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アストルム騎士団創立編
第32話 悪役令嬢、妹に手を差し伸べる。
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母上が父上に酷く叱責され、怒りの矛先はレーナ殿に向くばかりであった。
軽率な行動だっただろうか。
側室に要らぬ世話を焼きすぎたのか、、、
だが、ヒナに聖女候補の選抜に出てもらうには必要な事だ。
公爵家に媚びを売りたがる伯爵夫人などがヒナをいびっているようだった。
だがヒナは私に助けを求めることは無かった。
真に媚びを売るべきなのは誰なのかわかっていないらしい。
「ダリア様、メリドット伯爵から領地での公的支出、交易売上の帳簿が届いております。」
キースから受け取った書類に目を通しながら紅茶が入ったカップを傾ける。
「なるほど、レイヴンから受け取った帳簿とは別人の帳簿が起こしになったようだね。」
「港の方には闇魔法属性の見習い騎士たちを配備しております。」
「彼らの仕事の速さにも困ったものだね、こんなに早く証拠を見つけて先の命令まで終わらせるなんて。」
「ダリア様が自ら見込んで選ばれた見習い騎士たちです。子供とはいえダリア様に教えられたことを忠実に動けております。」
目を伏せて淡々と話すキースに苦笑いを浮かべると再び書類に目を落とした。
「催促してやっと書類が届いた。まだこの私を舐めてくれているらしいな。」
「港街にいる見習い騎士たちの存在も知られていないかと。」
「我々が騎士団を名乗るための糧に過ぎないからな。」
一休みのために庭に出ると女性たちの笑い声と水に何かが落ちるような音が聞こえた。
この屋敷でこのようなこと本当に見飽きているくらいだ。
溜息をつきながら音の方へ足を向けると庭の浅い水池に尻もちを着いているヒナとそれを見て嘲笑する夫人たちがいた。
「あれがリアーナから報告を受けているアレか?」
傍に控えるキースに嫌味ったらしく問いかけると黙って肯定する。
ヒナの元へ歩んでいくと夫人達がこちらに気が付いたらしく猫なで声で挨拶をしてくる。
「これはこれはダリア嬢、ご機嫌麗しゅうございますわ!」
「またそのようなお姿で、とてもお似合いではありますが公爵夫人に叱られますわよ。」
そんな夫人たちの言葉を無視してヒナに手を差し伸べる。
「いつまでそこに座ってるんだ。立て。」
その姿に驚いたのかヒナを貶めるような言葉を吐き始める。
「だ、ダリア様?いくら妹君とはいえヒナ様は、、、、」
「とはいえ、なんだ?お前たちこそ随分と身分を弁えていない行動のようだが?」
「と、とんでもございません!」
「公爵令嬢であるヒナがこのように転んでも助けるどころか嘲笑っているとは。」
「わ、わたくしどもはヒナ様が立派なレディーになるように教育を仰せつかっております!」
あのメイドと同じだな。私には不要な人間だ。
「そうか、ならばその任を解こう。リアーナっ!」
呼んだ瞬間 風と共に私の前に現れる。
「ヒナに仕えよ、令嬢のお前ならマナーも教えることが出来よう。」
「かしこまりました、ダリア様。」
「さて、お前たちはもう不要だ。母上の元に帰るがいい。」
「だ、ダリア様このようなこと公爵夫人がお認めになるはずが!」
「は?言葉に気をつけよ、ヒナとレーナ殿は公爵家の人間であるぞ?母上と同じくらい敬意を表さなければならない存在だ。その2人に無礼を働いていると報告しても良いのだぞ?」
私の言葉に真っ青になった夫人たちは謝罪の言葉を叫びながらその場を去っていった。
「全く、この屋敷にあのような者たちが出入りしているとはな。ヒナ、何してる。」
「お、、、にいさま。」
「立てないのか?」
私たちが来て安心したのか徐々に目に涙を貯めていくヒナ。
「よく我慢したな、ほら おいで。」
「ダリア様わたくしが。」
リアーナを静止させると水池に入りヒナを抱き上げる。
「今日の勉強はここまでだ。リアーナ、メアリーにアフタヌーンティーの用意をさせろ。私はヒナを着替えさせる。」
「かしこまりました。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃
軽率な行動だっただろうか。
側室に要らぬ世話を焼きすぎたのか、、、
だが、ヒナに聖女候補の選抜に出てもらうには必要な事だ。
公爵家に媚びを売りたがる伯爵夫人などがヒナをいびっているようだった。
だがヒナは私に助けを求めることは無かった。
真に媚びを売るべきなのは誰なのかわかっていないらしい。
「ダリア様、メリドット伯爵から領地での公的支出、交易売上の帳簿が届いております。」
キースから受け取った書類に目を通しながら紅茶が入ったカップを傾ける。
「なるほど、レイヴンから受け取った帳簿とは別人の帳簿が起こしになったようだね。」
「港の方には闇魔法属性の見習い騎士たちを配備しております。」
「彼らの仕事の速さにも困ったものだね、こんなに早く証拠を見つけて先の命令まで終わらせるなんて。」
「ダリア様が自ら見込んで選ばれた見習い騎士たちです。子供とはいえダリア様に教えられたことを忠実に動けております。」
目を伏せて淡々と話すキースに苦笑いを浮かべると再び書類に目を落とした。
「催促してやっと書類が届いた。まだこの私を舐めてくれているらしいな。」
「港街にいる見習い騎士たちの存在も知られていないかと。」
「我々が騎士団を名乗るための糧に過ぎないからな。」
一休みのために庭に出ると女性たちの笑い声と水に何かが落ちるような音が聞こえた。
この屋敷でこのようなこと本当に見飽きているくらいだ。
溜息をつきながら音の方へ足を向けると庭の浅い水池に尻もちを着いているヒナとそれを見て嘲笑する夫人たちがいた。
「あれがリアーナから報告を受けているアレか?」
傍に控えるキースに嫌味ったらしく問いかけると黙って肯定する。
ヒナの元へ歩んでいくと夫人達がこちらに気が付いたらしく猫なで声で挨拶をしてくる。
「これはこれはダリア嬢、ご機嫌麗しゅうございますわ!」
「またそのようなお姿で、とてもお似合いではありますが公爵夫人に叱られますわよ。」
そんな夫人たちの言葉を無視してヒナに手を差し伸べる。
「いつまでそこに座ってるんだ。立て。」
その姿に驚いたのかヒナを貶めるような言葉を吐き始める。
「だ、ダリア様?いくら妹君とはいえヒナ様は、、、、」
「とはいえ、なんだ?お前たちこそ随分と身分を弁えていない行動のようだが?」
「と、とんでもございません!」
「公爵令嬢であるヒナがこのように転んでも助けるどころか嘲笑っているとは。」
「わ、わたくしどもはヒナ様が立派なレディーになるように教育を仰せつかっております!」
あのメイドと同じだな。私には不要な人間だ。
「そうか、ならばその任を解こう。リアーナっ!」
呼んだ瞬間 風と共に私の前に現れる。
「ヒナに仕えよ、令嬢のお前ならマナーも教えることが出来よう。」
「かしこまりました、ダリア様。」
「さて、お前たちはもう不要だ。母上の元に帰るがいい。」
「だ、ダリア様このようなこと公爵夫人がお認めになるはずが!」
「は?言葉に気をつけよ、ヒナとレーナ殿は公爵家の人間であるぞ?母上と同じくらい敬意を表さなければならない存在だ。その2人に無礼を働いていると報告しても良いのだぞ?」
私の言葉に真っ青になった夫人たちは謝罪の言葉を叫びながらその場を去っていった。
「全く、この屋敷にあのような者たちが出入りしているとはな。ヒナ、何してる。」
「お、、、にいさま。」
「立てないのか?」
私たちが来て安心したのか徐々に目に涙を貯めていくヒナ。
「よく我慢したな、ほら おいで。」
「ダリア様わたくしが。」
リアーナを静止させると水池に入りヒナを抱き上げる。
「今日の勉強はここまでだ。リアーナ、メアリーにアフタヌーンティーの用意をさせろ。私はヒナを着替えさせる。」
「かしこまりました。」
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