おっさん、本でチートスキルを得る

盾乃あに

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大地震

佐伯

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 あれから1か月、

「フッフッフッフッ」
 最近は寝てる間じゃなく、自分から起きる様になった。
 そして体重もどんどん落ちている。
 やはり継続は力なり!
 コピー機のリースや売り上げも好調で仕事も楽しくなってきたが、佐伯がやったことは公にしないでクビにしたようだ。
 最後まで俺を睨んでいたがいい気味だな。

 そして公園での腕立て、腹筋、スクワットが効いてるのか筋肉がついてきている気がする。

 やはり運動不足が続くと人はダメになっていく様だ。

 帰りももちろん走って帰る。
 料理の方もようやく1人分が作れる様になった。
 読んでいたのがパーティー料理の本だったのがいけなかった様だ。『男の1人飯』と言う本に変えてからちゃんと1人分になったし美味い。
 スーツはまだ痩せると思うので安物を買った。
 俺の体重はどんどん落ちているからな。

 ここまで順調なのはやはりステータスのおかげだな。
 小説を大量に買って通勤時に読んでいるが、心ときめく小説に出会えないのが最近の悩みだ。

「おはようございます」
 課長に挨拶をすると、
「おう。本願寺。また痩せたか?」
「はい、ダイエットしてますんで」
「身体が悪いわけじゃないならいいが、無理するなよ?」
「はい」
 と課長に心配されるほど痩せた。
 まぁ、元々が太っていたからちょっと痩せるだけで変わるものだな。

「プハー!」
 やはり仕事後のビールは格別だな。
 今日の晩飯は『男の1人飯』24ページの豚の生姜焼きだ。

 料理も上手くなって、ビールもうまい!
 最高だなぁ。

 今日は珍しく漫画を読む。
 面白いので一気に読み切ってしまった。
「まぁ、明日は休みだからいいだろう」

「フッフッフッフッ」
 休みだがいつもの様にダイエットは続く。
 腹筋、背筋、腕立て、スクワットとこなしていたら“ドンッ”と背中に痛みが走る。
「ハ、ハハ、お前がいけないんだからな!」
「さ、佐伯、お前」
 佐伯がナイフで刺したようで背中から気が遠くなるような痛みが、
「俺に死んで詫びろ!」
 と言って逃げて行った。
「く、くそ!このままじゃ……」
 とそこで気を失った。
『生命維持機能発動』
『異物があり生命の危機です』

 俺は眠っている様だった。

 ユラユラと漂う世界には本が綺麗に収まっている。

「あぁ、綺麗だ」

『おじさん!大丈夫!』
 との声で目が覚めると痛みが戻ってくる。
「あ……救急車を」
「わかった!えーと、119?110?」
 まぁどっちでも多分大丈夫だけど、早くしてくれ。
 何とか痛みに耐えて救急車が来たので病院まで行きナイフを抜かれた瞬間に回復をする。

「はぁはぁはぁ」
「え、傷がない?」
 抜いた先生はビックリしていた。
「さ、刺されましたけどね」
「こんな事は初めてだ。とりあえずCTだ」
「はい」
 有りとあらゆる検査の結果出血はしていたが外傷はなし、異常は見つからなかった。
 だって痛くて治したもん。

 警察には事情聴取されて、佐伯の犯行だと言う事は言ってある。まあ捕まって刑務所に入れば良いだろうな。

 俺は久しぶりに寝て起きてと、惰眠を貪っていたが、本が読める様になると積み本を消化していく。

 今回はSFものでロボットが大活躍する小説だ!憧れはあるがこれを『発現』するのは無理だな。
 と言うかそんなの出したら世界征服しちゃうよな。
 まぁそれも面白そうだけどね。

 あっという間に佐伯は捕まったそうで、否認しているのだそうだが、指紋や鑑定でバレてるんだし、潔く檻に入ってくれ。

 会社も休みだし、やはり怪我した影響なのか、ダイエットも今は中止になっているが、せっかくだし筋トレだけでもと思ってベッドの上で腹筋してたら看護士さんから怒られた。
 背中を刺された人間が腹筋なんてして良いんですか!と、言われてもねー。

「ご本のおじさん!」
「やぁ。まいちゃんまた来たのかい?」
「またお話聞かせて?」
「そうだなー、じゃあ、これだ」
 この子はまいちゃんと言ってこの病院でも有名人だ。元気で俺が絵本を読み聞かせると懐いてくれた。

「おしまい」
「パチパチパチ」
「あのねまたしゅじゆつするの」
「そうなのか。どこが悪いのかな?」
「んーと。頭の中のんー、悪いとこ?」
 脳の腫瘍とかかな?って俺治せるだろ!
「よし、おじさんがおまじないかけてあげるね」
「うん!」
「『エクストラヒール』」
「よし、お母さんのとこに行っておいで」
「うん。ありがとう」
 あんな良い子にそんな病気は似合わないしな。

 まぁ。この病院が奇跡の病院と呼ばれてもあとは知らないけどね。

 退院の日、まいちゃんは楽しそうに親御さんと遊んでいた。
「またいつか」
 と遠くから眺めて俺はタクシーに乗って家に帰る。
 退院したと同時にスマホに着信があり、何故かクビを宣告された。
「あ、あの、私が何か?」
「困るんだよ、我が社の不祥事だよ?」
「いや、別に私は悪くないですが」
「そうだが、喧嘩両成敗とでも言えば良いかな?危険分子はいない方がいいんだよ」
「な、私は」
「これは会社都合で退職してもらうから、それだけでもよしとしてくれ」
「く、わ。わかりました!」
 と電話を切る!
「くっそ!佐伯のせいでこっちまでクビになったじゃねーか!」
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