悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

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聖ブルノア魔術学園編

第74話 ヒロインとの邂逅

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翌日からはアルベルトはいつも通りに戻っていた。

「昨晩はすまなかったな。」

なんとも気まずそうに後ろ頭を片手でかきながら謝罪の言葉を口にするアルベルトにダリアはいつもの涼しい笑顔で受け止めていた。

「殿下の婚約者である私に遠慮など無用です。」

(少しは意識して欲しかったんだが。)

ぎこちない空気が流れる中2人は授業が行われる教室へと歩みを進めた。
数多の生徒行き交う中、アルベルトの肩がとある少女の肩とぶつかってしまい 少女はその場に持っていた本を落とし倒れてしまった。

「あ?」

見下ろすアルベルトの影から首をひょこりとだして倒れた少女に視線を向けるとダリアは目を見開いた。

(この子……ゲームのパッケージに描かれていた子じゃないか!)

夏空のように淡い色の髪にこちらを見上げるまるで宝石のような同色の瞳。
怯えるようにこちらを見上げる少女にダリアはなんだか既視感を覚えた。

「すまない、怪我はないか?」

手を差し出すアルベルトにダリアはさらに感激した。

(女ったらしで意地悪なキャラになると思ってたのにこんなにも紳士的なことが出来るなんて!まぁ私がだいぶストーリーを弄ったからかな?本筋がどうなっていたのかは知らないけど。)

「も、申し訳ありません!アルベルト様!」

反射的にアルベルトの手を取りお礼を述べながら立ち上がる少女に周りの人間たちはまるで不快のものを見るかのように目を鋭く細めていた。

(王族の手を取っていいのは直系の貴族、または婚約者のみ。それに婚約者でもない者が名前で呼ぶのは不躾にあたる。周りがこんな反応するのも無理はないか。それに傍には私がいるからね。)

当の本人はこの状況に体を震わせていた。
アルベルトはそんなことを気にもせずに散らばった本を拾おうと手を伸ばすがダリアがそれを止めた。

「殿下、学園と言えど王族である殿下が膝を曲げ従者のような真似事をしてはなりません。」

険しい表情をしたダリアは少女に軽くお辞儀をするとアルベルトを連れて足早にその場を後にした。

(無事に主人公と出会うことも出来たし、十分だろう。それにあのまま続けさせていたら私以外のものに虐められてしまうよ。そんなことより……)

ダリアは足を止め胸元に手を添えると少し眉をひそめた。
その様子にアルベルトは不安の声を上げるがダリアは心配いらないと首を横に振った。

(女性はこんなものを着て毎日過ごしているのか……ヒラヒラと邪魔だし少し窮屈だな。)

「おい、本当に大丈夫か?さっきだっていつも女には優しいのにさっさと離れるし。」

そういうアルベルトにダリアは腕を組むと人差し指をくるくる回しながら目を瞑った。

「あのね、王族がホイホイと地べたに這いつくばってはいけないんだよ。偉そうな態度をとることも大事な仕事だ。大勢が見ている前で威厳を持って行動し正しいと思う道へと導いてやるのが王だ。それに助け起こしてやったんだ、十分だろう。あれ以上助けたらあの令嬢が矢面に立たされることになるぞ。」

(嫉妬してくれた訳では無いのか。)

その後、教室までたどり着き席に着くと外から見覚えのある顔が入ってきた。
先程の少女だ。
アルベルトとダリアは見覚えのある顔に反応したものの、それ以外の生徒たちが一斉にヒソヒソ話しを始めたのだった。

周りから聞こえてくる声に耳をすましていると「聖女」という言葉が耳に入ってくる。

「ブラン王女がまだだというのに聖魔法を使えるところを恥ずかしげもなく見せびらかしたんですって。」

「田舎貴族の娘のくせに身の程を知らないのですわ。」

「大人しく神殿に入れば良いものを図々しくも学園に入学するなんて。」

「でも聖女候補選抜断られたって聞いたぜ?」

「貢ぎ物が足りないからって断られたんだろ?なのに学園には入れるのか?」

「魔力量が多いから危険視されてんのよ。それなのにさっき聞いた話だとアルベルト殿下のお手に触れたとか。」

「ダリア公女がいらっしゃると言うのにはしたない!」

(さすがは恋愛ゲームのヒロイン、逆境の厳しさも大層なものね。ゲームの中のダリアはこれにあてられてヒロインを虐め抜いたのか。)




(たしか、名前は……)






𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
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