなって」
「あ、はい。そうですね。ではそのようにさせて下さい」

 ニッコリと笑ってそう返事をした途端、胸の中のモヤモヤしたものがなくなった。うん? 何だったのかな? 新しい魔道具が一応は成功して緊張とかしていたのかな。

「うん。じゃあ、エディからルシルに話をする時間をとってほしいと書簡を出してもらえるかい?」
「はい。そうします。予定はルシルに合わせてもよろしいでしょうか」
「ああ、勿論。調整するよ。彼も今は半分くらいしか学園に出ていないと聞くからね」
「そうですね。ではまたお知らせいたしますね」
「よろしくね」

 兄様と打ち合わせをしていたら後ろでウィルとハリーが、ちょっと不思議な表情をしていた。

「二人ともどうしたの?」
「いえ、何でもありません」
「……エディ兄様が嬉しそうで良かったです」
「へ?」

 嬉しそう? まぁ、兄様念願のビデオカメラが出来たのだから嬉しいけれど。 

「僕にはそんな顔をさせられないもの……」
「ハリー?」
「何でもないです。そう言えば前にお話をしていたレイモンド様の所に遊びに行かれるというのはどうなりましたか?」
「ああ、今はちょっと難しいかな。二人の前期の試験が終わる頃にもう一度聞いてみよう」

 そう言うと二人は「試験……」と小さく顔を引きつらせた。


-----------
 
まぁ、色々と(笑)
しおりを挟む
感想 945

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。