悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

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〜幼少期編〜

第13話 私がお嬢様の専属メイドとなった日

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あの日から私はお嬢様のお世話係のメアリーとよく一緒になるようになった。
メアリーがいうにはお嬢様がなるべく共にいるようにと仰せつかったそうだ。
公爵家では急な側室と一人娘を迎え入れることで更にピリついている。
お嬢様の配慮だろう。
だがメアリーはお嬢様のお世話役だ。
ずっと一緒にいられる訳では無い。

だから、、、

「男だけじゃなくて今度は同性にまで媚びを売ろうっていうの?」

「どこまでこの屋敷に不和をもたらせば済むのよ!」

「いやらしいわぁ、あなたのせいで奥様の八つ当たりがこっちまで来るじゃないの!」

こういうことだって普通に起きる。


ガサガサっ

茂みから物音がして、メイドが1人近づくとカラスが飛び出てきた。

「きゃあっか、カラス?」

暴れるカラスにメイドたちはその場を去っていった。

いつもだ。

不自然なくらいにいつもこのカラスがメイドたちを追い払ってくれる。

「お前は優しいのね。ありがとう。でも、一体どこから、、、」

この屋敷は旦那様の魔法結界で魔物や人間、動物さえも寄り付かないようになっている。
だから自然に迷い込むなんてことは無いはずなんだけど、、、

「もしかしてこの屋敷で飼われているとか?」

優しく撫でてやると擦り寄ってくる。
カラスってこんなに人懐っこいっけ?

そう思っているとなにかに反応して飛び去ってしまった。

「綺麗だったなぁ、、、」


「マーサ、奥様がお呼びよ。」

不意に声をかけられた言葉に背筋が凍りつく。

屋敷の廊下を歩いている私はまるで罪人のよう。
心当たりは全くないはずなのに、呼び出されたことになにも疑問が浮かばない。
あの奥様のことだ、何に不満を持たれても、、、、


部屋に入るなりものすごい形相で睨まれている、、、

「なぜ呼ばれたのか言われずとも分かるでしょう?」

そんなの、、、知らないっ

「も、申し訳ございません。わ、わたくしの考えが至らず、、、」

言い終わるうちに私の額にカップが直撃し、痛みのあまり膝をついてしまう。

「つっ!」

「わからぬというか!その汚らわしい手で我が夫に触れたのだろう!あの方は私の夫だ!お前ごときが触れていいお方ではない!あの女といい、お前といい!卑しい身分の女はいるだけで災いを招くっ!」

奥様は私に罵声を浴びせながらあらゆるものを投げつけ終いにはムチまで取り出して私の体を打ち付ける。

「お許しくださいっお許しくださいっ旦那様とは何もございません!本当でございます!」

言っても無駄なのだろうがこの痛みから逃れようと私の口は動く。

「卑しい卑しい卑しい!あの方に触れるなどなんと卑しいことか!!!」

コンコン、

「お母様、わたくしです。ダリアです。」

、、、、お嬢様?

蹲りながら声のする方へ視線を向けるといつの間にか背が伸びていらっしゃる険しい顔をなさったお嬢様が私を見下ろしていた。

今度こそ、、、見限られてしまったかな。

お優しいお嬢様でもこれ以上庇いきれない。

「お母様、お話は伺っております。ですが見張り役として付けていたわたくしのメイドもお父様の部屋から出た者を見ていないと申しております。」

お嬢様は淡々と奥様にお話なさっているが私は意識を繋ぐだけで精一杯だった。

「その見張り役も同じメイドでしょう?そんな女の言葉を信じるの?この女は若さを利用してあの方に近付いたのよ!あぁ!いやらしい、いやらしい!いやらしい!!!いやらしいぃ!!!!この屋敷からすぐに出ていきなさい!!!」

いや、いや!今追い出されてしまったらあの子・・・はどうやって生きていけばいいの?!

「奥様っわたくしは何もしておりません!旦那様とも何もございません!どうかっどうかおゆるしを!」

「、、、、では、わたくしの言葉はいかがでしょう?」

「ダリア、、、ちゃんの?」

「このメイドをわたくしの専属メイドに致します。わたくしの傍にいればお母様も安心でしょう。」

私を、、、専属の?

「そんな!ダリアちゃんの傍にこのような卑しい女を置くなんて許せないわ!」

当然の反応だろう、しかし奥様の言葉にお嬢様の目がさらに鋭くなる。

「別に構いません、公爵令嬢として使用人の1人も管理できなくてどうします。それに、これからわたくしも更に背が伸びていくでしょうからメアリーだけでは手が足りませんよ。」

お嬢様が仰っているうちに数名の執事が部屋にやってきて散乱した皿の破片などをテキパキと片付けていく。
恐らくお嬢様が呼ばれたのだろう。

メイドではなく執事を、、、

「だ、ダリアちゃんがそういうなら。」

「では早速彼女は連れていきます。お前たちは迅速に部屋を片付けてお母様にお茶を。」

そういって差し出された手をとるとお嬢様の手は少しだけタコが出来ていた。





𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃




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