悪役令息にならなかったので、僕は兄様と幸せになりました!

tamura-k

文字の大きさ
48 / 109

45 悩める僕と頼りになる旦那様

しおりを挟む
 フィンレーの冬祭りも終わっていよいよ十二の月も半分くらい過ぎた。
 父様は冬祭りの後ホッとする間もなく、この前話し合いをした事の会議をしているらしい。
 十一の月の間に王家に報告して、十二の月には公・侯爵位の領主たちが集められた。また遅くなっているのかな。身体には気を付けてほしいな。

 僕はミッチェル君に言われた通りにほぼ通常の業務をこなしつつ、年末に向けてご挨拶をした方が良い所、えっとグリーンベリーと大き目の取引をして下さっている爵位のある方々に「来年もよろしくね」っていうようなご挨拶状を出したり、温室の白イチゴをお贈りしたりしているんだ。もっとも実際にそれをやってくれているのはスティーブ君なんだけどね。僕はそれを確認したり、お礼状の宛名書きと書面のサインをしているだけ。

 領地の事と、屋敷やグリーンベリー家の事を分けて考えるのって最初はよく分からなかったんだけど、グリーンベリー家はグリーンベリー家として行っている事業とか、色々あるからね。マルリカの実もそう。あれはグリーンベリー領が作っているわけではなく、グリーンベリー伯爵家が作っている。国はグリーンベリー伯爵家から卸してもらっている。
 そしてグリーンベリー伯爵家が稼いだ分には勿論税金がかかる。それを含めての領地の税収……になるそうだ。もっとも領主の事業はある程度免税になる事が国で決められている。中々難しい。
 話が逸れてしまったけれど、とにかくこれから忙しくなるのは公務よりもグリーンベリー伯爵家としての年間の収支。もっともそれは来年にならなければきちんとした数字は出てこない。だからどちらかと言えば僕が忙しくなるのは年が明けてからになるかな。もっともそれまでの事は毎月きちんとテオとスティーブ君がまとめてくれているので、そんなに心配はしていないんだ。ただ今年は白イチゴを領民におろしたから、それがちょっと煩雑になるかなって思っている。

 何はともあれ、今一番僕の頭の中を占めているのは慰労会のメニューだ。
 だって、せっかく領都の役場と執務室で働いてくれていた人を招くんだもの、去年と同じではつまらないでしょう? いや、定番のものがあってもいいんだけれど、何かこう目新しいメインになるものが欲しいじゃない。

 去年はクラーケンが獲れたってトーマス君からお知らせが来て、皆に食べさせたいからって無理を言って結構な量を買い取らせてもらったんだ。今年はお肉系かな。でもミノタウロスやオークは嫌なんだ。美味しくても嫌なの。

「エディ、ここに皺が寄っているよ? 悩み事があるなら話をして?」

 いつの間に帰って来ていたのか、兄様が後ろから抱きしめるようにして僕の顔を覗き込んで、眉間に長い指をトンと置いた。

「わぁ! アル、お帰りなさい」
「ただいまエディ。それで、エディはどんな難しい事を考えていたの?」

 腕の中に抱き込まれたまま問われて、僕は一瞬だけ言葉を詰まらせて、そっと口を開いた。

「あ、あの、慰労会のメニューをどうしようかなって」
「メニュー? シェフが考えるのではなくエディが考えるの?」
「えっと、勿論シェフが考えるんですが、その、昨年はロマースク様からクラーケンをお譲り戴いたので、今年も何か定番のもの以外に目新しいものがあるといいなぁと思って。で、でも、ミノタウロスとかオークは嫌だなって考えていたんです」

 僕の言葉に兄様は珍しくポカンとした顔をして、次の瞬間笑い出した。

「ア、アル!」
「ごめん、ごめん。でもエディがあんまり必死に言うから。そうだね。せっかくの慰労会だ。何か目玉のなるようなものがあるといいね。う~~ん……ああ、そう言えば王都でパイ包みという料理が流行っているよ」
「パイ包みですか?」
「ああ、肉や魚や色々なものをアップルパイのようなパイ生地で包んで焼くらしい。魔物の肉はともかく普通の牛肉の包み焼きやサーモンのなども美味しいって聞いたよ。その辺りで何か珍しい素材が使えないかシェフと相談をするのはどうかな」
「相談してみます! アル、ありがとうございます」
「ふふふ、困っている奥さんの役に立てたなら良かった。さぁ、ではメニューではなく、夕食にしよう。先ほどからマリー達が困っているよ」

 そう言われて振り返ると壁際にマリー達メイドが並んで立っていた。

「マリー、夕食にするよ」
「かしこまりました」

 後日、慰労会のメニューはお祖父様が下さったシカ肉を使ったパイ包みと、フィンレーの川で獲れたサーモンにチーズクリームとマッシュルームというキノコのパイ包みの2種類が今年のメインになった。マッシュルームは急遽温室で育てた。緑の手の力を使わせてもらったよ。
 試作で作ったものはフィンレーで母様たちと一緒に食べた。とても美味しかった。
 もうじき、一年が終わろうとしていた。



-----------

何となく小さい頃の雰囲気をほんのりと……
しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました

山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。 王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。 レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。 3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。 将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ! 「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」 ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている? 婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...